ウサギが来たりてシカも来る
な、何とか間に合った……?
話し合いの続きです。
結構真面目に話し合っています。
沢山の方に読んで頂いて、有り難う御座います!
2022年10月8日
ペリュトンの外見がちょっと間違っていたので修正しました。
「ペリュトンとは、これまた厄介な」
ガライが唸りながら、言葉を溢した。それにキャロラインは首を傾げる。
「その魔物は何なのですか? 何が厄介なのですか?」
横で聞いていたチヤが絶句しているのと比べる限り、どうやらキャロラインはその魔物の事を知らないようだ。
その様子に幼馴染みは『厄介』の内容を口にする。
「姿形はさっきバジークが言った通りの姿をしている。牡鹿の頭と脚を持ち、鳥の胴体と羽が生えているんだ。だから地上は走れるし空も飛べる。そして奴らの習性として、群れて、人を積極的に襲う」
それにバジークが続く。
「姿を確認した途端、襲ってくると思ってもらったらいい。それが今回は十数頭、だ」
「結構な大所帯だな。それだけで数の暴力だ。そんな一団が移動してくるって、小さな村なら一溜りもないぞ」
「そういう被害も出てる。発覚してないだけで。今回、いくら飛べるからって移動しすぎだっつーの」
バジークのいう事も、もっともだ。
大体ライズ王国の領土の下半分を斜めに横切って、ここまで来ている。
キャロラインは事態を悟ったのか、難しい顔だ。
「そんな魔物がここまで来る可能性があるのですね……。町長には私から話を上げておきましょう」
「頼むな、キャロ。町の人にも注意してもらわないと」
「それには及ばないみたいだぞ、ガライ」
そう言いながら食堂に入って来たのは、見回りに行っていたジャガルドだった。その後ろからウサミミフードもチラチラ見えている。
「町でも姿が確認されている。噂程度だがな」
どうやら町でビフレットに会って、状況を聞いたらしい。ついでにレスさん家に行っていたラジーを回収してきたのだろう。
そのラジーがトテトテとガライに寄ってきて、うんしょ、とばかりに膝に上る。前にいるおっかない顔のおじさんは気にしない。
「あのね、見たことない、魔物いるから、森、いっちゃダメ、なの」
一生懸命、お兄さんお姉さんから聞いた話を上を向きながら伝えるウサミミフードに、目の前の『さすらいの大根切り』は戦いた。
「ガライ! まさか、子持ちだったのか!?」
その言葉に首を傾げる対面の3人。息がピッタリである。
「俺のどこが子持ちに見えるんだ?」
自然にラジーが膝に座って、自分もお腹の前に手を回しておいて何を言う。
誤解を生みそうなそれを見て溜め息をつくチヤ。
「その子はあたしの子さ。懐いているけどね」
「まさか年上にょ……」
「あたしは旦那一筋だよ! バカな事言いなよ!」
そして、ラジーに「話の邪魔になるから、こっちにおいで」と言うと、ウサミミフードはまたガライの膝の上からストンと落ちるように下りて、義兄にくっつきに行った。
そして、その後ろから顔を出しながら、話を追加する。
「とんできて、畑におりて、森にいった、んだって」
「オレも概ねそんな話を聞いた」
ガライの斜め後ろに付いたジャガルドが同意する。
「早朝、畑で収穫していた奴が見かけたらしいんだが、西の方から飛んできて遠めの畑に降りたって話だ。それから森に入るまで動かずにいたから、そいつは無事だったみたいだが」
「羽が生えた4足歩行の魔物だった、と言っておりました。見慣れない魔物という事でしたので、皆には森に近付かないように言っております」
ジャガルドの後ろから入ってきたステンが、ジャガルドの話を引き継ぐ。
「ステン、すまないな。来てもらって。それに、その対応は的確だ。ペリュトンの群れらしいぞ」
その名前に老兵は顔をしかめた。
「よりによってペリュトンとは! こんな町では戦力を集めるのにも一苦労なのに」
群れで襲ってくるのを知っている彼は、軍に出動要請するか冒険者ギルドに依頼するしかないと判っている。しかし、それだと時間がかかりすぎる。
「そいつらは王都の南西から飛んできたらしくてな、ここにいる『さすらいの大根切り』がそれを追っかけてきたんだと」
「誰が『大根切り』だ!『芝刈り機』って言ってんだろうが!!」
「まだそんな事言ってんのかよ……」
バジークの訂正に、前から彼の反応を知っているジャガルドが呆れたように呟いた。
「その行動の半分はギルドからの依頼らしいから、ギルドも把握はしていると思う」
ガライはバジークの反応を無視してステンに続きを言った。
その言葉にジャガルドは半眼で鈍色の髪の男を見る。
「コイツが途中報告を忘れていなきゃな」
「そんなもんは相棒任せだ」
「……ま、アイツなら忘れず報告してんだろ」
自分を納得させるようにジャガルドは言うしかなかった。
「って事で、今はこっちの対策だよな」
ギルドの反応が芳しくないのは、この町にいる以上(距離的に)仕方がない事なので、出来る事を考え始めるガライ。
そしてバジークに聞く。
「いけると思う?」
ここにいるのは偶然にも自称執事(戦力外)を除いた、この町の戦力になりそうな者たちである。
「『鉄砲水』以外にもアイツらを叩き落とせるなら、あるいは」
ぐるりと回りを見渡した『大根切り』はそう断じた。
「オレも『鉄砲水』じゃねぇ」
ジャガルドは呼び名に不服そうだが。
「わたくしは無理ですわよ」
「それは判ってる」
キャロラインの苦笑しながらの辞退に、ガライは素直に頷く。
風魔法が使えるとはいえ、彼女の魔法は戦いに向いていない。
残るは義兄弟だが。
「僕は残った方がよさそう。ラジーを連れて行ったら?」
黙っていたレイニオが意見を出す。
それに慌てるチヤと義兄の顔を見るラジー。
「なんて事言うんだい!?ラジーに危ない事をさせるなんて!」
勿論、母親として子供を危険な場所に行かせたくない。チヤの言う事が正論である。それでもレイニオは続ける。
「僕が行ってもいいけど、すぐに動ける奴が残った方がいいと思うんだよね。どうやら、そっちの相棒さんと役割がカブッていそうだし」
今いないバジークの相棒は、確かに斥候とか裏方のイメージだ。というか、そのイメージしかない。
概ねここにいる男のせいだ。
そしてツッコミ役という意味では無い、はず。
「確かに、こちらに魔物が来ないとは言いきれませんわね……」
キャロラインも複雑な顔をして頷く。
レイニオの言う事は一理ある。だけどそれは、幼児に危険な場所に行かせる事になるからだ。
「ラジー、いくよ?」
その時、当の本人がポツリと言った。
「この子もなんて事言うんだい。危ないんだよ!」
案の定、母親が止めに入る。
しかしウサミミフードは横に揺れた。
「おかあさん。ラジーもね、おとうさんみたいに、戦える」
その言葉にチヤは息を飲んだ。
確か、彼女の夫でありラジーの父親は、マルゴール一族の中でも優秀な狩人だったと聞いている。狩人は一族の護りでもあったのだろう。
それを幼子が口にした。母親に何が言えるというのだろう。
「チヤ、ごめん」
ガライが頭を下げた。
「ラジーにこんな事を言わせてしまった」
ラジーが母親と前王弟を交互に見る。その頭を義兄は何も言わず撫でた。
「大人だけで対処すべきだ、本当は」
「……戦場に絶対なんて無いんだよ」
何とか絞り出した言葉は、万感の思いが秘められていた。
「……うん、判ってる」
ガライの金色の目をじっと見つめ、やがて息を吐き出した。
「こういう時、この子ほど力が無いのがホント、腹立つよ。
……ラジー、ガライから離れない、危ない事しないって約束出来るなら、好きにしな」
魔法が使えないガライにいう事ではないだろうが、やはり悔しい思いをする。
チヤはやるせなくなったのか、カートを押して食堂を出ていった。
ところで、魔物退治自体が『危ない事』に入るはずなのだが、それでいいのだろうか。
「ラジー」
それを見送ったバジークが「アレの日か?」とデリカシーのない事を言っている横で、ガライはラジーの傍まで歩いていき、目線を合わせた。
「魔物が沢山いるんだぞ。ルミと森に入った時より大変なんだぞ。それでも来るのか?」
「おかあさん、おこった?」
ラジーは食堂の入り口を気にしつつ、フードをぎゅっと握り締めた。
「あれは困っているんだと思うよ。魔物は危ないけど、お義母さんには代われないから」
ラジーの前にいたレイニオが、同じように入り口を見ながら言う。
「ん。だいじょおぶ。行く」
そう言ってウサミミフードはガライにしがみついた。
「そのちっこいのが行くのか? 魔物に丸飲みにされちまうかもなぁ」
バジークが茶化すように声をかける。彼なりのジョークだ。
「そうなったら俺がチヤに料理されちゃうかも」
「アニキ、くっつく。あんぜん」
勝手に2人に増えた護衛対象の言葉に、ジャガルドはこれからの事を思い頭痛を覚えた。
絶対に大変だ。
思わず手をやる幼馴染みに、キャロラインが激励の意味で肩を叩いていたのは、呆れた顔をしている黒髪の少年しか見ていなかった。
つまり、森に行くメンバーは、ガライ、ジャガルド、ラジー、ステン、バジーク+相棒となります。
ステン、戦えるのかな……。
誰とは言わないけど子供だなーとか、チヤってお母さんだなぁ、と思った方は、ブックマークや評価、いいね!をポチッとお願いします。




