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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第17話 コメント欄、尊いって叫んでください(後編)

——勝った。


『勝った』


『勝ったーーーーー!!!』


『URキス覚醒、無事配信完了!!!』


『N縛り勇者、UR討伐達成!』


『ガチャ歴史上、最大の番狂わせ』


『R女神(UR+1)、最強女神に確定』


『UR討伐の前例なし、本日付で記録更新!』


『運営、頼むからUR以上をガチャに入れないでくれ(懇願)』


『約束の絆の続き』


『二人の絆、忘れんなよ』


『ご褒美の時間です』


『コメント欄、楽しみに待ってます』


「……黙ってて」


ぼそっと呟いた。


リルアが、私の腕の中で、笑った。


「ひなたちゃん」


「ん」


「いま、わたしの後光、まだ、星屑、混じってる?」


——え。


「えっと、ちょっと、混じってる」


「そっか」


リルアが、目を、伏せた。


「これ、戻れるかな」


「戻したい?」


「うん」


「戻せると思う」


リルアの体から、星屑が、ふわっ、と、剥がれていった。後光が、SR、R——どんどん、しゅるっ、と、収束していく。


——その、瞬間。


ふわっ、と。


リルアの輪郭が、また、揺らいだ。


——あの時と、逆方向に。


リルアの体が、二つに、分かれた。


私の腕の中の、R女神のリルア。


そして、もう一人——隣に、ふわっ、と、現れた、もう一人のリルア。


「あっ」


「あ……」


二人のリルアが、お互いを、見つめ合った。


『限界突破、解除!』


『UR+1の合体、解けた!』


『もう一人のリルアちゃん、戻ってきた』


『元の世界に、帰る時間か』


私の腕の中のリルアが、目を、潤ませた。


「わたし……」


もう一人のリルアが、ふっ、と、笑った。


「もう、戻る時間、だね」


「うん」


「向こうの世界の、わたしの主も、待ってる」


「うん」


もう一人のリルアの体が、すこしずつ、透けていった。星屑が、ふわふわ、空に、ほどけていく。


「ねぇ、ひなたちゃん」


もう一人のリルアが、私を、見た。


「うん」


「ひなたちゃんのこと、わかるの。さっきまで、合体してたから」


「あ……」


「こっちのわたしが、どれだけ、ひなたちゃんに、大切に、されてるか——ぜんぶ、見ちゃった」


ふふっ、と、笑った。ちょっと、いたずらっぽく。


「だからね、私、ちょっと——」


「うん?」


「ひなたちゃんと、私も、二人だけの時間、過ごしたかったかも」


「ぶっ」


私の喉から、変な音が出た。


「あ、安心して。私の主は、別にいるから」


「あ、そ、そうなんだ……」


「だから、ひなたちゃんは、こっちのわたしの、専属。安心して、可愛がってあげてね」


もう一人のリルアが、私の腕の中の、自分を、ぎゅっ、と、抱きしめた。


「こっちのひなたちゃん、よろしくね」


「うん」


「ぜったい、しあわせに、なって」


「うん」


二人のリルアが、最後に、おでこを、こつん、と、合わせた。


それから——もう一人のリルアの体が、ふわっ、と、星屑になって、空に、溶けていった。



『あぁぁぁ』


『もう一人のリルアちゃん、帰っちゃった』


『最後の言葉、攻めすぎだろ』


『「ひなたちゃんと、私も、二人だけの時間、過ごしたかったかも」』


『割と本気のトーンで言うな』


『ひなたさん、顔真っ赤』


『向こうの世界の主、誰なんだ気になる』


『さよならは言わない、また会う日まで』


夜空のワンピースが、白いワンピースに、戻った。


R女神のリルアが、私の腕の中に、いた。


「リルア」


「うん」


「ロウソクサイズが、一番、軽そうで、いい」


リルアが、目を、見開いた。


「えっ」


「URの間、ずっと、リルアの体、重そうだった」


「うん、わたしも、重かった」


「だから、戻ってくれて、助かる」


「えへへ」


リルアが、しゅるっ、と、私の腕の中で、丸まった。


後光が、ぽわぽわ、ぽわぽわ。


——これだ。


これが、私のリルア。


R女神の、リルア。


引いたカードで、戦って——勝った。



レクトが、瓦礫の中から、ふらつきながら、立ち上がった。聖剣を、地面に、突き立てて、それを杖にして、こっちに、歩いてくる。


エルナも、目を開けた。背中の傷は深くないみたいで、呼吸が、整ってきた。


セラフィーナが、レクトの腕の中で、ぼんやり、目を、開けてた。後光は、まだ、シャンデリアまでは、戻ってない。


全員、生きてる。


リルアの後光が、ぽわぽわ。私の腕の中で、ちょっと震えてる。


街は——壊れた壁とか、結界の名残とか、いろいろあるけど、人的被害はゼロだった。レクトの結界とセラフィーナの結界が、市民を守った。


雲が晴れた。普通の、夕方の空。


「終わった」


私が呟いた。


「終わったね」


リルアも、呟いた。


『お疲れ様でしたーーー』


『最終決戦、配信終了』


『一同、解散』


『——と、見せかけて』


『さて』


『さて』


『さて』


『約束の時間です』


『二人だけの時間、開幕』


「……ちょっと、待って」


『待たない!』


『俺たち、ずっと、待ってた!』


『信仰の対価!』


ベッドに、リルアと、座った。


リルアが、ちょっと、照れて、私を見た。


「ひなたちゃん」


「うん」


「みんなに、見られてるね?」


「うん——」


「えへへ」


リルアの頬が、赤くなった。


「恥ずかしいけど、みんな、見ててね」


『えっ』


『リルアちゃん、ノリ良すぎ!』


「リルア、それ……」


「だって、約束したから」


「う、うぅ……」


——とは言っても、私はもう、リルアの両肩に手を置いた瞬間、コメント欄を遮断した。


「『今だけ、二人きり』のスキル、発動」


『は!?』


『コメント欄、切られた——』


『約束は!? 約束は!?』


『嘘だろ!!!』


『拗ねた! 今すぐ復活してくれ!!』


ぎゃーぎゃーと、最後の悲鳴。


そして——コメント欄が、すーっと薄くなった。


「ふふ。コメント欄、ごめんね」


リルアが、くすっと笑った。


「みんなには、別の方法で、ご褒美を渡そ」


「別の方法?」


「うん。私たちが、これからもずっと一緒に幸せに生きていく姿を、最後まで、見ててもらう」


——いいオチだ。



ベッドの中で、リルアと向き合った。


カーテンを引いた部屋。リルアの後光だけが、ぽわぽわ、私たちの顔を照らしてる。


「ひなたちゃん」


「ん」


「キス、して」


唇を、合わせた。


戦場でしたキスより、ずっと、ずっと、深く。今日、何度、この唇に、キスをしたんだろう。何度しても、新鮮だった。


「ね」


「ん」


「今日は、わたしが、する」


「えっ」


「みんなが、見てるなら——わたし、ひなたちゃんを、可愛がってあげたい」


「リルア、それ——」


「恥ずかしいんでしょ」


「……うん」


「えへへ、知ってる」


——戦闘の余韻と、URになったリルアの感情と、戦場で交わした「いっしょに、勝とう」という約束の続きが、ベッドの上で、ゆっくり、溶けていった。


リルアの唇が、深く、私の唇を塞いだ。リルアの後光が、ふたりの体を、桃色に染める。


「リルア……」


「ひなたちゃん」


「すき」


「私も、ずっとずっと、好き」


リルアが、私の額にキスをして、「ひなたちゃんの一番、私だよね?」と聞いた。


「うん。リルアが一番」


——その夜のふたりだけの時間は、リルアの後光だけが、知っている。


リルアの後光が、シャンデリアの一歩手前まで明るくなって、それからまた、ロウソクサイズに戻っていった。


「ロウソクサイズが、一番、可愛い」


「えへへ。それ、戦場でも言ってた」


「うん。本気だから、何度でも言う」


「えへへ」


リルアが、私の胸に、頬を寄せた。


「ひなたちゃん」


「ん」


「あいしてる」


「私も。ずっと、あいしてる」


リルアの後光が、ぽわぽわ、ぽわぽわ、私の鎖骨のあたりで、揺れていた。



——コメント欄が、戻ってきた頃には、私たちはもう、ベッドの中で、お互いの体温を確かめ合いながら、ゆっくり眠りに落ちようとしていた。


『……ふぅ』


『集中しすぎて、コメント、できなかった』


『プライバシーフィルター入ってるはずなのに、なんかこっちまで尊死した』


『画面、目を離したら、神の瞬間を見逃すから、絶対、目を離せなかった』


『リアルタイム実況、不可能でした』


『リルアちゃん、可愛かった……』


『ひなたさん、可愛すぎた……』


『百合の極み、観測完了』


『生きててよかった』


「ふふっ」


私は、思わず、笑った。


「リルア、コメント欄、お疲れ様だって」


「えへへ」


リルアも、ふわっ、と、笑った。


私は、リルアを、抱きしめたまま、目を、閉じた。


「リルア」


「うん」


「ありがとう」


「えへへ。ひなたちゃんこそ」


「ありがとう」


——長い、長い、一日が、終わった。


ガチャ爆死の勇者。


R女神のリルア。


引いたカードで、二人で一緒に戦って——勝った。


リルアの後光が、ぽわぽわ、ぽわぽわ。


私の腕の中で、すぴすぴ、寝息を、立て始めた。


——R女神のリルア。


——私の、リルア。

エピローグがあとちょっとだけ続きます!

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