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LEGEND SPIRIT 〜後に伝説と呼ばれる者たち〜  作者: ゆに


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44話 同い年なんだから

ぐぅぅぅ――。


 静かな通路に、間の抜けた音が響いた。


「あ……。」


 圭は恥ずかしそうにお腹を押さえる。


 日菜乃は思わず吹き出した。


「ご飯食べに行きましょう。」


「え、でも……。」


「いいの。私もお腹空いたから。」


 そう言って笑う。


「日菜乃さん……。」


「それで?何食べる?」


「え、えっと……。」


 圭は困ったように視線を泳がせた。


「舌の肥えてるあんたには分からないか。」


「ご、ごめん……。」


「なんで謝るの。」


 日菜乃はくすりと笑った。


 その笑顔に圭は少しだけ肩の力を抜く。


「私が案内するからついてきてよ。」


 そう言うと、日菜乃は圭の袖を軽く引っ張った。


「あっ……。」


 圭は目を丸くする。


 だが次の瞬間には、幸せそうな笑みを浮かべていた。


「幸せだ……。」


「大げさ。」


 日菜乃は呆れながらも笑う。


 そのまま二人は並んで歩き出した。


 少し後ろを歩く弘明は、その背中を見つめる。


「先の未来、どうなるのかは俺には分からんが。」


 二人の楽しそうな横顔が目に映る。


「ま、考えすぎか。」


 弘明は肩をすくめた。


「尻の青いお子ちゃまにはまだ早いよ。」


 そう言いながらも、その表情はどこか優しかった。


     ◇


 三人がやって来たのは、ショッピングセンター内の海鮮料理店だった。


 店内に入った瞬間、弘明が辺りを見回す。


「な、なんか本格的……。」


「確かに。」


 日菜乃も少し驚いた顔をする。


「明らかに高級そうな感じ。」


「そうですか?」


 圭は首を傾げた。


「あんたには分からないでしょうね。」


 日菜乃が苦笑する。


「普段からいいもの食べてるあんたにはね。」


「でもでも!」


 圭は嬉しそうに笑った。


「みんなで食べるから、美味しいんだよ!」


 一瞬、日菜乃は言葉を失った。


 そして隣にいる弘明を見る。


 弘明もどこか照れくさそうだった。


「確かにそうね。」


 日菜乃は小さく微笑んだ。


「うん……。」


 圭も満足そうに頷く。


「はいメニュー。」


 弘明が大量のメニュー表を広げた。


「何にする?」


「んーそうだなあ。」


 日菜乃は真剣な顔でページをめくっていく。


 数分後。


「私はこれにするよ。イクラとサーモン丼。」


「僕もイクラとサーモン丼にします!」


「あ、真似したね?」


「したよ!」


 圭は堂々と言った。


 日菜乃は思わず笑う。


「ま、明らかに美味しそうだもんね。」


「じゃあ俺は三種盛り海鮮丼。」


 注文を終え、三人は料理を待つことになった。


 しばらくして。


「ねえ日菜乃さん。」


「ん?」


「今日はありがとね。」


 圭が少し照れながら言う。


「お兄ちゃんにも言ってよ。」


「ありがとうございます。お兄さん!」


「おう。」


 弘明は短く返事をした。


 そして一瞬、静かな時間が流れる。


 そんな空気を破ったのは日菜乃だった。


「ま、楽しかったしいいんじゃない?」


 そう言ってチラリと圭の方を見る。


「また遊びに行こうよ。圭。」


 その言葉を聞いた瞬間。


 圭は完全に固まった。


 まるで時間が止まったかのように。


「……。」


「圭?」


「……。」


 数秒後。


 ゆっくりと正気に戻ってきた圭の目が、みるみる輝き始める。


「い、行きたい!」


 声まで弾んでいた。


「まあいいわよ。」


「嬉しいなぁ……!」


 圭は顔いっぱいに笑顔を広げる。


「日菜乃さんとまた出かけられる……!」


 その純粋な喜びように、日菜乃も思わず笑ってしまった。


「さん付けしなくていいよ。」


「え?」


「日菜乃でいい。同い年なんだから。」


「そっか……。」


 圭は少しだけ考えたあと、嬉しそうに顔を上げた。


「日菜乃!」


「んー?」


 日菜乃が自然に返事をする。


 次の瞬間。


 圭は満面の笑みで言った。


「だいすき!」


「え。」


 日菜乃の思考が止まる。


 顔が一気に熱くなった。


「おいこら!」


 弘明が勢いよく立ち上がる。


「何また勝手に告白してんだよ!」


「えー!」


 圭は不満そうに声を上げる。


「いいじゃないですか! 仲も深まったんですし!」


「よくねえよ!」


「なんでですか!」


「お前だいたいな――!」


 二人はいつものように言い合いを始める。


 店内の一角が急に騒がしくなった。


 その横で――。


「もう……ばか。」


 日菜乃は小さく呟いた。


 熱くなった頬を隠すように顔を背ける。


「やっぱり……慣れないな。」


 そう言いながらも、その口元には自然と笑みが浮かんでいた。


 圭の真っ直ぐな言葉。


 弘明の過保護な反応。


 賑やかで騒がしい時間。


 少し前まで想像もしなかった光景だった。


 日菜乃は二人に気づかれないように、小さく微笑む。


 そして心の中で思った。


 ――またこうして、みんなで出かけるのも悪くないかもしれない。


 その頃、圭と弘明の言い争いはまだ終わる気配がなかった。

「俺が剣を振り始めた理由は、死ぬ理由を簡単に導き出せたから。それと…。」


次回 

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