腰に手を当て、斜め45度で飲む
前半は筋肉、後半は真面目な話です。
PV8000、ユニーク2400超えました。有難うございます!
ビフレットがキラキラスマイルで野菜をお裾分けしてくれそうです。
屋敷に入ったバジークが玄関ホールを一目見て、「貴族様でも出てくるのか!?」と知らないとはいえ隣に貴族の元締めがいるにも関わらず宣ったため、気を使わせないように話し合いは応接室ではなく食堂を使う事にした。
気を使うような人種でも無さそうではあるが、そこは礼儀として。
仲間以外の人が使うから一言あった方がいいだろう、とガライはレイニオに案内を任せ、先に厨房にいるチヤに声をかけに行った。
厨房に顔を出した時、彼女はお茶を飲んで休憩していたところで、彼の話を聞くと訳知り顔で頷く。
「成長促進の魔法の成果を持ってきた時に、ビフレットから聞いているよ」
そう言って給仕用ワゴンへ顎をしゃくった。
その上にはビッチャーとコップ、ティーセット、そして焼き菓子。
すぐに出せるようにしてあるという事が見て取れた。
流石、自称執事と元食堂のおかあさん。
そのまま、ガライが隣の食堂に移動すると、湖を臨む窓から外を見ている鈍色の髪の男と、それを見張るように少し離れて様子を窺っていた黒髪の少年が、同時にこちらを向いた。
「待たせたな。座ってくれ」
そう声をかけると、バジークはすぐ側の椅子に座った。
景色がよく見えるように、倉庫から引っ張り出したテーブルと椅子を長机とは別に置いていたのだ。
ガライは相手の対面に座り、顔を上げる。
「それで、追っている魔物って……」
そこにワゴンを押したチヤとキャロラインが入ってきた。
「失礼しますわ」
そう言いつつガライの隣に座った令嬢を見て、『さすらいの大根切り』は思わず立ち上がった。
「ガライ!な、何なんだ、その女は!? オレというものがありながらっ。
しかも明らかに貴族じゃねぇか。貴族にしか見えねぇよ。何なんだよ一体!!」
それに「あー」という顔をしたガライと「なるほど、そういう人か」と何やら納得するキャロライン。
「誤解を生むような言い方するなよ。別にお前とは顔見知りの筋肉だろ」
筋肉に顔はない。
チヤはビッチャーの中のものをコップに入れながら思った。顔の筋肉はあるだろうが。
「それにキャロとは幼馴染み!」
「まあ、貴族ではありますが」
ガライのツッコミとキャロラインの冷静な追加に今度は固まった。
その隙にチヤが中身の入ったコップをサッとテーブルに置く。
「初めまして、冒険者様。わたくしはキャロライン。先程言いました通り、ただのガライの幼馴染みですわ」
「『ただの』って付けるところが恐ろしいな」
「事実でしょう。付けておいて得はあっても損はないのですから」
お互いニヤリと悪い顔で言い合うのを見て、バジークはノロノロと腰を再び椅子に下ろした。
「ほれ、呆けてないで、お飲みよ。今日作りたての豆乳だよ」
幼馴染み2人による自己紹介が終わった、と判断したのか、チヤがコップの中身を勧める。
中には白濁した液体。
タンパク質豊富なソイソイビーンズから作られた筋肉を育てる飲み物。
……チヤもビフレットから話を聞いて、実際対面してみて、最終的にビフレット同様ガライと同類だと断定したらしい。
そうでなければ、キャロラインの前に置かれたように紅茶が置かれたはずだ。
その飲み物チョイスが話し合いに適しているか、と言われれば首を捻らずを得ないが。
一旦落ち着くために、勧められた飲み物を飲む一同。
少し冷やされた豆乳が身体の中に拡がる……!
「おぉ、濃厚」
「こ、これは!」
ムキムキ2人が反応する。
「ソイソイビーンズを絞った豆乳さ。絞りカスで作った焼き菓子もあるよ」
そう言って彼女はお皿いっぱいの焼き菓子をテーブルの真ん中に置いた。焼きたての甘い匂いが鼻腔を擽る。
「体に染み渡るようだ……!」
「筋肉作りにいいんだぞ。運動した後とかだとより効果的だ」
そんな会話をする男2人を傍目にキャロラインはお茶をもう1口飲む。何だか付いていけない。
確かに豆乳はおいしい。
だけど、そこから筋肉に話を繋げるのは如何なものか。美容にもいいはずなのだが。
カップで口元を隠しているキャロラインを見て、チヤが溜め息と共に2人を諌める。
「アンタたち、誉めてくれるのは嬉しいけどね、話し合いはどうなったのさ?」
その言葉にハッとするマッチョメンズ。
「そうだった。有難う、チヤ」
照れた笑いを浮かべたガライがコップを机に置く。そしてキャロラインに視線を向ける。
「キャロ、こっちはバジーク。魔物討伐を主にしている冒険者だ」
「バジークだ。すまんが、普通にさせてもらうぞ」
鈍色の髪の冒険者は名乗ると同時にそう断りを入れた。
貴族相手と判ってはいるが、へりくだった態度が出来ない、とは言わないが苦手なのだろう。
キャロラインもガライの幼馴染みとして頷く。
どうせガライも名前くらいしか名乗っていないだろうから、貴族というよりはそういう態度の方がいいだろう、と。
「さっきガライが言ったように、オレは討伐を得意としている。
今回、ライズ南西側国境付近で討伐依頼が出た。人里近くに魔物が出て、住人を拐っていった、そういう内容だ」
ライズ王国西側は比較的豊かな土地が多い。
街道が隣国まで伸び貿易が盛んだが、工業や芸術の分野でも有名である。住んでいる人数もこの辺りとは比べ物にならない。
そんな依頼が出るくらいなのだから、被害者は複数人に上るのだろう。
「オレたちは最初、その町で情報を集め、連れ拐われたという方向にある山に行ったんだが」
そこまで言って、ちらりとキャロラインを伺う。そして少し考えた後にその見たものを口にする。
「奴らが食ったであろう食べ滓だけだった。
それから数日後、その場所から南下した森で同じような跡が見つかった。
その次は池の畔。
また山。
時を追う毎に、そういうのが南に向かっているのが判ってきた。
そして移動速度から、奴らは『飛ぶ事が出来て、群れで移動している』とオレたちは判断した。
だから進路と思わしきものを予測して、先回りをしたら、ここに辿り着いたって訳だ」
その経緯に被害が拡大中である事を知る。
まだ王都にいた頃からの出来事だろう。バジークがライズ南西からここまで移動してきている程には時間が経過しているのが、その証拠だ。
「この辺りは、まだそんな話は出ていませんね」
話を聞き終えたキャロラインが、各報告を思い出しながら言った。
それを聞きながらガライが顎に手を当てる。
「キャロ、もしかしてさ」
そして考えながらも口にする。
「プテラスバードが来たのって、住処を逐われたって考えられないかな?」
「あの鳥は比較的高い山に棲むらしいですわね。その棲息域に魔物が群れで入って来たとしたら、確かに獲物は横取りされないとしても、逃げ出されて狩りが出来ず、他に移動する可能性はあります」
ガライの言葉にキャロラインは調べた巨鳥の生態を思い浮かべた。
またあのイベントが出来ないかという打算があったようだ。それについては期待出来そうになかったのだが、情報は今この時、役に立っている。
そんなはずじゃなかった事実に、彼女は柳眉をしかめる。
「ちょっと待て、プテラスバードが出たのか!?」
「美味しかったぞ?」
不幸せの青い鳥が出たという情報を知ったバジークの驚愕の声に、ガライは普通に答えた。
彼の驚愕には2種類の意味が含まれている。討伐は勿論だが、こんな所にまで飛んできたのかという事実に、だ。
そして思う。食ったのか、と。
食堂に残っていた義理の親子は冒険者の顔を見て、そりゃそんな反応するよね、と同じ動作でウンウン頷いている。
「町総出で立食パーティーをしましたわ。まあ、それは置いておいて」
令嬢が脱線しそうな話を戻す。
「それだけの情報を持っているのだから、魔物の種類もある程度判明しているのでしょう? 教えて頂けないかしら?」
夕焼け色の目を相手に向ける。
「まだはっきり姿を見た訳じゃない」
「それでもいいから」
ガライも促す。その金色の目を見て、そしてもう一度夕焼け色の目を見て、目を閉じて溜め息を付く。
これが当たっていた場合、酷く厄介な案件なのだから。
「……翼を持ち、牡鹿の姿を取り、群れをなし、人を襲う。オレたちはペリュトンじゃないかと予想している」
チヤ、レイニオ親子はまだ食堂にいます。黙って話を聞いているので、存在感がない……。
豆乳、おいしいよね!とか、彼ら、真面目な話も出来るんだな、とか思った方は、ブックマークや評価、いいね!をポチッとお願いします。




