運動した後は豆乳(たんぱく質)だろ!
ペリュトン戦その後の後半です。
キャロラインが暴走し過ぎて、何回も書き直しました。
また手直しするかもしれません。
PVが14000手前、ユニークが4000を超えました。お読みくださり、ありがとうございます。
ジャガルドが喜びの余り、(酔っ払って)大噴水を上げてくれるかもしれません。
「俺、盛大な家出してるトコなの」
「コイツ、しつこいファンが多くてな。雲隠れってやつだ」
幼馴染みの言葉に、ジャガルドがうんざりといった表情で続いた。
ファンというか『殿下大好き派』という、しまりの無い名で呼ばれている過激派なのだが。
「意外と各所に引っ張りだこなのですのよ。だから、わたくしの引っ越しと同時に、内密にここへ来たのですわ」
キャロラインが若干遠い目をしながら言った。
その時、彼女は本人より苦労していたのだろう。
「そのせいで貴族には過敏になってるわけ。だから、貴族っぽい人には内緒な!」
「そんな知り合い、いねぇよ」
王族含む貴族を前に、バジークはすっぱりと否定の言葉を口にした。
その横で相棒が「そこにいるって!」という必死な顔をしているのは見なかった事にしておく。
「そういう訳で、人身売買の元締めについては、ギルドなり専門機関なりにお任せ致しますわ。
……それよりも、馬車に乗せられていた人たちの事なのですが」
引っ越し前の事は余り話題にしたくなかったのだろう。キャロラインが話を進めた。
「先程、この町の町長と交渉しました。町長はこの事態にひどく同情的で、しばらくこの町で面倒を見ると言っておりました」
交渉と言っても、この前ターリックの町に行った時の魔物の素材の事を持ち込み、ガライたちが倒したにも関わらず無断で素材を換金したのには目を瞑る代わり、その資金をもって先行投資として恩を売っておけば働き手が定着するかも、という事を示唆しただけである。
つまり半分は脅しのようなものである。
しかし「キャロライン嬢の容姿と話し方と勢いでセールストークのようになっていた」というのは、町長宅に付いて行っていたビフレットの弁。
「その間に、あの団体をターリックの町まで突き出しに行って頂けないかしら。ギルドに報告に行くついでに」
そう話を向けたのは、バジークではなくステイクの方にだった。
最終決定はバジークがするだろうが、それまでの決定はステイクがしていると踏んでの言葉だろう。
それにしても、表現に違和感しかない。
「ギルド長に『ガラムから』って言ったら、大体通じると思うぞ」
続くガライの言葉に、いや、それもどうなんだ……と思うジャガルド。まあ、前回、やらかした感は多少あるが。
「ギルドには報告に行くっすけど。ああ、一番近いのがその町っすか。……って、何でそれで通じるんだ!?」
豪華なメンツにここが田舎町という事を忘れそうになっているのもあるが、ツッコミどころがありすぎて、ちょっと語尾が普通になったステイク。
その横で、バジークは呑気に「何か暗号っぽくて、かっこいいな」等と宣っている。
「俺がいろいろやるだろうなって思っているはずだから。前に三つ目熊持ち込んだからさ」
「はぁ!?アンタ……あ、おま……違う、ガライさん、何やってんっすか!!」
サザングリズリーと聞いてステイクが混乱しつつも声を上げる。
あのおっきい凶暴なクマさんの姿が脳裏を過る。
「ん? 美味しいぞ、テータンパンで高施術だから!」
「何だか隠れた名医ってよりも、ヤブな町医者みたいだねぇ」
ガライがそう言うと、チヤがニヤニヤしながら呟いた。訂正はしない。
それに戦くキツネ目の男。
プテラスバードに引き続き、食べたのか!?
彼は現在進行形である事を知らない。ついでに自分たちも食べたという事も知らない。
そこにキャロラインが、注目を集めるために手を打った。
「とにかく、報告が終わったら、恐らく事情聴取のために誰か来るなり、連れて行くなりするでしょう。そうしたら、帰るところがある方は責任を持って故郷に還されるはずですわ」
「そっか、帰るところが失くなっている可能性があるんだ……」
ペリュトンを追ってきた冒険者たちは確かに言っていた。
「村ごと無くなっているところもあった」と。
「そこは国に報告を上げておきましょう。調査してもらわなくては」
ここからでは距離が遠くて、手の出しようがないのだろう。キャロラインもそこは諦めているのか、国に丸投げの姿勢だ。
「とりあえず纏めますと、ペリュトン討伐は一部除いて成功」
「あ、討伐証明部位は角らしい」
「ちゃんと取ってあるよ。薬として有名だからね」
ガライが角の取り忘れの心配をするが、チヤが抜け目無く取ってある事を伝える。
「さっすがぁ」
「ペリュトンの騒ぎに乗じて人攫いをしていた団体を捕まえました。こちらはバジーク様たちにターリックの町まで護送して頂きますわ」
「まあ、ついでだしな。無関係じゃねぇし」
バジークが自身の短い鈍色の髪をガシガシ掻きながら言う。
「そして、人攫いに囚われていた人たちを保護しました。この方たちは、しばらくこの町で面倒を見るという事になっています」
「空き家もありますからな。少しの間であれば問題ないでしょう」
黙って聞いていたステンが、町の代表として答える。
「後で国に事の次第を報告しておく、という事で宜しいかしら?」
蒼髪の令嬢がメガネを正しながら、事の一部始終を報告し終えた。
「そうだな。西の国境沿いからここまで来たんだ。他にも何かあるかもしれないからな」
大きく頷きながら、ガライがキャロラインに依頼する。
「それでは、早急に町長と再び話し合いをしなくては。保護した人たちには手厚い待遇をして、最終的には定住したいと思わせるくらいっ」
立ち上がりながら、キャロラインが力を入れる。
それを見て王宮出身者は「また、始まった」と彼女を冷静に眺めた。不用意に近付くと巻き込まれるからだ。
彼女は政治手腕に長けている。
長けていすぎて、たまにやりすぎる。
「だから、おもてなし致しますわ! 新住人ゲットのために!」
「いや、そこは『拐われた事を忘れるくらいに』とかあるだろうが」
思わずジャガルドがツッコミを入れた。入れずにはいられなかった。
「キャロ、淑女の皮が真っ二つになってるぞー」
ガライも苦笑しながら止めに入る。
一応、お客さんの前だ。
「ご令嬢が一気に、町起こし推進役員に……」
ステイクが呆然としている。
きっとその脳裏には東の国に伝わるという上着を着たキャロラインが、特産のリューシの煮込みを町の訪問客に振る舞っている事だろう。
その何とも言えない視線と目が合ったキャロラインがハッとして、メガネを触る。
「あら、申し訳ありませんでした」
そして冒険者2人に謝辞を口にする。
「ガライ。わたくしは今からまた、町長のところに参りますわ。魔物の脅威が去った事をお伝えしないと、安心出来ないでしょうから」
そう告げると、後ろに侍っていたジャガルドが姿勢を正した。
「だったら、オレが付いていこう。魔物についての詳しい話が出来るはずだ」
「そうだな。ステンは今から町の人に声かけだろうしな」
「はい、そうして頂けると助かります」
ジャガルドの提案に彼らの主は同意し、老兵は頭を下げた。
「その前に、ちゃんと家に顔を出しておいた方がいいぞ」
「うっさいのが来るからね」
レイニオが肩を竦める。
うっさいの=ルミ、である。
「じゃあ、一旦解散!……チヤ、豆乳出して」
「あ、オレもほしい!」
「早速かい。ちょっと待ってな!」
「すんません、バジークまで……」
町の入り口に停められた馬車の前に冒険者2人は立っていて、町の人の見送りを受けていた。
あれから、「泊まってけよ」というガライに、「泊まるのは流石にムリ!」と力一杯否定して、町の空き家に一泊した2人である。お屋敷は落ち着かなかったらしい。
馬車には普通は見られない鉄格子。その上から幌がかけられており、中には本来それを使っていた側の人間が入れられている。
「そしたら、そいつらと報告、頼むな」
「ああ。報告は依頼の内だからな。ちゃんとギルドに言っとくぜ」
「報告するのはボクだろうけど」
ガライが改めて言うと、それぞれが返事する。
「アンタたちには世話になったからね。これを持っていきな」
ガライの後ろにいたチヤが、大きな袋を差し出した。
「食料ですわ。チヤの料理は美味しくてよ」
同じく隣にいたキャロラインが袋の中身を説明する。
「日持ちするものも入れているから、小腹が空いたら食べとくれ」
「もしかして、くま……」
ラジーの手を引いて、その場にいた黒髪の少年がポツリと呟いた。
自分の母親が熊肉の保存にジャーキーや薫製肉を作っていたのを、彼は知ってる。
「連れてこられた人たちは任せておいてくれ。どっちの意味でも」
「しばらく監視も兼ねて、目を離しませんわ。しつこいくらいに」
ガライとキャロラインが言っているのは、鉄格子に入っていたからといって、必ずしも拐われた人というわけではない、むしろ仲間が紛れているかも、というものだ。
これくらいの疑念を持っていないと、貴族なんてやっていられないのである。
「それじゃ、また来るぜ。上腕二頭筋!」
「あんまり来たくないけど」
馭者席に乗ったバジークとステイク。
鈍色の髪の冒険者は大きく手を振ったように見せかけて腕の筋肉を強調し、深緑色の髪の冒険者は肩を竦めながら、馬に合図を送る。
「なんでアイツの操縦、やたら遅いんだろうな?」
しばらく見送っていたジャガルドが、一向に小さくならない車体を見ながら、誰にともなく言った。
「前に聞いたら、『馬って、こえーんだぞ!? そんなのに速く進めなんて出来るかい!』って言ってたな」
それを拾って答えたフロントバイセップスの男。
彼の過去に何かあった模様。
「その内、バジークが手綱をぶん取るさ」
「あ、ぶん取られたみたいですね」
急にスピードを上げた馬車。見ていたビフレットが思わず呟いた。
こうして、『さすらいの大根切り』から端を発した魔物の襲撃と、その裏で動いていた人攫いの事件は一先ずの解決をみた。
ただ、チヤ特性の三つ目熊のジャーキーが別の波乱を呼び込むのは、また別の話である。
今回は有り難う御座いました、ステイク殿。
魔物の群れを事前に知る事が出来て僥倖でござった。
ん?拙者が何をやっていたかでござるか?
拙者は町中で連絡係をしていたでござる。
飛んで来る魔物は阻止のしようが無いですからなぁ。
なんと!若様がペリュトンに乗っていたと!?
そして煽って町に来させたと!?
魔物に言葉、通じたのでござろうか……。
これにはあの方も驚かれるでしょうな。うむうむ。
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