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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第5話 R女神の入浴事情(後編)

コメント欄を遮断した。10分間。——でも、その10分間のことは、二人だけの秘密にする。



リルアの肩に置いた手を、ゆっくり滑らせた。


鎖骨のラインを、指先でなぞる。リルアの体が、ぴくっ、と震えた。


「っ……」


「痛い?」


「ううん……くすぐったい……ちょっとだけ」


耳たぶに、そっと触れた。


リルアの肩が、びくっと、震えた。


「い、今の何……?」


「耳、弱いの?」


「わかんない……初めてだから……」


初めて。


その言葉が、胸に刺さった。リルアは女神だけど、こういうことは何も知らない。初めて触れられてる。私の手が、最初。


……責任が重い。


でも止まれない。止まりたくない。


リルアが、口元を覆ってた手を、そっと降ろした。唇が濡れてて、かすかに開いてて。


「……ひなたちゃん」


「ん」


「キスって、知ってる?」


「——知ってるよ」


「したこと、ある?」


「……ない」


「私も、ない」


リルアの青い目が、至近距離で私を見てる。湯気越し。後光がぽわぽわ明滅してる。


「してみたい?」とリルアが聞いた。


「……うん」


答えてから気づいた。もう考える前に体が返事してた。


リルアがそっと目を閉じた。銀色の前髪から雫が落ちて、まつげが長くて。


私も目を閉じて、顔を近づけた。


ちゅ。


唇が触れた。


やわらかい。あったかい。お湯の香りと薬草の匂いと、リルアの甘い匂いが混じってる。


一瞬だけ触れて、離れた。


「…………」


「…………」


顔を見合わせた。二人とも真っ赤。


リルアの後光がぼわっと爆発しかけてる。水面が揺れた。


「……もっかい」


リルアが言った。


「え」


「もっかい、して」


今度は私の方から。唇を重ねた。さっきより長く。リルアの唇が震えてるのがわかる。


お湯と、桃色の後光と、二人分の鼓動だけが、浴室を満たしていた。


リルアの目が、潤んでいた。銀の髪が湯気の中で揺れて、青い瞳が、私だけを見つめている。


「リルア」


「うん」


「……好き」


「私も……ずっと、好き」


——その先のことは、湯気の向こうに、ゆっくり、溶けた。


その夜、私とリルアは、ただの女神と勇者じゃない、もっと深い関係になった。


「世界が白くなった……ひなたちゃんの、せいで」


しばらくしてから、リルアが、ぽつりと呟いた。


「私の後光のせいだと思うけど」


「違うよ。目の裏が白くなったの。きらきらして……ばーんって」


……表現が壮大。


リルアが私の首元に顔を埋めた。


「……ひなたちゃん」


「ん」


「私だけ、ずるい」


「え?」


リルアの手が、お湯の中で、そっと、私のお腹に触れた。


「ひなたちゃんにも、してあげたい」


「——」


心臓が、また、止まりそうになった。


「り、リルア、いいよ別に——」


「いいよじゃない。私もしたい。ひなたちゃんが気持ちよくなるところ、見たい」


リルアの指が、ぎこちなく、でも、確かに、私のお腹をなぞり始めた。


——そして、今度は、リルアが私を、抱きしめる番だった。


「ひなたちゃん、目、閉じないで。私を見てて」


リルアの指が、私の頬を撫でた。湿った銀の髪が、私の肩に触れる。


「ひなたちゃん……好き……」


「私も……」


リルアが、私の額に、唇を、そっと押し当てた。


——お風呂の中で、ふたりの時間は、もう少しだけ続いた。


リルアにもたれかかった。力が入らない。お湯の中で、二人で溶けていくみたいだった。


後光がぽわぁっと、暖色で光ってる。ピンクがかった、やさしい光。


「……ひなたちゃん」


「……ん」


「きれいだった」


「……何が」


「ひなたちゃんの顔。目がとろーんってなって、口がちょっと開いて……すごくきれいだった」


「……恥ずかしすぎて消えたい」


「消えないで。やっと会えたんだから」


リルアの腕がぎゅっと力を込めた。


……消えない。消えないよ。


どれくらいそうしていたかわからない。


お湯がだいぶぬるくなった頃、リルアが言った。


「ひなたちゃん」


「ん」


「これ……なんて言うの? ひなたちゃんの世界では」


「……ふたりだけの、秘密」


「ふたりだけの、ひみつ」


「うん」


リルアが、味わうように繰り返した。


「ふたりだけの、秘密……ひなたちゃんと、わたしの、ひみつ」


「声に出さなくていいんだよ……!」


「えへへ。でも気持ちよかったよ? ひなたちゃんも、気持ちよかった?」


「…………うん」


認めるの、すごく恥ずかしい。でも嘘はつけない。


「えへへ」


リルアが嬉しそうに笑った。後光がぽわぽわ。



お風呂から上がった。


脱衣所でタオルで髪を拭きながら、ふと気づいた。


「……あれ」


「どうしたの、ひなたちゃん?」


「肌、お風呂に入る前とそんなに変わらない……」


4日分の垢と汚れがあったはずなのに。お風呂に入る前から、体がそこまで汚れてなかった気がする。


思い返す。


ここ数日、リルアと一緒に寝てた。毎晩、腕にくっついて、肌と肌が触れ合って。


「リルアの近くにいると回復する」機能。あれは体力だけじゃなくて——


「リルア」


「ん?」


「もしかしてなんだけど。一緒に寝てると、体も綺麗になる?」


「え?」


「回復だけじゃなくて、お風呂に入ったみたいに……浄化? 的な」


リルアが首を傾げた。


「わかんない。でも——」


リルアが私の髪をすんすん嗅いだ。


「あ、ほんとだ。ひなたちゃん、お風呂入る前からいい匂いだった気がする」


「つまり」


「つまり?」


「私たち、お風呂に入る必要が——なかったのでは?」


しーん。


リルアがぱちぱちと瞬きした。


「……えっ」


「一緒に寝るだけで体が綺麗になるなら、お風呂は……」


「…………えっ」


「……必要、なかった」


リルアと顔を見合わせた。


沈黙。


3秒。


5秒。


リルアが真っ赤になった。


「……えっと。じゃあ今日のお風呂は……」


「……」


「……お風呂じゃなくてもできたってこと?」


「……その言い方はやめて」


「えへへ」


リルアがにこにこしてる。恥ずかしさを超越したかのような笑顔。


「でもでも」


リルアが手を叩いた。


「お風呂は入る必要なくても、入りたい!」


「え?」


「だって楽しかったもん。ひなたちゃんに髪洗ってもらったの、すっごく気持ちよかった。それに……」


リルアがもじもじした。


「あれも……また、したい」


「リルアっ!?」


「だって気持ちよかったんだもん。ひなたちゃんは嫌だった?」


「嫌じゃないけど……! そういうことはもっとこう……!」


「じゃあ明日も一緒に入ろうね!」


必要なくても入る。もはや目的が衛生面じゃなくなっている。複数の意味で。



部屋に戻って、ベッドに潜り込んだ。


リルアが当然のように隣に入ってくる。もう何も言わない。何も突っ込まない。これが公式のシステムだ。添い寝回復。浄化機能つき。


……そしてさっきの記憶つき。


リルアが腕にくっついた。お風呂上がりの銀色の髪がさらさらで、薬草のいい匂いがする。


体が触れ合うたびに、さっきの感触がフラッシュバックする。やわらかかった感触。甘い声。白く弾けた光。


「今日、楽しかったね」


「……うん」


楽しかった。楽しいで片付けていい内容じゃなかった気もするけど。


「明日は何するの?」


「明日は0時にガチャ引いて、ギルドでクエスト受けて……いつも通りかな」


「いつも通り。……えへへ。いつも通りがあるの、嬉しい」


いつも通り。


リルアにとって、「いつも通り」がある生活は、初めてなのかもしれない。今までは、配布女神として送り出されて、数日で交換されて、また女神の世界に戻されて。


「いつも通り」が始まる前に、毎回終わってた。


「リルア」


「ん?」


「明日も一緒だよ」


「……うん!」


「明後日も」


「うんっ」


「その次も」


リルアがぎゅっと腕を抱きしめた。後光がロウソクくらいに落ち着いて、あたたかい。ちょうどいい夜灯。ほんのりピンクがかってる。


リルアが嬉しそうに笑って、目を閉じた。


しばらくすると、すぅすぅと寝息が聞こえてきた。後光がうとうと明滅して、やがてぽわっと静かに灯り続けた。


腕の中のリルアが、寝言を呟いた。


「……パートナー……えへへ……ずっと一緒……売却不可……むにゃ」


……寝言に「売却不可」が出てくる女神、リルアだけだと思う。


腕の中の体温。後光の明かり。やわらかい寝息。


今日、私たちの関係は変わった。


パートナーで、女神と勇者で、推しと推されで——


それ以上の何かに。


名前はまだつけられない。でも胸の奥がぽかぽかしてて、リルアの寝顔を見てると心臓がきゅっとなる。


前の世界には、こういうのがなかった。


スキルは2つしかない。ステータスは底辺。毎日N9のゴミの山と戦ってる。


でも、隣にこの子がいるなら、スキル2つの世界も悪くない。


全然、悪くない。


おやすみ、リルア。


おやすみ、私のパートナー。


——私の、大好きな人。

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