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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第18話 引いたカードで、生きていきます(前編)

ヴァニタス戦の翌朝。


朝の光が、宿のカーテンの隙間から、差し込んできた。


私は、ベッドの中で、目を開けた。


リルアが、私の腕の中で、すぴすぴ、寝てる。後光は、ロウソクサイズ。普通の朝。


普通の——朝。


「終わったんだ」


ぼそっと呟いた。


『おはよう』


『おはようございます』


『昨日の、尊い時間、ありがとうございました(永久保存版)』


『コメント欄、生存確認』


「黙ってて」


『はい』


リルアが、もそっ、と動いた。


「ひなたちゃん、おはよう」


「おはよう」


リルアが、目を擦った。後光がぽわぽわ。


「みんな、無事?」


「たぶん」


「レクトさんとセラフィーナちゃんと、エルナさんに会いに行く」


「うん」


ベッドから、起きた。


——昨日の夜の名残で、体が、ちょっと、だるい。リルアも、たぶん、同じ。


「リルア、お風呂、入る?」


「入る」


二人で、お風呂に入った。


久しぶりの——ただの、お風呂。


戦闘もない。決戦もない。ヴァニタスもない。


ただ、お湯に、浸かるだけの、朝。


「ひなたちゃん」


「ん」


「世界、戻ったね」


「うん」


「みんな、生きてる」


「うん」


「えへへ」


リルアが、お湯の中で、私に、もたれかかってきた。


『お、お風呂回、復活』


『プライバシーフィルター起動——』


『あれ、湯気フィルター動いてない』


『コメント欄、丸見え状態』


「フィルターの再起動忘れてた」


『ご褒美ご褒美』


「もう、プライバシーフィルター再起動したから」


リルアが、笑った。



服を着替えて、ギルドに向かった。


街は、いつも通りだった。


昨日のヴァニタス戦で壊れた家は、まだ修復中だけど、人的被害がなかったから、活気は、戻ってる。


商店のおばさんが、私たちを見て、手を振ってきた。


「ひなたちゃん! 昨日はありがとう!」


「あ、いえ……」


「あんたたちのおかげで、街は、無事だった」


「いえ、そんな——」


「英雄だよ、英雄」


リルアが、ぽわぽわしながら、手を振り返してた。


『街の人気者爆誕』


『N縛り勇者、街の英雄に』


『レアリティでは測れない実績』


ギルドに着いた。


エルナがカウンターで、立っていた。


「桜庭さん」


「エルナさん! 起きて大丈夫?」


「ええ。セラフィーナさんに回復魔法をかけていただきましたので、もう」


エルナが、いつもの事務的な顔で、報告書を、出してきた。


「無貌神ヴァニタス討伐の、正式な報告書を、作成しました」


「えっ、もう?」


「昨夜、書きました」


エルナの口元が、ちょっと、緩んだ。


「桜庭さんとリルアさんが、お楽しみの間に、わたしはがんばりました」


——え。


『あ』


『あ、エルナさん、お見通し』


『鑑定スキル、まさかの応用』


『いや、直感とこれまでの経験で察した、たぶん』


「エルナさん、聞こえてた?」


「物理的には、聞こえてません」


「でも、わかってた?」


「皆さんの『勝利』を確信したのと、ほぼ同じタイミングで、騒がしい気配が、街中の信仰の流れに、波紋を起こしました」


「わかったんだ」


「はい」


「お気になさらず。お二人とも、お幸せに」


「いやいやいや——」


エルナが、肩の力を抜いた。


「報告書のコピーは、ギルドマスターと、王宮にも、これから送ります」


「……王宮にも?」


「今後の、対応のためです」


「対応って?」


エルナが、報告書を、めくった。


「無貌神ヴァニタスは、討伐されました。しかし、創成の女神リーゼリス様の伝承から推測するに、ヴァニタスのような『虚無』の存在は、また、いつか、現れる可能性があります」


「ええっ」


「千年後、もしくは万年後、とかになるかと思いますが」


「私たち、生きてないじゃん」


「ええ。なので、桜庭さんとリルアさん、レクトさんとセラフィーナさんが、伝説として、残ります」


エルナが、報告書を、閉じた。


「『N縛り勇者とR女神、SSR勇者とSSR女神の物語』として」


——うわぁ。


「恥ずかしすぎる」


「事実なので」


「事実だけど、後世に伝えなくていい!」


「もう報告書できちゃいましたので」


エルナが、にっこり、笑った。


「……ねえ、エルナさん」


「はい」


「それ、四人だけ?」


「はい。当事者が、四人なので」


「ダメだよ、それ」


「え」


エルナが、目を、瞬いた。


「だって、エルナさんがいなかったら、私たち、ヴァニタスの正体もわからなかったし、R召喚カードの使い道も思いつかなかったよ」


「桜庭さん、それは——」


「弱点がどうやってわかったかが残らなかったら、伝説は上手く伝わらないでしょ。それに——」


私は、エルナを、見た。


「エルナさんも、私たちの仲間だから」


エルナの目が、ちょっと、揺れた。


「……でも、わたしは、戦って、ません」


「戦ってなくても、その場で弱点を調べてくれた。それで、十分」


リルアが、横から、後光をぽわぽわさせて、頷いた。


「うん。エルナさんも、伝説の人だよ」


「……」


エルナが、報告書を、開き直した。


ペンを、握って——一文、書き足した。


「『——記録者エルナと共に』」


「えへへ」


「やめて、それも恥ずかしい」


「事実なので」


『エルナさん、最後の最後に、いい仕事した』


『記録者、自分も伝説に書き加える』


『ひなたさんの提案、満点回答』


『五人ぜんぶ、永久保存版』


『運営、新エピソードのソースに困らない』



エルナが、報告書の、別のページを、めくった。


「あと、報告書の最後に、こう、書き添えました」


「うん?」


「『記録者エルナ・フォーチュン——元・勇者。女神召喚拒否した者』」


——あ。


「エルナさん、それ、書いたんだ」


「ええ」


エルナが、ふっ、と、息をついた。


「王宮には、もともと、わたしの召喚記録は、残っていますから。今さら隠すことでも、ないですし」


「……うん」


あの川辺の夜に、エルナさんが打ち明けてくれた話——あれを、自分の手で、ちゃんと、文字にした。


「ずっと、書けなかったんです」


エルナが、ぽつり、と、言った。


「『元・勇者。女神召喚拒否した者』って、自分のことを、記録に残すのが、こわくて」


「うん」


「でも、ヴァニタス戦で、桜庭さんとリルアさんが、信仰で勝ったのを見て——」


エルナの羽ペンが、ノートの上で、くるりと、回った。


「わたしも、もう、隠さなくて、いいかなって、思いました」


リルアが、ぽわぽわしながら、エルナの手を、ぎゅっと、握った。


「えへへ。エルナさん、書けてよかったね」


「ええ。リルアさんのおかげです」


エルナが、にっこり、笑った。


それから、ちょっと、顔を、赤くした。



「ただ、一つだけ、聞いてもいいですか」


「うん」


「……昨日の——あの二人の絆——の、続編は、ありますか?」


『きたーーー!』


『エルナさんが、本性を出した!』


『実は、エルナさんも、楽しみにしてる派!』


『記録者気質を超えた、推し活の本能!』


「えっ」


リルアが、ぽわぽわ、して、笑った。


「あるよ」


「えっ、リルア!?」


「みんなで、しよ」

「みんなで、もう一度——絆を確かめ合うの」


——え。


「えっ」


『え???』


『え!?』


『リルアちゃん!?』


『リルアちゃん、なに言い出した!?』


『えっ、まさか、ハーレム回!?』


「リルア、それは——」


「ひなたちゃんと、レクトさんと、セラフィーナちゃんと、エルナさんと、わたし——」


リルアが、指折り、数えた。


「みんな、生きてる、これからもよろしく、って、しよ」


——リルアの、天然の、爆弾。


エルナの目が、丸くなった。


それから、頬が、赤くなった。


「あの、いえ、リルアさん、わたしは、その——」


「えへへ、恥ずかしい?」


「は、はい」


「みんな、恥ずかしいよ。わたしも、恥ずかしいよ」


リルアが、ぐっ、と、エルナの手を、引っ張った。


「でも、みんなで、生き残った、って、確認しないと」


「確認、ですか」


「うん」


『リルアちゃんの「確認」』


『ガチで物理的な確認』


『R女神、戦後ハーレムを提案』


『新ジャンル:女神のお祝い』


「リルア、それ、本気で言ってる?」


「うん、本気」


リルアが、私の方を、見た。


「ひなたちゃん、ダメ?」


「えっ」


——リルアの、ねだる顔。


「いや、ダメじゃ、ない、けど、その——」


「じゃあ、しよ」


エルナの顔が、もう、真っ赤だった。


「あの、リルアさん、わたしも、参加して、いいの、ですか」


「うん、もちろん」


エルナが、息を、深く、吸った。


「元・勇者エルナ。——お祝いに、参加します」


『おお』


『エルナさん、覚悟完了』


『これは、エルナさんの、当事者宣言ふたたび』


『覚悟完了からの、地続きの覚悟』


『記録者、ペンを置いて、ベッドに来る』


「コメント欄が、おかしなこと言ってる」


「気にしない」


リルアが、にこにこ、笑ってる。



エピローグまでもうすぐです。

更新を楽しみにお待ちください。

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