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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第7話 緊急メンテにつき、モンスターは出現しません(前編)

第7話 緊急メンテにつき、モンスターは出現しません(前編)



異世界10日目の朝。


目覚めると、空に巨大な文字が浮かんでいた。


窓から差し込む朝日の中に、半透明の文字列。ステータス画面と同じフォント。同じ色。


『緊急メンテナンスのお知らせ』


『現在、モンスターの出現システムに不具合が発生しております。復旧までフィールドでの戦闘は行えません。ご迷惑をおかけし申し訳ございません』


「……バグ発生か?」


リルアがもそもそとベッドから起き上がった。銀色の髪がぼさぼさで、後光が寝ぼけてぼんやり。


「ひなたちゃん……空に字が書いてある……」


「メンテだって。今日はモンスターが出ないらしい」


「もんすたーが出ない? じゃあ……」


「お休みだね」


「やったぁ!」


リルアがベッドの上でぴょんと跳ねた。昨日の約束通りの休日。約束した上に、世界の方からも「休め」と言ってきた。


リルアが私の腕にぎゅっとしがみついた。昨夜から——いや、あのお風呂の夜から、リルアの距離感がさらに近くなった。


お腹に顔を押しつけてくる。甘えてる。


「ひなたちゃん、今日はどこにも行かないで一緒にいて」


「うん、いるよ」


……あの夜以来、リルアと寝る時の体の密着度が明らかに上がっていた。前は腕にくっつくだけだったのに、今は全身で絡みついてくる。


それはさておき。



ギルドに行くと、入口に「本日休業」の札がかかっていた。


その札の前に、エルナさんがいた。


いつものギルドの制服じゃない。白いブラウスにロングスカート。私服だ。


「あ……桜庭さん、リルアさん。おはようございます」


「おはようございます、エルナさん。今日はお休みですか?」


「はい。緊急メンテでギルド機能も停止していますので」


エルナさんが少しもじもじして、視線を逸らした。


「あ、あの。もしご予定がなければ、なんですが」


「はい」


「……今日、一緒に遊びませんか」


「え?」


「街の東にきれいな川があるんです。今日みたいにモンスターがいない日なら——その、水遊びとか、どうかなって」


いつもの「データ収集」の建前がない。純粋なお誘いだ。


リルアが私の袖を引っ張った。


「ひなたちゃん! 川遊び! 行こう!」


「うん、行こうか。せっかくの休日だし」


エルナさんの表情がぱっと明るくなった。年相応の女の子の顔。


「ほんとですか!? あの、私、お弁当を作ってきてもいいですか!?」


「え、お弁当まで?」


「料理は得意なんです。唯一の生活スキルなので」



マーケット通りで水着を買った。リルアは迷い0秒で白いフリル付きのワンピース型を選んだ。エルナさんは長いこと迷ったあと、ワインレッドのシンプルなビキニを選んだ。


「ワンピース型は全部売り切れていて……派手なのは苦手なので、これが一番落ち着いた色だったんです」


私は紺色のスクール水着みたいなのを選んだ。ワンピース型で、腰のところにちょっとスカートみたいなフリルがついてるやつ。胸がないのでビキニを選んでも何も主張できない。



川に着いた。


透き通った水が岩の間を流れてる。幅は10メートルくらい。川底の石がはっきり見えるほど透明で、木漏れ日がきらきら水面に揺れてる。


着替えて出てきたら——


「ひなたちゃん!」


リルアが白いワンピース水着で飛び出してきた。かわいい。白いフリルが銀色の髪に映えてる。


エルナさんも出てきた。


……あ。ビキニだった。


ワインレッドのシンプルなビキニ、と説明を聞いていたはずなのに。実物を見るまでわかってなかった。ポニーテールがいつもより高い位置で結ばれて、首筋から肩にかけてのラインが全部見えてる。そして、胸が。


胸が、ビキニのトップスから溢れそうに、なってる。


布の面積が少なくて、谷間がはっきり見えてる。制服を着てる時に想像してた以上の、ずっと上の話だった。


エルナさんが両腕を胸の前で交差させて隠した。耳まで赤い。


「……見ないでください」


「見てないです」


見てた。


あの夜、リルアの胸に触れた記憶が蘇る。リルアとは違う、もっと大きな——


考えるな。


『3人の水着姿にフィルターかからないの?』


『水着は服だからセーフ判定(神仕様)』


『ギルド受付嬢の胸囲、制服詐欺だったことが発覚(速報)』



川に入って遊んだ。


リルアが水をばしゃばしゃ跳ねさせる。3人で水をかけ合って、笑って、叫んで。


前の世界では絶対にやらなかったこと。


しばらく遊んで、岩場で休憩していた時だった。


エルナさんが深い方に足を踏み入れたところで、川底の苔に足を滑らせた。


「きゃっ——」


バランスを崩して、水中に沈みかける。私が咄嗟に手を伸ばした。


「エルナさん!」


エルナさんの腕を掴んで引き上げようとした——その時。


ずるっ、と。


エルナさんの水着の肩紐が、岩の突起に引っかかって——


「あっ——」


ずれた。


エルナさんの水着が、肩からずるっとずり落ちかけた。


「やっ——!」


エルナさんが慌てて押さえる。でも片手で私に掴まって、片手で水着を押さえて、体勢が不安定で——


「エルナさん、掴まって!」


私がエルナさんの体を支えようとして、両手を伸ばして——


……手が。


ずるりとずれた水着の上から、やわらかいものに、触れた。


ふに。


「…………」


「…………」


時間が止まった。


手のひらに伝わる、やわらかくて、あったかい感触。水着の薄い布越し。リルアの時とはまた違う——大きい。明らかに大きい。手のひらに収まらない。


指が沈んでいく。弾力がすごい。水着がずれたせいで、布が薄くなったところから直接——


エルナさんの体がびくっと震えた。


——この一瞬の、息を呑むような気配。


リルアがあの夜、最初に見せたものと同じだ。驚きと、困惑と、それから——


「ご、ごっ、ごめんなさい!!!!」


ばっと手を離そうとした。


でも離す瞬間に、指先がエルナさんの胸の真ん中に、もう一度、軽くかすった。


エルナさんの体が、ぴくんと跳ねた。目が見開かれて、切れ長の瞳が潤んで——すぐにぎゅっと閉じられた。


「ち、違うんです! 支えようとしたら手が! 不可抗力!」


「わ、わかってます……不可抗力……」


エルナさんが水の中に肩まで沈んで、顔を真っ赤にしてる。水着を直しながら、もじもじしてる。


「あ、あの、桜庭さん」


「はい! すみません!」


「……痛くは、なかったです。その、大丈夫です」


痛くなかったって言われても。問題はそこじゃなくて。


……いや、問題はその先にあった。


エルナさんの体に触れた瞬間の感触が、手のひらにはっきり残ってる。リルアとは違うやわらかさ。エルナさんの体が、ほんの少しだけ、反応していたのが、わかった。


そして私も。


胸の奥が、きゅっとした。あの夜、リルアと過ごした時と、ちょっと似た感覚。


まずい。これはまずい。


リルアが岸辺からこっちを見てた。後光がちかちか不穏に明滅してる。


「……ひなたちゃん」


「ち、違うの。事故だから」


「私の時も事故だったよね」


「うん。事故。全部事故」


「……ふーん」


後光、暗い。嫉妬バロメーター、反応してる。


「リルア、こっち来て。一緒に遊ぼ?」


リルアがぷくっと頬を膨らませた。でもすぐに水に入ってきて、私の腕にぎゅっとしがみついた。


「……私の方が先だから」


「何が?」


「揉まれたの」


「その主張やめて!?」



お昼になった。


川辺の木陰に座って、エルナさんのお弁当を開けた。三段の重箱みたいな木の器に、色とりどりのおかずが詰まってる。全部おいしかった。


そして——午後。


エルナさんが、自分の過去を話してくれた。


召喚されたこと。女神が現れようとした時に、怖くて手を引っ込めたこと。勇者になれなかったこと。


リルアが「怖かったのは、普通だよ」と言って、エルナさんが泣いた。


エルナさんが私を抱きしめて「死なないでください」と言った時——水着越しのエルナさんの体温が、さっきとは別の意味で、じんわりと胸にしみた。


リルアも抱きしめて、「一緒にいて?」と言った。


3人で川辺に座ってる。リルアが私の膝で寝た。


エルナさんが隣で、ノートに何かを書いてた。


穏やかな午後だった。



夕方前。リルアがまだうとうとしてて、私とエルナさんが二人きりで川辺に座ってた。


足を水につけて、ぱちゃぱちゃ。


「桜庭さん」


「はい」


「……さっきの、ことなんですが」


「さっき?」


「川で……その」


エルナさんが頬を赤くした。


「あの。触られた時の、ことです」


「すみませんでしたぁぁぁ!」


「違うんです。謝ってほしいわけじゃなくて」


エルナさんが膝を抱えた。ポニーテールが揺れてる。


「……正直に言うと」


「はい」


「……嫌じゃ、なかったんです」


「…………え」


「事故だったのはわかってます。でも。桜庭さんの手が触れた時——」


エルナさんの声が、かすかに震えた。


「体が、反応しました。自分でもびっくりしました。前世でも、この世界でも、誰かに触れられて体が反応したことなんて一度もなかったんです」


「エルナ、さん……」


「ずっと——記録者でいたから。誰かに触れることも、触れられることも、なかった。体だけじゃなくて、心も。ずっとガラスの向こう側にいたみたいで」


エルナさんが水面を見つめた。


「でも桜庭さんの手は——ガラスを通り抜けてきた。事故だったのに」


沈黙。川のせせらぎだけが聞こえる。


「……それで、あの声が出ちゃったんです。自分でも知らない声でした」


「……エルナさん」


「こんなこと言って、気持ち悪いですよね。すみません、忘れてください」


「気持ち悪くないよ」


自分でも意外なくらい、はっきり言えた。


「……え?」


「私も——リルアに初めて触れた時、同じ気持ちでした」


言ってしまった。


エルナさんが目を見開いた。


「桜庭さんとリルアさんは、もう——?」


「…………はい」


「…………」


「数日前の、お風呂で」


「…………」


エルナさんの切れ長の目が、ゆっくりとまばたきした。


「……そうですか」


寂しそうだった。ほんの一瞬だけ。すぐに受付嬢の笑顔に戻ったけど。


「いい関係ですね。桜庭さんとリルアさん」


「エルナさん」


「はい」


「私、エルナさんのことも——」


言葉が詰まった。何を言おうとしてるのか、自分でもわからない。


エルナさんが好き?


友達として?


それとも——リルアに感じてるのと同じ種類の?


手のひらに残ってる感触が、答えを知ってる気がした。


「……エルナさんのことも、大切です」


「……ありがとうございます」


エルナさんが笑った。やわらかい笑顔。でも目の端に、何かを諦めたような色がちらっと見えた。

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