表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前王弟殿下のかれいなる隠遁生活(スローライフ)【本編完結】  作者: 羽生 しゅん
森からの来訪者編:森の跋渉は大腿四頭筋の鍛錬
44/199

思い付いたら即実行!(上下左右の確認をしましょう)

ペリュトン戦続き。


屋敷組は打ち合わせ&準備をしているところだと思われます。つまり、キラキラおじさんの囮が確定した後(笑)


PVが12000、ユニークが3500超えました。

いつも有り難うございます。

ラジーが魔法で記念碑を作ってくれそうです。(ただし、かんたんな言葉で)




 ステンは呆れた顔をして、空を見上げていた。

その視線の先には暴れ狂う1匹のペリュトン。


「無茶するぜ、ガライのやつ」


(ガライの正体を察しているため)魔法を用意したが撃つ訳にはいかず慌てている相棒を尻目に、バジークはそんな老兵に声をかけた。


ちゃっかり襲ってきた魔物を返り討ちにしながら。


その言葉に飛んできた魔物を切り払いつつ、「ふむ」と、もう一度前王弟の方を仰いだ。


「何か考えがありそうですな」


そして、その前王弟の背中から降ろされた子供と槍を手に魔物から子供を守っている男が、地面に埋まっているため翼を持つが飛べないただの鹿のようになっている一群に歩み寄っているのを確認する。


ただ子供に合わせているため、『歩み寄っている』に見えるだけなのだが。

ちなみに、やっている本人(ラジー)はちゃんと走っている。


その位置は先程の竜巻で飛ばされたのか、この場所からあまり離れてはいない。


「大方、拘束魔法のかけ直しでしょうよ。あれから、かなり時間が経っている。破られても可笑しくない」


このメンツの中ではまだ魔法に造詣がある方であるステイクが、上空を諦めてそちらを向いた。


「では、そちらのフォローに回ろう」


そう言った老兵が盾を構え直し、ステイクが同意を示すように前方へ魔法を撃ち出した。その石礫を追い掛けるように、バジークがそちらへと走る。


それを敏感に感じ取ったジャガルドが、手を軽く上げた。そして、空に残っていたペリュトンの翼を水で撃ち抜く。


「任せる」


落下する魔物。それに合わせて大剣が空へと振り上げられる。

「おかわり、頼む!」


「ラジー、アイツらの半分くらい魔法の邪魔をする事は出来るか?」


ルドお兄ちゃんの言葉を聞いて、とっとこ走っていたウサミミフードがピタリと止まって、クルリと振り向いた。そこに飛んでくる風の刃は槍に打ち消される。


「んー?」

しばらく短い腕で腕組みをして考えた後、大きく頷く。


「かべ、作って」


ペリュトンたちを指差して、ラジーはぽつりと呟いた。

その途端、ごごごごごっと鳴動する地面。

それに伴って地面から壁がせり上がってくる。


驚き、藻掻く魔物たち。


その半数をすっぽり覆う高さまで壁が成長したら、今度はレンガをずらして作ったような屋根になり、あっと言う間に天井の穴が塞がれた。


ちなみに壁には何故か絵に書いたような入り口と窓と『きんぐ の おうち』という表札らしきものが刻まれている。


「ど?」

「何でキングの家なんだ……」


上目使いで尋ねられたジャガルドは思わず呻いた。

ヤバい、センスが幼馴染みに似てきている。


「キング、大きい。魔物も、大きい」

「そうだな……」


まあ、目的は達しているので文句は無いが。


さっきの魔法の最中の藻掻きで拘束が弛んだのか、地面を抜け出したらしいペリュトンたちが再び空を舞い始める。彼らもやっぱり空で暴れ回っている1匹には構わないで、こちらを狙っている。


「だいこんのおじちゃん」


何か物言いたげなジャガルドを不思議そうに見た後、ラジーはバジークに声をかけた。


「芝刈り機だぞー、うさ公。で、何だ?」


すぐ傍にいた『大根切り』は子供な為、呼び名をソフトに訂正をしつつ、そちらを向いた。


「上にもやもや、ぶわーって出来る?」

ぶわー、で両手をいっぱい上に広げる子供。

それでも大きさが彼の胸の高さまで来ていない。


「ぶわー、か。出来るぞ!」

「何で、それで、判るんだ!!」


快く頷いた彼に、後ろから相棒のツッコミが入る。

そりゃあ、思考能力が一緒だからだろ、と残りの2人は同時に思った。


「じゃあ、やる」


大人の反応も何のその、ラジーの周りが赤く輝いた。

火の魔力光だ。

どんどん辺りに拡がっていく。


「お、流石! すごい魔法使いだなっ! オレも負けてられん!!」

「ちょっと待って!? その子、2属性使って……」


ぶわり、と熱気が2人を中心に拡がった。


ペリュトンたちの飛ばしてきている風の刃も、この熱気の前では歪み、方向が反れる。ものによっては魔法自体がかき消えていく。


そして、その熱気は、一気に上空へと流れ込んだ。

ペリュトンたちの魔法を消す程の熱量を持った空気が、上空の気流をかき乱す。

普段は魔力の風を纏い安定して飛んでいる魔物たちには、一溜りもなかった。


バタバタと激しく翼を振るい重力に抵抗するが、1匹、また1匹と、ポトリポトリと地面に落ち……降り立つ。そこにジャガルドの水を纏った槍、ステイクの石礫や一風変わった短剣、ステンの剣が襲う。


しかし、彼らもまた牡鹿の頭と脚を持つ魔物。

飛べなくなろうとも、角を突き出し、突進し、脚で蹴りつけ、貪欲に人間を狙ってきた。


どうしても、影が欲しいのだと、そう言わんばかりに。


そんな人間と魔物の衝突の最中、

「ちょっと、そこのけ!!」


頭上から声がした。


空から声を上げるものは、一人しかいない。

慌てて声のかかったステンとステイクが場所を開ける。


ひゅー、ズドン……!


と形容するような凄い音と共に、その場所へ赤銅色の髪の大男と1匹の魔物が落ちてきた。他の宙を舞っていたはずの個体を道連れにして。


「いやぁ、スリルあったわー」

「その感想でいいのか」


穴の穿うがたれた地面を見ながら、ジャガルドが声をかけた。


ラジーとバジークの魔法は、等しくガライの乗ったペリュトンにも襲いかかったのだった。ばたつくペリュトン(のりもの)に思わず急所であるはずの(くび)の根元に拳を入れ気絶させ、己を強化して空から狙って落下してきた、というのが事のあらましである。


「何か、ジャイアントスイングねだってくる子供の気持ちが判ったかも?」

「判らんでいい」

「ぐるぐる、おもしろい」


火の魔法の放出を止めたラジーがガライに近寄りうんうん頷いている。そして、急にその場に座り込む。


「アニキ、つかれた」

心なしか切れたウサミミも元気がなさそうだ。


「そりゃあ、そうだろう」


座り込んだ子供の防御のためにラジーの後ろに立ったステンが、その様子に納得したように言う。


「ただでさえ幼子に魔物退治は重労働。更にこんな魔法を使うとなると、疲れもするわ」


子供どころか孫までいる者の言葉は説得力が違う。


「もうちょっと起きてられるか?」


ガライが抱き上げながら子供に聞いた。

触れた体からは、高くなった体温が伝わってくる。

流石に意識の無い子供を抱えながら、魔物の討伐は厳しい。


「ん。つかれた、だけ」


普通は子供を抱えたまま討伐も出来ないものなのだが、そこは周りの援護にかかっている。


「そうか」


そう言いながらもガライは、突進してきた魔物を避けるついでに蹴りつけている。


「だったら、ちょっと見て欲しいんだけど、あのペリュトン」

「アニキの、のってたコ?」


もう一度地面に下ろした調教師見習いに頼んだのは、魔物の事だった。

肝心の魔物はまだ地面に伸びている。


「うん、そう。アイツだけ『影が無い』みたいなんだ」

「アイツだけ菜食主義って訳じゃねぇだろ」


落ちたペリュトンを相手してきたジャガルドがすかさず言ってくる。

『影が無い』という事は人間を食らっていないという事だ。いかなる理由があったとしても、その事実だけは動かない。


「だから、どう思っているのか判ればいいな、と思って」


「意味ねぇな。魔物は人を害するものだ。善ではありえない」


ガライの考えをバジークは鼻で笑った。それに「判ってる」と返す。


「ちょっと! みんな、喋って無いでペリュトンの相手して、下さいっす!」


少し離れたところから、ステイクが短剣を振るいながら苦言を呈する。微妙な敬語が混じっているのは目をつぶってほしい。


確かに、今もあちらこちらでペリュトンが角を振り立てつつ魔力を掻き集めつつ、人間たちを狙っている。


「そうだな。ラジーはアイツ見張っててくれ。今動いている奴らだけでも黙らせる」

「ん」


そう言いつつ地面にあった拳ほどの石を拾う。そして投擲フォームに入る。


「土の魔法っぽいものっ!」

投げた。


魔法じゃねぇー、と似たような魔法を使うステイクは声を出さず突っ込んだ。


強化マシマシの投球、ではなく投石は、石の軌跡が見えないまま、どすっと音を立てて1匹の胴に沈む。

同時に彼は動き出した。


「お前は無茶するな」


走り出すガライに待ったをかけるジャガルドだが、赤いのは止まる気配がない。


アイツ、さっき左肩ぶつけたの忘れてんじゃねぇだろうな。と頭を(よぎ)る。


そして、そんな考えを振り払う。

前王弟にそんなミスは許されなかったのだから。


「足技だけで頑張ってみるー」


魔物に突撃する前に聞こえた声。と同時に魔物に突き刺さるフライング・ドロップキック。からの縦回転の上空蹴り。そして間合いを取っての回転蹴り。


「よく動けるなぁ」


再び石礫を撃ちながら、ステイクが呆れたようにその様子にコメントした。

もう投石の事は忘れる事にする。


その間も視界内の男の動きは途切れない。


「若い証拠ですな。ここは任せて行って下され」


ステンが少し羨ましそうに言い、後半は『鉄砲水』に。それを受けてジャガルドはひらりと手を振って、幼馴染みの方へと走っていった。


なお、バジークは早々に会話を打ち切り、魔物の群れに突っ込んで行っている。

ステイクの相棒はどこまでも脳筋なのであった。


「まあ、やる事は一緒さ」


魔法の余韻で()()()()()温度が上がっている空気に顔を歪ませ、キツネ目の男はその特殊な形の短剣を構え直した。



このペリュトンが、もしかして……とか、「ガーっとしてバーってなる」は判りみ深いとか思った方は、ブックマークや評価、いいね!をポチッとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ