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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第7話 緊急メンテにつき、モンスターは出現しません(後編)

話は決まった。もう、後戻りはできない。



コメント欄を遮断した。全力で。


エルナさんのベッドの縁に座った。エルナさんが正面にいる。暗い部屋で、リルアの後光だけがぼんやり照らしてる。


エルナさんの寝間着はシンプルな白。襟元がゆるくて、鎖骨がちらっと見えてる。


「……緊張してます」


「私も」


「……ふふ。桜庭さんも緊張するんですね」


「するよ。すごく」


「リルアさんの時も、緊張しました?」


「した。めちゃくちゃした」


エルナさんが小さく笑った。笑うと、事務的な印象が消えて、年相応のかわいさが出る。


「……じゃあ、お願いします」


エルナさんが目を閉じた。


私は、そっと手を伸ばした。


エルナさんの頬に、指先が触れた。


「っ……」


エルナさんが小さく息を吸った。


頬がやわらかい。温かい。


指を滑らせる。頬から耳の横へ。耳たぶに触れると——


「ふ……ぁ……」


甘い吐息。


エルナさんの体がかすかに震えた。


「耳、弱いですか」


「わ、わかりません……触られたことないので……」


寝間着の襟元に指がかかった。


「……いい?」


エルナさんが目を開けた。潤んだ切れ長の瞳が、まっすぐ私を見てる。


「…………はい」


小さく頷いた。


ボタンを一つずつ外していく。ひとつ。ふたつ。布が開くたびに、白い肌が現れる。


「……見ないでください」


「見たいです」


「っ……敬語を真似しないでください……」


「きれいだよ、エルナさん。すごく」


「……桜庭、さん……」


リルアが、エルナさんの反対側に、そっと寄り添った。ロウソクの後光が、エルナさんの肌を、淡く、ピンクに染める。


「エルナさん、ひとりじゃないからね」


「リルアさん……」


私の手が、エルナさんの頬を、そっと包んだ。リルアが、エルナさんの額に、女神の祝福のキスを落とした。


エルナさんは、最初こそ「敬語の殻」で必死に体を支えていたけど、私とリルアの手のひらが交互に肩や髪を撫でていくうちに、ゆっくり、ゆっくり、その殻を脱いでいった。


「……桜庭さん……っ」


「敬語、まだ崩れないんだ」


「……これだけは……っ」


リルアが、エルナさんの額にキスをした。


「エルナさん、もう一人じゃないよ」


「……はい」


エルナさんの目から、長くこらえていた涙が、ぽろぽろ、こぼれた。


私とリルアは、二人がかりで、エルナさんを優しく抱きしめた。


「エルナさん」


「は、はい……」


「私たち、ここにいるから」


「……はい」


リルアの後光が、ふたりと一人の体を、あったかいピンクの光で包んでいる。エルナさんが、私とリルアに、しっかりと、しがみついてきた。


——その先のことは、月明かりとリルアの後光だけが、知っている。


エルナさんが、長くこらえていた孤独を、ようやく、ひとつ、降ろした夜だった。


最後にエルナさんは、ぐったりと私の腕の中に沈み込んで、目尻に涙の跡を残したまま、穏やかな顔で笑っていた。


「……これが」


「ん?」


「……これが、ガラスの向こう側、ですか」


「……うん」


「……来てよかったです」


エルナさんが笑った。泣きながら笑った。


リルアが隣で、エルナさんの髪をそっと撫でた。後光がぽわぁっと暖色で光ってる。


「エルナさん、おかえり」


「……ただいま、です?」


「うん。おかえり」


エルナさんがまた泣いた。今度は、荷物を降ろした人の泣き方だった。



しばらくして。


3人でベッドに並んで横になってた。


真ん中に私。右にリルア。左にエルナさん。


「……なんで私が真ん中なの」


「ひなたちゃんが真ん中に決まってるでしょ」


「パートナーの特権です」


リルアが腕にくっつき、エルナさんが肩に頭を乗せてくる。


リルアの後光がぽわぽわ。ほんのりピンク。


「ひなたちゃん」


「ん」


「私の方も、してほしかったけど……今日はエルナさんの日だから、我慢する」


「我慢って……」


「明日してね」


「…………うん」


「やった」


反対側から、エルナさんの小さな声。


「……桜庭さん」


「うん」


「……ありがとうございます」


「ありがとうはこっちの台詞だよ」


「……今日、いい日記が書けそうです」


「日記に書かないでよ!?」


「……冗談、です」


「嘘でしょ。絶対書くでしょ」


「……ふふ」


エルナさんがくすくす笑ってる。


リルアも笑ってる。


3人で笑った。



リルアが先に寝た。いつも通り。すぅすぅ寝息を立てて、腕にしがみついて。後光がうとうと明滅してる。


エルナさんはまだ起きてた。暗がりの中で、小さな声。


「……桜庭さん」


「はい」


「今日のこと……ギルドでは、いつも通りにします」


「うん」


「受付嬢としての私と、今夜の私は、別です。混同しません」


「わかってるよ」


「でも——」


エルナさんが、私の手をそっと握った。


「……ここでは、今夜みたいにしてくださいますか」


「……うん。もちろん」


エルナさんが、ほっと息を吐いた。


「おやすみなさい。桜庭さん」


「おやすみ、エルナさん」


「おやすみ……えるなしゃん……むにゃ……でーたしゅうしゅう……むにゃ」


リルアが寝言で笑ってる。



腕の中にリルア。肩にエルナさん。


二人の体温に挟まれて、異世界10日目の夜が更けていく。


ガチャはN10連だった。


でも今日は、N10連の日じゃなかった。


リルアが言った通り、SSRの1日だった。


いや——SSR以上だ。ガチャには出ない種類の、大切な1日。


引いたカードで戦う。


Nのアイテムで、Rの女神さまと、ATK1のギルド受付嬢と。


……仲間が、増えた。


おやすみ。

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