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ガチャ爆死で異世界召喚されたけど、スキルが『無料10連ガチャ(99%低レア)』と『コメント欄』しかない ~ゲーム知識でがんばります~  作者: ころにゃん


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第4話 冒険者ギルド、ランクは最底辺です(後編)

翌朝。昨日のことは、昨日のことだ。



気持ちを切り替えて、本日のクエストに向かう。


昨日と同じ東の草原。スライム討伐。今日のNアイテムは昨日ほどの当たりはなかったけど、虚無のポーション(小)が1本出た。壊れやすいビンは出なかったので、今日はポーションを直接ぶっかける近接スタイルで行くしかない。


草原に向かって歩いていると——向こうから、見覚えのある銀の鎧が歩いてきた。


レクト・ヴァルシュタイン。


隣にセラフィーナ。後光がいつも通りまぶしい。朝日とセットでまぶしさ2倍。


レクトちゃんが立ち止まった。碧い目がこちらを見る。


「桜庭」


「あ、レクトちゃん。おはよう」


「……おはよう」


小さく返事をした。耳が、ちょっとだけ赤い。


「聞いた」


「え?」


「ギルドで……揉めたと」


早い。もう噂になってるの。


「あっ……」


「配布女神と呼ばれたR女神を庇って、中堅冒険者に啖呵を切った、と」


「いや、啖呵ってほどじゃ——」


「セラフィーナが聞いてきた」


セラフィーナがぺこりと頭を下げた。


「リルア先輩を守ったんですね! 先輩の勇者さますごいです!」


「あ、ありがとうセラフィーナちゃん……」


レクトちゃんが腕を組んだ。何か言いたそうな顔。でもなかなか口を開かない。


「レクトちゃん?」


「……なんでもない。忘れろ」


出た。「忘れろ」。


「ただ……」


レクトちゃんが横を向いた。碧い目が遠くを見てる。


「Fランクが中堅相手に啖呵を切るのは、勇敢か無謀かのどちらかだ」


「無謀の方だと思います」


「……だが」


レクトちゃんの声が、ほんの少しだけ柔らかくなった。


「自分の女神を守ろうとする姿勢は、悪くない」


碧い目がちらりとこちらを見た。


耳が赤い。


その時、ふと思いついた。


「レクトちゃん」


「なんだ」


「ちょっとお願いがあるんだけど」


ポケットから2つ目のフレンドポイントの結晶を取り出した。1つ目はリルアにもエルナさんにも効かなかった。これが最後の1個。


「これ、受け取ってもらえない?」


「……なんだそれは」


「フレンドポイント。たぶん友人に使うアイテム。2つ引いたけど、1つ目はリルアにもエルナさんにも効かなくて——」


「友人に?」


レクトちゃんの眉がぴくっと動いた。


「私に……使うのか?」


「うん。データ収集も兼ねて。ダメ?」


レクトちゃんが黙った。


碧い目が揺れてる。


「別に……構わない。断る理由もない」


声がちょっと震えてる。


私はフレンドポイントの結晶をレクトちゃんに向けた。意識を集中する。「レクトちゃんに使う」。


結晶が、光った。


今度は——弾けた。


きらっ、と小さな光の粒子がレクトちゃんの全身を包んで、すっと消えた。


「……え、効いた!」


「なっ——!」


レクトちゃんの頭上に、小さな文字が浮かんだ。



**【バフ:フレンドポイント】**


対象:レクト・ヴァルシュタイン


効果:攻撃力+1(1日限定)



攻撃力+1。


レクトちゃんのステータスが全項目A以上の中で、+1。


……誤差じゃん。


『+1wwwwww』


『全ステA以上に+1は草生える』


『限凸MAXのSSRに経験値1入れるようなもの』


『確率ニキ、A+1の上昇率は?』


『微小すぎて計算する意味がない(正論)』


レクトちゃんが自分のステータスを見て、複雑な顔をしている。


「……攻撃力が1上がった」


「うん。ごめん。しょぼくて」


「しょぼいのはわかっている。だが——」


レクトちゃんが言葉を切った。


耳が赤い。首まで赤い。


「——効いた、ということは」


「うん。レクトちゃんは"フレンド"判定されたっぽい」


リルアがぱちぱち拍手した。


「すごい! ひなたちゃんにフレンドができた!」


「フレンドができた、って言い方やめて。初めて友達ができた小学生みたいでしょ」


「初めてじゃないの?」


「……………………」


初めてです。


『初フレンドがSSR勇者、格差フレンドすぎる』


『いやむしろSSR勇者がフレンド枠に入ってくれたのレア案件では?』


レクトちゃんが咳払いをした。


「か、勘違いするな。これはシステム上の判定であって、私がお前と友人関係にあるということでは——」


「でもフレンドって出てるよ?」


「誤認だ。私はお前に興味があるだけで——」


はっ、と口を塞いだ。


「……興味?」


「忘れろ」


顔全体が赤い。耳だけじゃない。首筋まで紅潮してる。


セラフィーナが横で微笑んでいる。


「レクトさまは、本当は嬉しいんです」


「余計なことを言うな!」


『ツンデレの見本市か?』


『SSR勇者、照れ属性でデバフかかってない?』


レクトちゃんが歩き出した。背中を向けたまま、ぽつりと。


「……私のほうが先にお前を助けたかったのに」


「え?」


「今のはなしだ」


早歩きで去っていった。朝日に照らされた白銀の鎧がキラキラしてる。


「……今、なんて言った?」


「さあ……?」


リルアが首を傾げた。


『「私のほうが先にお前を助けたかったのに」って言いました(聞こえてた)』


『SSR勇者のフレンド1号ポジション、尊すぎない?』


『レクトさん、照れてない? 照れてるよね? 全身で照れてるよね?』


『確率ニキ、レクトがデレる確率は?』


『現時点のサンプル数で計算は不可能だが、耳の赤さから推定して——高い』


確率ニキ、珍しく曖昧な回答。


リルアが私の腕にぎゅっとくっついた。


「ひなたちゃん」


「ん?」


「フレンドポイントは私に効かないけど。レクトさんもエルナさんも、ひなたちゃんにやっていないことが、私にはあるから」


「それはなに?」


「膝枕!」


「声大きい!」


朝日が照らす中の街で「膝枕!」と叫ぶR女神。通行人がこっちを見てる。


「えへへ。帰ったら膝枕してあげるね」


「いいから歩こう。ね」


リルアがにこにこしてる。後光がぽわぽわしていた。



その後、スライムを2体倒した。


虚無のポーション直がけスタイルは効率が悪すぎて、昨日の半分も戦えなかった。やっぱりビンがないと投擲ができない。来世は壊れやすいビンをまとめて引きたい。来世じゃなくて明日のガチャで。


帰り道、リルアが約束通り膝枕をしてくれた。草原の真ん中で、夕暮れの光の中で。


「……ひなたちゃん。今日はとってもがんばったけど、疲れちゃったね」


「そうだね……」


リルアが私の前髪をすっと撫でた。草原で初めて膝枕してくれた時と同じ、やさしい手。


「宿に帰ったらお風呂入ろうね。一緒に」


「え、お風呂!? 一緒!?」


「だって一人で入ったら寂しいでしょ?」


リルアがにこにこしてる。後光がぽわぽわしていた。


…………あれ。


なし崩しに、入ることになってないか?


「……まあ、その……うん、そう、だ、ね」


「やった! じゃあ帰ったらすぐ行こうね!」


なんで私、うなずいた? 断れたよね?


異世界に来て4日目。そういえばちゃんとお風呂に入っていない。


そして今夜、リルアと一緒に入ることになった。


…………どうしよう。

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