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LEGEND SPIRIT 〜後に伝説と呼ばれる者たち〜  作者: ゆに


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43話 僕も一緒に連れてって

六人が暮らす家のリビング。


 圭はどこか落ち着かない様子で、弘明の前に座っていた。


「日菜乃さんを明日遊びに誘いたいんですけど……」


 意を決して口にした言葉に、弘明は即答した。


「ダメだ。」


「なんでですか!」


 圭が身を乗り出す。


「なんでってそりゃあな……」


 弘明は腕を組み、難しい顔で考え込んだ。


 その様子を見ていた空介が苦笑する。


「ほらほら弘明。せっかく圭くん来てくれたんだから優しくね。」


「分かってるよ空介。」


 そう返してから、弘明は圭へ視線を向けた。


「で?」


「遊びに誘いたいんですけど、最近鍵がかかってて家の中に入れないんですよ……。」


「チャイムを鳴らせ!」


 弘明の鋭いツッコミが飛んだ。


 圭は目をぱちくりさせる。


 弘明は額を押さえた。


「俺らの周りには不法侵入者多すぎだろ……。前回にもいたぞ、三人。」


「お兄さん、協力してくれますか……?」


 圭が期待に満ちた目で見つめてくる。


「まぶしっ!」


 弘明は思わず目を擦った。


「いいか圭。女の子が一人でいるところに勝手に入るな。普通に捕まるぞ。」


「そうですね。」


「軽っ!」


 あまりにも素直な返事に弘明は驚いた。


 圭は首を傾げる。


「そんなに渋って……明日は何か予定が入ってるんですか?」


「そりゃそうだ。」


 弘明はため息をついた。


「明日は……あ。」


 弘明は口を滑らせた。


 圭の目がキラキラと輝く。


「明日は……なんですか!?」


 期待に満ちた視線を受けながら、弘明は小さな声で答えた。


「買い物に行くんだよ……。」


「行きましょう!」


「だから言いたくなかったんだよ!」


 リビングに弘明の悲鳴が響いた。


     ◇


 その夜。


 弘明は実家へ戻り、今日の出来事を妹の日菜乃へ話していた。


「えーー! あいつ来るの!?」


 日菜乃は露骨に嫌そうな顔をした。


「ごめん日菜乃……。思わず口が滑ってしまって……。」


 弘明は両手を合わせる。


 日菜乃は大きくため息をついた。


「あーあ。せっかくゆっくり買い物できる休日だったのに。」


「好きなの一つ買ってあげるから!」


「もぉ……仕方ないなぁ。」


「ありがとう!」


 弘明は心の底から安堵した。


     ◇


 翌日。


 三人はショッピングセンターへやって来ていた。


 巨大な建物を見上げ、圭は感心したように呟く。


「へぇ……意外と大きい建物ですね……。」


「来たの初めて?」


「はい。普段このようなところは来ないので。」


「なんか身分の違いを感じる……。」


 弘明が遠い目をする。


 その時、先を歩いていた日菜乃が振り返った。


「ほら、おしゃべりばっかしてないで、早く行くよ。」


 そう言って手招きする。


 二人も慌てて後を追った。


「ねえ、お兄さん。」


「んー?」


 歩きながら圭が声をかける。


「どうしたら、日菜乃さんを落とせると思いますか?」


「知らないよ俺には。」


 弘明は肩をすくめた。


「ただ俺は――」


 その時だった。


「早く行くよ! お兄ちゃん!」


 日菜乃が満面の笑みで大きく手を振る。


 その笑顔を見て、弘明はふっと表情を和らげた。


「あの笑顔を守りたいのさ。」


 圭もその笑顔を見つめる。


「同感です。僕もあの笑顔を見て、好きになったんですから。」


 少しだけ真面目な空気が流れる。


 そして三人はショッピングセンターの中へ入っていった。


     ◇


「それで、今日は何を買いに来たんだ?」


「洋服が欲しくてね。」


「好きなの買ってやるぞ。」


「ありがと。」


 楽しそうに会話する兄妹。


 その様子を見ながら、圭は小さく呟いた。


「いいなぁ……。」


 どこか羨ましそうな声だった。


 その後、三人は服屋を何軒も回った。


 日菜乃は試着室と売り場を何度も往復し、そのたびに新しい服を見せてくる。


 数時間後――。


「うぅぅ……結構いい服あったのに……。」


 名残惜しそうに日菜乃が肩を落とす。


「試着しまくってたね。」


 弘明が苦笑する。


「そりゃそうだよ!可愛い服多すぎるよ!」


 日菜乃が力強く言う。


「本当だよ!可愛いよ!」


 圭が勢いよく同意した。


 しかし、その鼻からは赤いものが垂れていた。


 弘明はじっと圭を見る。


「お前、興奮してたな?」


「してないれす!」


「ろれつ回ってないぞ。」


「しへない!」


「絶対してた!」


 必死に否定する圭。


 そんな二人を見て、日菜乃は吹き出した。


「あははは!」


 楽しそうな笑い声がショッピングセンターの通路に響く。


 その笑顔を見て、弘明と圭は顔を見合わせた。


 ――やっぱり、この笑顔には敵わない。


 二人は同時にそう思いながら、日菜乃の後を追いかけるのだった。

次回 同い年なんだから

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