第13話 Rツルハシ、使い道がありました(後編)
——東の空が白くなった。
四角い太陽が昇ってきた。
ブロックゾンビが動きを止めた。朝日に照らされて——自然に消えていく。
「朝だ」
「朝です」
全員、疲れ切ってた。
リルアが私の膝の上で寝てる。添い寝回復で、二人ともHPが戻っていく。リルアの後光がすぅすぅとゆっくり明滅してる。寝息のリズム。
レクトが壁にもたれて目を閉じてる。セラフィーナがレクトの肩に寄りかかってる。後光がぼんやり。
エルナさんだけがノートを書いてた。
「エルナさんも寝た方が——」
「あと少しだけ。夜間の戦闘データをまとめないと」
エルナさんの目の下にもうっすら隈ができてる。
◇
朝。拠点から出た。
ブロック化——解除されてなかった。
それどころか。
「範囲、広がってますね」
エルナさんの声が硬い。
昨日の境界線が、さらに外側に動いてた。街に向かって。
「このペースだと……あと2日で街の外壁に到達します」
「2日——」
「ブロック化が街に達したら、建物も人もブロック化する可能性があります」
沈黙が落ちた。
リルアの手を握った。リルアが握り返してきた。
「原因は地下のダンジョンコア」
「はい。それを破壊しない限り、ブロック化は止まりません。ですが——」
エルナさんが言いよどんだ。珍しい。いつも事務的にはっきり話す人が。
「——私はダンジョンに行けません」
「え?」
「私は戦闘スキルを持っていません。鑑定しかない。ダンジョン内でブロックゾンビに囲まれたら、私だけ対処できません」
エルナさんの切れ長の目が、ノートに落ちた。
「だから——依頼を出します。正式に」
エルナさんがギルドの依頼書を取り出した。いつ書いたんだ。夜中に書いてたのか。
「桜庭ひなたパーティに、ダンジョンコア攻略を依頼します」
「やるよ」
即答した。街が壊れるかもしれないんでしょ。友達の街を守るって決まってる。
エルナさんの目が——揺れた。ノートを持つ手が、かすかに震えてる。
「……ありがとうございます」
小さな声だった。いつもの事務的な声じゃない。本音が滲んだ声。
「エルナさんは街に戻って状態を報告して」
「わかりました、急いで戻ります」
「よし」
全員を見回した。
リルア——後光がぽわっと灯ってる。不安と覚悟が混じった顔。でも、手を握り返す力は強い。
レクト——聖剣を握り直してる。「ふんっ。こんな四角い化け物、斬り尽くしてやる」
セラフィーナ——後光がシャンデリア級。「お任せください! ……方向はレクトさまについていきます」
「方向、自分で判断しないでくれて助かる」
覗き穴から外を見た。ブロック化した世界。四角い木。四角い草。四角い空。
その地下に、ダンジョンコアがある。
「行こう」
Rツルハシを握った。腰に虚無のポーション。リルアの手。N装備とR女神。
——引いたカードで戦う。いつだってそうだ。
「ひなたちゃん」
「ん?」
「ツルハシ、かっこいいよ」
「だから似合ってほしくないって言ったでしょ」
リルアがえへへと笑った。後光がぽわっ。
『ダンジョン攻略開始(わくわく)』
『N+R装備限定ダンジョンRTA、始まります(震え声)』
『RTA勢「チャートは?」「チャートは?」「チャートは?」』
コメント欄が沸いてる。
次の話のタイトルが、頭に浮かんだ。
——ダンジョンコア攻略RTA(N+R装備限定)。
いやだ、そのタイトル。




