表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/49

第15話 コメント共有機能?いらないんですけど(後編)

翌朝。


外で、鳥が鳴いていた。普通の朝。リルアが私の腕の中で、すぴすぴ言ってる。


昨夜の指の感触が、まだ、私の右手に、残ってる気がした。リルアの首筋に唇を寄せたら、銀の髪が、私の鼻の頭をくすぐった。リルアが、寝たまま、ふにゃっと笑った。「ん……ひなた、ちゃん」と、寝言。


寝てる時にも、私の名前を呼ぶ。


胸の真ん中が、勝手に、温かくなった。


私はもう一度、リルアのおでこに、唇を、軽く落とした。


——その瞬間。


ぐらっ、と、空気が揺れた。


鳥の声が、ぴたりと、止んだ。


——ぐらっ。


「えっ」


地面が揺れた。


ベッドが揺れた。窓のガラスがびりっと震えた。鳥の鳴き声が止まった。


「ひなたちゃん、地震?」


リルアが寝ぼけ顔で起き上がる。


「地震、なんだろうけど——」


——ぐらっ、ぐらっ。


二回目。長い。


「これ、長くない?」


「長い」


——視界の隅で、コメント欄が、ふっと戻ってきた。


『地震です(システム実況)』


『おはよう、コメント欄帰還しました(フィルター解除)』


『マジで揺れてる』


『街全体が揺れてる、たぶん広範囲』


私はベッドから飛び起きた。窓に駆け寄って、外を見た。


——空が、変だった。


「リルア」


「うん」


「来て」


リルアが私の隣に立った。窓越しに、空を見上げる。


朝のはずの空。雲。太陽。すべて、普通。


——でも、空の端に。


ほんの一瞬、何かが、映った。


「えっ」


顔のない、影。


人型の輪郭。でも、顔がない。のっぺりした、白い、巨大な——影。


雲を透かして、空の向こうに、いる。


一瞬。


瞬きして、もう一度見た時には、消えていた。


「ひなたちゃん、いま——」


「見た。私も、見た」


リルアの後光が、激しく明滅し始めた。


ぴかぴかぴかぴかぴか。


普段の「嬉しい」明滅じゃない。違う。これは——怯え。


「リルア、後光が……」


「わたし、なんか、こわい」


「こわい?」


「うん。あれ、見た瞬間、こわい」


リルアが私の腕にしがみついた。後光がぴかぴかしたまま、震えてる。


「リルア、なに? なんで、こわい?」


「わかんない、わかんないけど、わかる」


矛盾する答え。でも、なんとなく、伝わった。


リルアの中の、深いところが、あれを「敵」だと、言ってる。


『コメント欄、これ、ヤバいやつ』


『RPGだとラスボスシルエット定番演出』


『あの形、覚えがあるような無いような』


『先輩女神たちの直感は信じろ』


『鳥が鳴き止んだの、地味に怖い』


「街、見に行こう」


「うん」


服を着替えて、宿を飛び出した。



街は、ざわついていた。


人々が空を見上げてる。「揺れた」「鳥が消えた」「地平線の向こうに何かいた」——口々に話してる。


ギルドに駆け込んだ。


エルナがカウンターの前で、立ったまま、固まってた。手にしている羽ペンが、震えてる。


「エルナさん」


「桜庭さん」


エルナの目が、私を見て——その奥が、私と同じ「見たもの」を共有してた。たぶん、エルナも見てる。


「世界そのものが、揺らいでいます」


エルナの声は、いつもの事務的な口調。でも、内容が、おかしかった。


「揺らいでる、って?」


「鑑定スキルで、空間の歪みを観測しました。先ほどの揺れ——あれは、地震ではありません」


「じゃあ、何?」


エルナが、ペンを置いた。


「世界の、層そのものが、何かに——内側から、押されています」


「内側から?」


「はい。何かが、こちら側に、出てこようとしている」


リルアの後光が、ぴかぴか明滅してる。


エルナの目が、リルアの後光を見て、そして、私を見た。


「桜庭さん、これは、推測ですが」


「はい」


「リルアさんとセラフィーナさん——女神二人は、できるだけ目立たないように」


「えっ」


「あれが何かは、まだわかりません。でも、空に映ったのは——女神の存在を感知して、近づいてきている、可能性があります」


リルアが、私の手を、ぎゅっと握った。震えてる。


「目立たないように、って——」


「後光を、抑えてください。可能な限り」


リルアが、ぐっと、後光を絞った。ロウソクサイズが、もっと小さい、マッチ棒サイズまで縮んだ。


それでも——揺れてた。明滅は、止まらなかった。


『エルナさんが本気モード』


『これはマジのやつ』


『あの空のシルエット、ずっと頭から離れない』


『リルアちゃんを目立たせるな(民意)』


『ラスボス出現、ほぼ確定』


私はリルアの手を握り直した。


エルナが、ノートを開いた。羽ペンを取って、何か書き始めた。


「桜庭さん、わたしは情報を集めます。レクトさんとセラフィーナさんにも、伝えてください」


「わかった」


リルアと一緒に、ギルドを飛び出した。


宿への道。空は、晴れてる。普通の朝。


でも、空気が、おかしかった。


軽すぎる。音が、遠い。


リルアの後光が、ぴかぴか、ぴかぴか、ぴかぴか。


私の手の中で、震え続けてる。


『これ、最終章だ』


『ガチャで言うと——ラスボス前夜の演出』


『みんな、装備整えとけ』


リルアの手を、強く握った。


「リルア」


「うん」


「ぜったい、守るから」


「うん」


「ぜったい」


リルアが、震える後光のまま、笑ってくれた。


「うん。ひなたちゃんなら、ぜったい」


——空の向こうで、何かが、こちらを見ている。


その目はないはずなのに、見られている、と、はっきり、わかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ