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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第16話 UR、そんなレアリティ聞いてないんですけど(後編)

——その時。


雲の手前に、小さな、光が現れた。


ぽっ、と。


光が、降りてくる。


人型。半透明。淡い、光をまとった——


「えっ」


「ルミナ」


私は、その光を、知ってる。


アイドル総選挙で、女神化して、消えたはずの——ルミナ。


光の花びらになって消えた、3D最強アイドル、ルミナ。


それが——空から、降りてきた。


「あ」


リルアが、息を漏らした。


「ルミナさん」


セラフィーナも、目を瞠った。


「あの光は——女神の波形、です」


ルミナは、雲を抜けて、私たちの前まで降りてきた。半透明の体。表情は、悲しそうだった。優しい目で、私たちを見てる。


「みなさん」


ルミナの声。ステージで何百回も歌った、あの声。


「ルミナ……?」


「お久しぶりです」


ルミナが、微笑んだ。


「ようやく、声が届きました」


「届いた、って——」


「女神化してから、ずっと、神々の世界にいました」


ルミナの体が、少し透けて、向こう側の景色が見える。完全な実体じゃない。


「桜庭さん。リルアさん。セラフィーナさん。レクトさん」


ルミナが、私たち一人ひとりを見た。


「逃げてください」


——え。


「逃げる、って」


「ヴァニタスは、もう、女神世界の半分を、喰らいました」


ルミナが、目を伏せた。


「先輩女神たち、ほとんど、いません。もう」


「そんな……」


セラフィーナが、口元を押さえた。


「ルミナさん」


リルアが、おずおずと、声をかけた。


「うん?」


「あの——女神になって、苦しかった?」


ルミナが、ふっと、目を細めた。


「正直、最初は、こわかったです。女神世界に行くのも、誰の声も届かないのも」


「うん」


「でも——」


ルミナが、私を見た。


「女神世界からも、応援が、聞こえる時が、ありました。総選挙に投票してくれた人たちの『推せて、よかった』っていう声が。あれが届いてる間は、こわくなかったです」


「届いてたんだ」


「はい。ファンって、すごいですね」


ルミナが、ちょっと、笑った。


「だから、わたしが、最後の警告を、伝えに来ました」


ルミナの体が、もっと、透けてきた。


「リルアさん、セラフィーナさんは——逃げてください」


「逃げる、って」


「ヴァニタスは、女神を優先的に、喰います。SSRもRも、関係なく。見つかったら、おしまいです」


ルミナの目が、苦しげに、揺れた。


「でも、ヴァニタスは、リルアさんを——」


その時。


ルミナの体が、ぐらっと、揺れた。


「あっ」


ルミナの胸の真ん中から——白い、紐のようなものが、伸びていた。


紐の先は、北の空、雲の渦の中まで続いてる。


紐は、ルミナの中の——光を、吸い上げてる。


「ルミナ!」


私は走り寄った。手を伸ばした。でも、ルミナの体は半透明で、触れない。


「気付かれて、ました」


ルミナが、苦笑した。


「ヴァニタスに、わたしが警告に来ることを」


「ルミナさん、戻って!」


「もう、戻れません」


ルミナの体から、光が、ごっそり吸われていく。


ルミナが、私を見た。


「桜庭さん」


「うん」


「メロちゃんに、ありがとうって、伝えてください」


「うん、伝える、ぜったい伝える、だから——」


「メロちゃんは、わたしの分まで、生きてくれてます。投票してくれた、みんなの分も」


「うん」


ルミナが、最後に、笑った。


「みんな、ありがとう」


ルミナの体が、白い光になって、ヴァニタスの紐に、吸い上げられて——


消えた。


雲の渦の中で、ルミナの光が、一瞬、明滅して。


そのあとは、ただの、黒い雲。


ルミナがいた場所に、何も、残らなかった。



『うわぁ』


『ルミナ……』


『無理だ、これ、無理だ』


『俺たち、無力じゃん』


『でも、警告、届いた』


『ルミナさん、消えてしまったよ(涙)』


私の頬を、何かが、伝った。


涙。


「ひなたちゃん」


リルアが、私の手を、ぎゅっ、と、握った。リルアの目も、濡れてる。リルアの指が、私の指の間に、しっかり、絡まった。離さない、っていう握り方だった。


「わたしも、泣いていい?」


「うん」


リルアが、私の肩に、頭を、預けた。後光がぽわぽわ揺れて、私の腕に、温かい光が、ぽたぽた、こぼれた。


「ルミナさん、最後まで、優しかった」


「うん」


「逃げて、って」


「うん」


「でも、わたしたち——」


リルアが、北の空を見た。


「逃げたら、追いかけてくる」


「うん」


「逃げきれない」


「うん」


私は、リルアと、セラフィーナと、レクトを、見回した。


エルナも、隣に立ってた。


五人。


「逃げないよ」


私は、空を見上げた。


「逃げて、追いかけられて、街の人たちが巻き込まれるくらいなら——ここで、迎え撃つ」


レクトが、聖剣を握り直した。


「同感だ」


セラフィーナも、シャンデリア後光を、控えめに灯した。


「わたしも、戦います」


リルアが、私の手を、もっと強く握った。


「ひなたちゃんの隣にいる」


エルナが、ノートを閉じて、ペンをポケットに入れた。


「わたし、戦闘は素人ですが、サポートはできます。鑑定スキルで、敵の弱点を探します」


『五人、揃った』


『最終決戦パーティ』


『N+R勇者×R女神×SSR勇者×SSR女神×記録者ギルド職員』


『なんか、属性的に、バランス良い』


『ただし、N+R勇者の主役感』


『主人公補正、ここで来てくれ』


私は、深く、息を吸った。


「みんな」


四人が、私を見た。


「私たち、今まで、いろんな『カード』を引いてきた」


「うん」


「Nアイテム、Rアイテム、SR——途中でやめたみんな、続けてきたみんな、出会った人」


「うん」


「全部、引いたカード」


「うん」


「全部、使う」


私は、北の空に、向き直った。


ヴァニタスの白い影が、雲の中で、ゆっくり、大きくなっていた。空の半分が、もう、黒い。


「引いたカードで、戦う」


リルアが、私の隣で、笑った。


「うん」


「この子と、一緒に」


リルアが私に、肩を寄せた。


「ぜったい、勝つ」


『出陣』


『主役、覚悟完了』


『次回、最終決戦』


『コメント欄、尊いって叫べ』


『叫ぶよ』


『叫ぶ』


『推しを、推す時が、来た』


ルミナの最後の笑顔を、思い出した。


「メロちゃんに、ありがとうって、伝えてください」


——伝える。


絶対、伝える。


そのためにも、ここで、終わるわけにはいかない。


私は、Rツルハシを、腰から抜いた。


「行こう」


雲の渦から、白い手が、伸びてきた。


街の上空に、巨大な、顔のない影が、ゆっくり、ゆっくり、降りてくる。


無貌神ヴァニタス。


URレアリティの、ラスボス。


ガチャで一度も見たことのない、聞いたこともない、伝説のシルエット。


——爆死しすぎて、ラスボスまで「初引き」になるとは思わなかった。


『運営、最後にURをぶっ込んできた』


『運営、こいつをガチャに入れんな』


『これは抗議します(最終話)』


『でも、引いちゃったからには、戦うしかない』


『N縛り勇者、URに挑む(神回確定)』


リルアの手を、強く、握った。


「行くよ」


「うん」


五人で、走り出した。


街の北。雲の渦の下。


——最終決戦。


引いたカードで、戦う。

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