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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第7話 緊急メンテにつき、モンスターは出現しません(中編)

リルアが目を覚ました。むにゃむにゃしながら起き上がる。


「……ひなたちゃんとエルナさん、何お話してたの?」


「色々」


「色々……」


後光がちかちか。


「秘密の話?」


「秘密じゃないよ」


リルアが私の隣にぺたんと座った。反対側にエルナさん。3人で川辺に足をつけてる。


「ひなたちゃん」


リルアが、小声で言った。


「エルナさんのこと、好き?」


「えっ——」


「好きでしょ。私、見てたよ。エルナさんと話してる時のひなたちゃんの顔」


「り、リルア——」


「怒ってないよ。だって私も、エルナさんのこと好きだもん」


「……え?」


「やさしいし、お料理おいしいし、頭よくて、かっこいいし。好きだよ」


リルアが真顔だった。


「だからね、ひなたちゃん」


「……なに」


「エルナさんのこと、仲間外れにしないであげて」


「仲間外れ?」


「私とひなたちゃんが二人だけで——えっちなことしてるのに、エルナさんは一人。それ、さみしいよ」


……リルアは天然だけど、時々鋭い。鋭すぎる。


「でもリルア、それは——エルナさんの気持ちもあるし——」


「じゃあ聞いてみよう」


「え、ちょっ——」


「エルナさん!」


リルアが明るい声で呼んだ。後光がぽわぽわしてる。


エルナさんがびくっとした。


「は、はい?」


「ひなたちゃんのこと、好き?」


直球すぎる。


エルナさんが真っ赤になった。耳まで。首筋まで。


「り、リルアさん、急に何を——」


「好き? 嫌い?」


「好き嫌いとかそういう単純な話では——」


「好きか嫌いかで言ったら?」


「…………」


エルナさんが、観念したように目を伏せた。


「……好き、です」


小さな声だった。


「やった!」


リルアの後光がぱぁっと明るくなった。


「じゃあ、3人で仲良し!」


「仲良しの定義が広すぎませんか……?」


エルナさんが困惑してるけど、嫌がってはいない。



夕方。街に帰る道すがら。


エルナさんが少し先を歩いてて、私とリルアが後ろを歩いてた。


「ひなたちゃん」


「ん」


「今夜……エルナさんも、一緒に泊まらない?」


「え?」


「宿の部屋、広いでしょ。3人で寝れるよ」


「いや、それは——」


「一緒にいたほうが安全だよ。だって緊急メンテだよ? 何があるかわかんないよ?」


緊急メンテを安全の理由にするの無理がある。


でもリルアの目は本気だった。


「……エルナさんが嫌じゃなければ」


「聞いてみる!」


リルアが駆け出した。エルナさんに何か話しかけてる。エルナさんが顔を真っ赤にして首を横に振ってる。リルアがぺこぺこお辞儀してる。エルナさんが困った顔をしてる。


リルアが戻ってきた。


「いいって!」


「嫌がってたように見えたけど」


「最初は恥ずかしがってたけど、"桜庭さんも一緒ですか"って聞いてきたから"うん"って言ったら"じゃあ……"って」


……私がいるから来るの?


エルナさんがこちらを見た。目が合った。すぐに逸らされた。耳が赤い。



城で詫び石をもらった。


無料ガチャの石。いつものと同じ。意味なし。


引いた。N×10。石で石を引いた。一周回って戻ってきた。


「……いつもと変わらないよ」


「でもね、ひなたちゃん」


リルアが手をぎゅっと握った。


「今日はSSRの1日だったよ」


「……そうだね。SSRの1日だった」


エルナさんが小さく笑った。ノートに何か書き足してる。


「『SSRの1日・ガチャ結果N10連・でも今日は当たり』」


3人で笑った。



宿の部屋。


ベッドは2つ。普段は私とリルアで1つ使って、もう1つは空いてた。


エルナさんが部屋の入口で、もじもじしてた。


「あの……やっぱり私、帰った方が——」


「エルナさん!」


リルアがエルナさんの手を引っ張って部屋に引きずり込んだ。R女神の腕力はたいしたことないはずなのに、エルナさんは抵抗しなかった。


「こっちのベッド使ってください。私とひなたちゃんはこっちだから」


「は、はい……」


エルナさんが私服のまま、ベッドの端に腰を下ろした。肩がこわばってる。


「エルナさん、かたい。リラックスして?」


「リラックスって言われてリラックスできる人いないと思うんですけど……」


ごもっとも。


お風呂は順番に入った。3人で入る提案はリルアがしかけたけど、エルナさんが「それは、その、さすがに……」と全力で拒否したので。


私は内心ほっとした。3人でお風呂は——いろいろ、まずい。



お風呂上がり。3人とも寝間着に着替えて、部屋の明かりを落とした。


リルアが私のベッドに潜り込んでくる。いつも通り。


エルナさんが隣のベッドで、シーツに包まって小さくなってる。


「……おやすみなさい」


「おやすみなさい、エルナさん」


「おやすみ、エルナさん!」


リルアの後光がぽわっとロウソクくらいに灯って、部屋をやんわり照らした。


しばらく、静かだった。


リルアが私の腕にくっついて、すぅすぅ寝息を立て始めた——と思ったら。


「……ひなたちゃん」


「ん? 起きてたの」


「うん。エルナさん、寝た?」


隣のベッドを見る。エルナさんは横を向いてて、呼吸が規則的に見える。


「……寝たみたい」


「ひなたちゃん」


リルアが私の耳元に口を近づけた。


「……したい」


「っ——」


「だって今日、ずっとひなたちゃんの隣にいたのに、ひなたちゃんエルナさんばっかり見てたから……」


「見てないよ!」


「見てた。胸も見てた」


「……それは事故の時に——」


「お風呂の後からもちらちら見てた」


「っ——」


否定できない。

リルアの手が、私のお腹に、するりと、触れた。寝間着の裾から。


「リルア、エルナさんいるから——」


「声出さなきゃ大丈夫だよ」


「無理だって——」


リルアの指が、お腹をなぞった。私の体が、勝手に反応する。


「……ひなたちゃんの体、覚えたよ。ここを触ると……」


「っ……!」


——その時。


「…………」


「…………」


ベッドの軋む音で、目が、合った。


エルナさんが、こっちを向いてた。切れ長の目が見開かれてて、暗がりの中で微かに光ってる。


起きてた。


「…………え」


「…………あ」


3秒。


永遠みたいな3秒。


リルアの手が止まった。


「……エルナさん、起きてた?」


「…………起きてました」


エルナさんの声が、ものすごく小さかった。


「……最初から」


「…………」


「……ごめんなさい、寝たふりしてました。でも……音が聞こえて……」


「っ——」


顔が爆発しそうに熱い。暗くてよかった。暗くなかったら死んでた。


エルナさんが起き上がった。シーツを胸元まで引き上げて、膝を抱えてる。


「見てしまって……すみません。私、部屋を出ます——」


「待って」


リルアが言った。


「出ないで。エルナさん」


「え……」


リルアがベッドから起き上がった。後光がぽわっと灯る。


「エルナさん」


「は、はい」


「今日、川で。ひなたちゃんに触られた時、どうだった?」


「あ、あれは事故で——」


「事故だったけど。体がぴくってしたでしょ? 声、出てたよ。私、聞いてた」


エルナさんが絶句した。


リルアは天然で残酷だ。悪気なく、一番触れにくい真実をすくい上げてしまう。


「……はい。体が、反応しました」


「じゃあ」


リルアが、エルナさんの手を、そっと取った。


「エルナさんも、ひなたちゃんの『推し』に、ならない?」


「——っ」


エルナさんが息を呑んだ。


部屋が静まり返った。リルアの後光が、ぽわぽわと明滅してる。


「リルアさん……あなたは、いいんですか。桜庭さんは、あなたの——」


「うん。ひなたちゃんは私のパートナーだよ。でもね、ひなたちゃんはエルナさんのことも好きだよ」


「リルア! 勝手に——」


「違うの?」


「…………」


「ほら」


リルアが満足そうに頷いた。


「エルナさん。ひなたちゃんのこと好きって、さっき言ったよね」


「……はい」


「じゃあ、みんな好き同士だよ。何か問題ある?」


問題しかない気がするけど、リルアの論理はシンプルに正しい時がある。困ったことに。


エルナさんが私を見た。暗がりの中で、切れ長の目が揺れてる。


「……桜庭さん」


「はい」


「私——2年間、ずっと一人でした。誰にも触れなかったし、触れてもらえなかった」


「……うん」


「今日、桜庭さんの手が触れた時——初めて、ガラスの向こう側から出られた気がしたんです」


エルナさんの目に、光が集まり始めた。泣きそうな顔で。


「だから——もう一度、触れてほしいんです。事故じゃなくて」


——事故じゃなくて。


その言葉が、胸の真ん中を射抜いた。


私はリルアを見た。リルアは後光をぽわぽわさせて、にこにこしてた。


「いいよ。ひなたちゃん、してあげて」


「リルア……本当にいいの?」


「うん。だって、私が隣にいるから。取られるわけじゃないでしょ?」


「取られないよ。絶対に」


「じゃあ大丈夫」


リルアがぱぁっと笑った。この子の器は、Rランクじゃない。


このままだと、私たちは何になるんだろう。3人で——

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