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LEGEND SPIRIT 〜後に伝説と呼ばれる者たち〜  作者: ゆに


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46話 実践!

あの男と出会ってから、俊音の日常は変わった。


 学校が終われば友達と遊ぶのではなく、人助けをする。


 転んで泣いている子がいれば声をかける。


 荷物を運べず困っている人がいれば手伝う。


 迷子がいれば一緒に親を探した。


 男に言われた言葉を、俊音はずっと守り続けていた。


 そして――。


「そろそろ……。」


 人気のない空き地。


 俊音は一本の木の枝を手に取った。


「俺も鍛えないとな……。」


 枝を剣に見立てる。


 そして走り出した。


 風を切るような速度。


 そのまま枝を振るう。


 ブンッ!


 ブンッ!


 ブンッ!


 何度も、何度も。


「んー……。」


 俊音は首を傾げる。


「あの人とは全然違うな……。」


 男の剣は無駄がなかった。


 だが俊音の剣は違う。


 走る勢いを乗せた鋭い一閃。


「でも……。」


 再び走り出す。


 そして勢いよく枝を振った。


「これはこれでやりやすい……かも!」


 本人も気づいていなかった。


 その剣が、後に彼だけの戦い方になることを。


     ◇


 少し離れた場所。


 一人の男がその様子を眺めていた。


「速橋俊音か。」


 静かに呟く。


「名前は耳に入った。」


 俊音の動きを目で追う。


「足が速いとは聞いていたが……あそこまでとは。」


 男の口元が緩んだ。


「こいつも同類か。」


 どこか楽しそうに。


「面白くなってきた。」


     ◇


 それからも俊音は鍛錬を続けた。


 毎日。


 何百回も素振りを繰り返した。


 そんなある日のことだった。


「た、助けて……!」


 どこからか子供の泣き声が聞こえた。


「!?」


 俊音は反射的に顔を上げる。


 声の方向へ駆け出した。


 そこには数人の少年たちがいた。


「おいお前!」


「弱虫でキモいんだよ!」


「消えろよ。目障りなんだよ!」


 囲まれている少年は震えていた。


「なんでそんなに……いじめるんですか!」


「うるせぇ!」


 一人が拳を振り上げる。


「殺すぞ!」


 その瞬間だった。


 ビシッ!


「いてぇっ!」


 木の枝が少年の頭を叩いた。


「誰だ!」


 振り返った先には俊音。


 枝を肩に担いで立っていた。


「流石に木の枝じゃ厳しいか……。」


 そう呟いた時だった。


 カラン――。


 何かが空から落ちてくる。


 俊音の目の前に突き刺さった。


「え?」


 それは真剣だった。


「誰が……?」


 周囲を見渡しても誰もいない。


 俊音は恐る恐る柄を握った。


 そして持ち上げる。


「か、か、か、かっこいいっ!!」


 目を輝かせる。


 完全に興奮していた。


「うおぉ……! 本物だ!」


「何ふざけてんだガキ!」


 敵が怒鳴る。


「舐めた態度取るな! ぶっ飛ばすぞ!」


 俊音はニヤリと笑った。


「やれるもんならやってみろよ。」


 剣を構える。


「俺の特訓の成果、試してみようかな。」


「調子に乗るなぁ!」


 敵が飛び出した。


 だが――。


 次の瞬間。


 俊音の姿が消えた。


「なっ――」


 敵が驚くより早く。


 一閃。


 勝負は決まっていた。


「これが……。」


 俊音は目を見開く。


「戦うってことか……!」


 胸が高鳴る。


 体が軽い。


 今まで感じたことのない感覚だった。


 思わず笑みがこぼれる。


「すっげぇ面白ぇ!」


 そこから先は一方的だった。


 俊音は走る。


 斬る。


 走る。


 斬る。


 敵たちは反応すらできない。


 気づけば全員が地面に倒れていた。


「え?」


 俊音は辺りを見回した。


「終わった……。」


 ぽかんとする。


「俺の初めての戦闘がこんなもんでいいのか?」


 そして笑った。


 助けられた少年が駆け寄ってくる。


「す、すごいね君!」


「え? ありがと。」


「僕をいじめから助けてくれて……ありがとう!」


 俊音は照れくさそうに頭を掻いた。


「礼なんかいらないぜ。」


 そう言って笑う。


 その姿を遠くから見つめる者がいた。


「とんでもない逸材だ。」


 静かな声。


「初めて握った真剣で、あの速度。」


 目を細める。


「まさかここまで化けるとはな……。」


     ◇


 数日後。


 学校。


「テスト返すぞー。」


 教師の声が響く。


 答案用紙が配られていく。


 俊音は自分の点数を見た。


「あー。」


 頭を掻く。


「十二点か。」


 隣の生徒が吹き出した。


「おっ! 今度は〇点じゃねぇんだな!」


「馬鹿も馬鹿なりに成長するじゃん!」


「うるせぇな。」


 俊音は適当に聞き流した。


 点数よりも、放課後の方が大事だった。


     ◇


 帰り道。


「勉強しなきゃなんだけどなー。」


 俊音は空を見上げる。


「めんどいんだよなぁ……。」


 その時だった。


「君が速橋俊音くんだね。」


 後ろから声が聞こえた。


 振り返る。


 そこには同年代くらいの少年が立っていた。


「え?」


 俊音は首を傾げる。


「そうだけど。」


 少年は落ち着いた表情で名乗った。


「俺は宮地悠尋。」


 俊音を真っ直ぐ見つめる。


「君の噂は聞いている。」


 そして続けた。


「俺と共に――」


「失礼だな。」


 俊音が遮った。


「頭悪くて悪いかよ。」


「……え?」


 悠尋が固まる。


 俊音は勝手に勘違いしていた。


「噂って絶対テストの話だろ!」


「違――」


「じゃあな!」


 俊音は全力で走り出した。


 一瞬で遠ざかる。


「あっ。」


 悠尋は思わず手を伸ばしたが、もう遅い。


 風だけが残る。


「ありゃま。」


 悠尋は苦笑した。


 本当は別の話をするつもりだったのだ。


「国を倒すためのチームに勧誘したかったんだけどな。」


 そう呟きながら、俊音が消えた方向を見つめる。


 だがその表情はどこか楽しそうだった。


「まあいいか。」


 きっとまた会う。


 そんな予感がしていた。

次回 『俺は光だ!』

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