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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第14話 ダンジョンコア攻略RTA(N+R装備限定)(前編)

『N+R装備限定ダンジョンRTA、開幕です』


『タイム計測開始(何のタイムだよ)』


『チャート組んでおけよ(無茶)』


『ガバったらリセポから(ダンジョンにリセポはない)』


コメント欄がRTA勢のノリで盛り上がってる。


私はRTA勢じゃない。どちらかというと周回勢だ。RTA勢の「1フレームの無駄を削る」思考は理解できるけど、私の適性は「いかに楽に経験値を稼ぐか」の方にある。


でも今は——早ければ早いほどいい。ブロック化が街に届く前に、ダンジョンコアを叩く。時間との戦い。


「RTAじゃなくて普通の攻略だよ」


『タイムを競う内容なのにRTAじゃないとかあります?』


『コメ欄の期待を裏切るな(無茶振り)』


「うるさい」



ブロック化した森の、地面に穴を掘った。Rツルハシでかこんかこんと。土ブロック、石ブロック、たまに鉄ブロック。掘り進む度にアイテムがインベントリに溜まっていく。


「下掘り、ダメって前の世界のゲームだと言われてたやつだ」


「したほり?」


リルアが覗き込んでる。私の真上から。後光がぽわぽわ。


「真下に掘るの。下に溶岩があったら即死するから、マイクリだと初心者がやるミス」


「ようがんって何?」


「熱い液体。落ちたら焼け死ぬ」


「ひなたちゃん、やめて!」


リルアが後ろから抱きついてきた。


「大丈夫。マイクリ知識で、まずは斜め下に掘る」


『N勇者、ガチでマイクリRTA走者になってる』


『正解です(マイクリ初心者講座)』


『直下堀りを避けるという基本知識を披露してくれてる(教育配信)』


ダンジョン内には私たちパーティだけ。鑑定スキル持ちは街に戻ったから、ナビも遠隔支援もない。頼れるのは私の前世のゲーム知識と——コメント欄。


斜め下、斜め下、たまに横。マイクリの基本ムーブ。Rツルハシで階段状に掘り進む。リルアは私の後ろから、背中にぴったりくっついて見守ってる。昨夜の聖手当法で腐敗病は完治してるから、もう手繋ぎ回復は必要ない。それでも甘えん坊のR女神は離れない。


しばらく掘ると——途中で、虹色に輝くブロックが出てきた。


「え、レア鉱石?」


ツルハシを振り下ろした。


かっ。


刃が弾かれた。まったく掘れない。


『輝石鉱脈っぽい、たぶんSR級ピッケル要』


『無料勢には触らせないやつ(典型)』


『課金の壁じゃん』


コメント欄がいつものように教えてくれる。鑑定スキルじゃないけど、たぶん合ってる。


『無料プレイヤーには触れないレア鉱石(典型)』


『課金ガチャで採掘ピッケル引かないと無理(酷い)』


『Rツルハシ:Rブロックまで対応。SRブロック以上不可(仕様)』


「なんでそんなシステムなんだよ」


諦めて、普通の石ブロックを横に掘った。輝石鉱脈は見なかったことにした。



深度15メートル。


空洞を迂回した先、横に広い通路に出た。


天然の洞窟っぽい。石の床、石の壁。でも微妙にブロック化してる。境界が曖昧。地上のカクカク感と、地下の自然な岩肌が混在してる。


暗い。松明がないから、光源はリルアの後光だけ。


「リルア、前を照らして」


「うんっ」


リルアの後光がランタン級に輝いた。通路の先が見える。赤っぽい地下の岩肌。苔がちらほら生えてる。そして——


影が動いた。


「……何かいる」


視線の先で、人型の影がふっと消えた。瞬間移動?


影人シャドウマン! マイクリのエルダーマン枠』


『視線を外すと瞬間移動する習性! 見てれば動けない』


『目合わせると怒るタイプ要注意』


コメント欄が一気にモンスター辞典化した。鑑定スキルじゃないけど、ゲーマー集合知。


「エルダーマンじゃん……」


「えるだー?」


「前世のゲームのキャラ。目を合わせると怒って襲ってくる」


「じゃあ目合わせちゃダメ?」


「基本はそう。見ないフリして通り過ぎるのが——」


リルアが影人の方をじっと見た。


「リルア?」


「かわいそう」


「え?」


「だって、一人でこんな暗いところにいて。さびしそう」


リルアがつかつかと影人に近づいた。私が止める間もなく。


影人も微動だにしない。リルアの視線に固定されてる。


「こんにちは」


リルアが挨拶した。


影人が——動いた。


「逃げ——」


影人が跳ねた。でも攻撃じゃなかった。びゅんと後ろに下がって、リルアから全力で逃げてる。影の足が、カクカクした歩調で必死に走ってる。


「あ、追いかけちゃダメ!」


リルアが追いかけた。R女神が影人を追いかける構図が発生した。


「なんで逃げるの? 話したいだけなのに!」


「リルア、戻って——!」


影人が壁にぶつかって、ジタバタしてる。本気で怖がってる。


『影人、R女神の浄化光が苦手っぽい?(推測)』


『R女神を捕食対象として認識できないのか(仮説)』


『敵側のレア種族扱い疑惑』


「リルア、追いかけたらかわいそう」


リルアが追いかけるのを諦めた。「……帰っちゃった」


影人が壁に溶けて消えた。


後光がしゅんとした。


『R女神、モンスターに逃げられる(悲しい)』


『浄化光で無意識トラウマ(影人のメンタルケアが必要)』


『話したいだけなのに(天然の加害性)』


「リルア、影人はモンスターだから、仲良くしようとしないで」


「だって、さびしそうだったもん……」


「わかる。わかるけど。モンスターだから」


リルアが膝を抱えて座り込みそうだったから、手を繋いだ。「一緒に行こう」


後光がぽわっと戻った。



次のエリアは——毒沼地帯じゃなかった。


茶色の大きな球体がふわふわ浮いてる。バスケットボール大。茶色い膨らみに、小さな目が二つついてる。


「あれは……キノコ?」


『膨張キノコ(バルーンシュルーム)! 近づくと爆発するやつ』


『マイクリのクリーパー枠』


『爆発範囲:たぶん半径3メートル(ふんいき)』


コメント欄、まじで使えるな。


「爆発? エルダーマンの次はクリーパーか」


「くりーぱー?」


「ゲームの話。気にしないで」


キノコが3個、通路をふわふわ漂ってる。真ん中通らないと進めない。


「爆発範囲、コメント欄が言うには3メートルくらい」


『接触起爆。HP的にひなたさん即死ライン』


『レクトの聖剣で速攻処理推奨』


「レクトちゃん、頼む」


レクトが前に出た。聖剣を構える。


「処理すればいいのか」


「できれば誘爆させないで1個ずつ」


レクトが膝を屈めて——飛んだ。聖剣を下段から上段へ。1匹目のキノコを一閃。


ぽんっ。


弾けた。音がかわいい。でも半径3メートルの衝撃波が壁に響いた。


2匹目、3匹目も同じ要領で処理。レクトのスピードなら爆風より速く動ける。さすがSSR。


でも——


「レクトちゃん、もう少し距離取って。真下から斬ると爆風で吹き飛ばされるよ」


「わかっている。ふんっ」


レクトの前髪が爆風でなびいてる。耳が赤いのは爆風のせいじゃない。


『レクトさま、派手に処理(SSRの暴力)』


『半径3mの爆発をゴリ押しで処理するSSRの力業』


『聖剣、対キノコにも使える(用途広い)』


通路の先を覗いた。


奥の広間に、膨張キノコがふわふわぷかぷか。10、20、30——50は超えてる。


「50体、レクトちゃんでも捌ききれない」


「正面突破は無理だ」


レクトが考え込む。


「トラップで処理できないですか?」


セラフィーナが提案した。


「トラップ?」


「はい。この通路は狭いので、入口に何か置いて——キノコが自分から突っ込むようにすれば、まとめて爆発して処理できます」


なるほど。


「私、マイクリで似たようなトラップ組んだことある」


「マイクリ……?」


「気にしないで。要は、誘導と起爆の自動化」


掘ったブロックをインベントリから取り出した。土、石、木材。それと、虚無のポーション。


『マイクリ知識でトラップ作戦!』


『ひなたさん、本領発揮タイム』


『これN勇者の頭脳プレイ枠』


通路の入口に段差を作る。土ブロックを3段積んだ。リルアと一緒に。レクトが監督してる。セラフィーナが変な場所に積もうとしたのを全員で止めた。


「セラフィーナさん、こっちじゃなくてあっち」


「あっ、ごめんなさい!」


「セラフィーナ、もう積むな」


「ひどい!」


段差の上に、紐を仕掛ける。引っ掛け式の罠。キノコが浮遊して通過すると紐に触れて、上に積んだビン——虚無のポーション入り——が傾いて落ちる仕組み。マイクリのレッドストーン回路の代わりに、原始的な物理トリガー。


「できた」


「あとは起動を待つだけだな」


レクトが頷いた。


待機。


しばらくすると、キノコの群れが段差に近づいてきた。ぷかぷか浮きながら、通路をふわふわ。


1匹目が紐に触れた瞬間、ビンが傾いた。


ばしゃ。


虚無のポーションが降ってきた。キノコの動きが止まる。


ぽん。


爆発した。


誘爆。隣のキノコも連鎖爆発。さらに隣も。


ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん。


ポップコーンみたいな連鎖音が通路に響いた。煙が立ち込めて、30秒後には——


静寂。


全部消えてた。50匹のキノコが、トラップ1つで壊滅。


『神トラップ(感動)』


『マイクリ知識を異世界に持ち込んだN勇者の本領発揮』


『ポップコーンパーティ(成仏)』


「うまくいった……」


リルアが「ひなたちゃんすごい!」と抱きついてきた。後光ぽわぽわ。


レクトが腕を組んで「……ふん。前の世界の知識、なかなか侮れんな」と呟いた。耳が赤い。



深度25メートル。灼熱層。


温度が上がってきた。地下なのに熱い。地熱が強いのか、壁や床がじわじわ温かい。溶岩は近くに見えないけど、岩盤の向こうにはあるらしい。


汗が出る。


リルアの銀色の髪が、汗で頬にくっついてる。白いワンピースが肌に張り付いてる。後光もちょっと弱ってる。暑さでしんどそう。


レクトとセラフィーナは——。


「レクトさま、お水どうぞ」


「いらな……。……いや、いる。もらう」


レクトの聖なるマントが汗でしっとりしてる。SSRの鎧は装飾が多くて、たぶんセラフィーナよりレクトの方が暑い。


「ここで一旦休憩しよう」


通路の脇に、小さな洞穴があった。自然にできた窪み。横に広くて、腰掛けるのにちょうどいい。4人が入っても多少ゆとりがある。


「ここで一旦休憩」


『周囲、モンスターの気配なし(コメ欄調べ)』


『たぶん1時間くらいは安全(推測)』


『コメ欄、ガイド役買って出てる(鑑定スキルではない)』


鑑定スキルじゃないから100%は信じられないけど、コメント欄の集合知は意外と当たる。1時間。短いけど、ないよりマシ。


レクトが洞穴の入口に座った。「私は入口側を見張る。セラフィーナは奥側を頼む」


「はい。奥側、わたしが見ております」


「ひなたとリルアは奥で寝ろ。——先に休めているぞ」


レクトの声が素っ気ない。いつものツンデレ。でも配慮してる。


「ありがとう、レクトちゃん」


「ふんっ」


洞穴の奥に、リルアと入った。岩肌に背を預けて座る。床が温かい。汗が止まらない。疲労が一気に押し寄せてきた。


リルアが私に寄りかかった。


「ひなたちゃん、つかれたね」


「うん」


「……ねむい」


「寝ていいよ。添い寝回復しよう」


二人で岩の床に横になった。外からレクトの気配がする。でも洞穴の奥は暗くて、入口から見えない位置。


リルアの手を握った。あったかい。いつもの温度——じゃない。いつもよりちょっと高い。暑さのせいか、それとも——


「ひなたちゃん」


「ん」


「心臓、はやい」


気づかれてた。


「……リルアも」


リルアの手首に指を当てた。脈が速い。鼓動が手のひら越しに伝わってくる。


しばらく、二人とも黙ってた。


——リルアが、ぽつりと言った。


「……ひなたちゃん」


「ん」


「私ね、本当のこと、まだ話してないことがあるの」


リルアの声が、暗がりの中で小さい。後光は控えめに灯ってる。レクトに気取られないようにしてるんだろう。


「本当のこと?」


「うん。私が——『余りもの』の女神だって、前に言ったでしょ」


「うん」


「それ、半分くらいしか合ってないの」


リルアが、握ってる手に少しだけ力を込めた。


「私、リーゼリスっていう女神のコピーなの」


「リーゼリス?」


「世界を創った女神。創成の女神様。——もう、いないの」


リルアの声がやさしい。寂しさが混じってる。


「リーゼリス様は、世界を創ったときに、力を全部使い切っちゃったの。だから今はもう、本体はいない。でも、いなくなる前に、世界のあちこちに、自分のコピーを残したんだって。世界に何かあった時に、勇者を支えるために」


「それが、女神たち」


「うん。私もその一人。コピー、たくさんいるの。何百人もいる、たぶん」


何百人。


世界のあちこちに、リルアと同じ存在が、何百人もいる。


「だから、私の力は弱いの。一人分のリーゼリス様を、何百人で分けてるから。SSRのセラフィーナちゃんは単体の女神だから力が強いの。私はコピー女神だから、配布女神でR女神で、後光がロウソクサイズなの」


リルアが、自嘲気味に笑った。


「……元から、こうなんだ」


「リルア」


「うん」


「——それでもいい」


私は、リルアの手を握り直した。


「リーゼリスさんがどうとか、コピーがどうとか、何百人いるとか、関係ない。ここにいるリルアが、私の女神だから」


リルアの後光が、ぽわっと一回だけ大きく灯った。


「ひなたちゃん……」


「私が引いたカードはリルアだから。コピーでもRでもロウソクでも、ここにいるリルアが、私の世界一のSSRだよ」


リルアの目に、涙が溜まった。暗がりの中でもわかる。きらっと光る涙。


「えへへ……ひなたちゃん」


リルアが私に体を寄せた。岩の床の冷たさが、二人の体温で消えていく。


「だから、私はロウソクのR女神。ひなたちゃん一人を守るので、いっぱいいっぱい」


「十分だよ」


「えへへ」


リルアが、私の胸に顔を埋めた。後光がぽわぽわ。あったかい光が、暗い洞穴の中に小さく灯ってる。


——余りものの女神じゃない。創成の女神の、確かな分け身。


ロウソクでも、ランタンでも何でもいい。この子が私の隣で光ってくれてるなら、それで十分。


——熱気と、二人の体温と、リルアの後光と。死地を前にした夜は、まだ、これからだった。

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