表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LEGEND SPIRIT 〜後に伝説と呼ばれる者たち〜  作者: ゆに


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/54

39話 茨の道を進む者(古友恋心編)

 琉妃は仲間の元へ駆けつけた。


「悠尋!」


「あ、琉妃。」


 悠尋が振り返る。


「なんだその泣きっ面は。」


「泣いてない!」


「いや、何で嘘つくの。」


 即答だった。


 琉妃は悔しそうに顔をしかめる。


「もう大丈夫だよ。今は目の前の敵に集中するから。」


 その言葉を聞いた悠尋は、ふっと笑った。


「心強いな。それでこそ俺がスカウトした最高の仲間だよ。」


「ありがとう。」


「礼はいいさ。」


 悠尋は剣を構える。


「あの子の為に、全力で戦うぞ!」


「分かってる!」


   ◇


 男たちが次々と押し寄せる。


 だが、悠尋たちは圧倒していた。


「相手はただのホームレス集団。特に手応えはないな。」


 悠尋が男を吹き飛ばしながら言う。


「でも油断は禁物だ。金への執着は凄いみたいだからよ。」


 日和が周囲を警戒する。


「はぁ……はぁ……。」


 その時。


 琉妃の呼吸が乱れた。


 俊音が軽く背中を叩く。


「どうしたどうした! 呼吸上がってるぞ?」


「いや……。」


 琉妃は剣を構え直す。


 だが、一瞬だけ。


 その瞳から光が消えた。


「あ。」


 琉妃はハッとしたように周囲を見渡す。


「危な。また持っていかれるところだった……。」


「そう言えば、空介は?」


 悠尋が尋ねる。


「あ、置いてきてしまった。」


 悠尋は少し考え込んだ。


「空介に琉妃の様子を見ておくよう頼んだんだが、琉妃が一人でここに来た。空介ならすぐ来てもおかしくないんだけどな。」


「何かあったんじゃない?」


 弘明が呟く。


「そうかもしれん。」


 悠尋は琉妃を見た。


「琉妃。あの子の元へ戻ってやれ。」


「いや! 俺はまだ戦える!」


「それは分かってる。」


 悠尋は琉妃の前へ立った。


「敵の数も減ってきてるしさ。仲間として、お前を“守りたい”だけだから。ここは任せて戻れよ。」


 琉妃は目を見開き、そして力なく笑った。


「そっか。ごめんね、助かる。」


   ◇


 病院へ向かって走る。


「早く……あの子の元へ……!」


「こら! 走らない!」


 医師の声が飛ぶ。


「すみません!」


 琉妃は勢いよく病室の扉を開けた。


「純香!」


 その叫びに、空介が振り返る。


「琉妃! 意識が!」


 琉妃はベッドへ駆け寄った。


「純香!しっかりして!俺だよ!琉妃だよ!純香!」


「諦めちゃダメ!声は絶対に届く!」


 空介も声を張る。


「純香……目を覚ませ……!」


「ぅ……。」


 純香の瞼がわずかに動いた。


「純香!」


 純香はかすかに微笑む。


「琉……妃……。ありが……とう……。」


 消えてしまいそうな声だった。


「こんな時まで……!」


 琉妃は純香の手を強く握った。


「聞こえている?俺はね純香。俺は君から数え切れないほどの幸せを受け取ったよ。」


 涙が次々と零れる。


「君の思いも、君と遊んだ思い出も。今となっちゃ昔のことみたいに思えるけど……俺はあの時、本当に幸せだった。」


 純香の瞳から涙が溢れる。


「それに……こんな俺だけど、俺は君と出会えて本当によかった。絶対に後悔なんてしない。」


 震える声。


「君の思いを、力を糧にこれからの困難を君と共に生き続ける。だから見ててくれ……純香。」


「聞こえてる……みたいだね。」


 空介が静かに呟く。


「うん。」


 琉妃は頷いた。


「これが俺の最後に伝えたいこと。俺は……君と出会えてすごく幸せだよ。」


 琉妃は声を上げて泣いた。


 その瞬間。


 純香の手から、わずかに残っていた力が抜け落ちる。


 病室から音が消えた気がした。

 手が静かにベッドへ落ちた。


   ◇


 病室の外。


 悠尋たちは黙ってその光景を見つめていた。


「こんな結末。誰が予想したよ。」


 俊音が低く呟く。


「話には聞いていたが、ここまで体が弱ってるとは聞いていなかったからな。」


 日和も表情を曇らせた。


「助けたかったね。琉妃も、あの子も。」


 弘明の声が震える。


「いや、むしろ逆だ。」


 悠尋が静かに言った。


「俺たちは手を出さなくてよかったさ。俺たちが関わっていたら、こんな綺麗に終わっていないよ。」


 その瞳は鋭く、そして透き通っていた。


「最後の瞬間くらい……彩らせてやれ。」


   ◇


 病室。


「綺麗だよ純香……。すごく……。」


 琉妃は涙を流しながら微笑む。


「モデルのように綺麗だよ……。」


 その時、病室の扉が勢いよく開いた。


「純香!」


 母親が駆け込んでくる。


「もう……。」


「遅かったのね……。よく生きた。」


 母は娘の頬を優しく撫でた。


「どうして一人で外を歩かせたんですか?」


 琉妃が俯いたまま問う。


「行く先があなたの元だと聞いて、止めることはしなかった。」


 母は静かに答える。


「あなたはこの子の生きる糧だった。ずっと言ってた……琉妃に会いたい……と。」


 琉妃は拳を握り締める。


「あなたの元なら大丈夫だと思った。でも、約束は守った。私は私なりに努力したよ。この先の未来を考えて、どんなに辛くても……笑顔で純香を見守った。親として……。」


「俺は……守れなかった……。」


 声が震える。


「笑顔でいれなかった。約束したのに……! 笑顔でいるのが、こんなに難しいだなんて思わなかった!」


「あなたも頑張ったのよね……。」


 母も涙を流す。


「私の娘の為に……こんなにも涙を流してくれる友人がいるのなんて、純香はとても幸せ者ね。」


「死んで幸せ者なわけないですよ。」


 琉妃は俯いたまま言った。


「死ぬべくして死んでないのだから。大体病って……。」


 その時。


 空介がそっと琉妃の裾を掴む。


「琉妃。」


 目が合う。


 空介は静かに首を横へ振った。


「……。」


 その空気を裂くように、小さな声が響いた。


「これ。」


 振り返る。


「君は……風?」


 母親の後ろに立っていたのは、純香の弟――風だった。


「お久しぶりです。」


 風は手紙を差し出す。


「お姉ちゃんが家から出ていく時、預かったんです。会った時に、琉妃さんに渡すように……と。」


「手紙……。」


 琉妃は震える手で受け取る。


「風、君は悲しくないの?」


「悲しいですよ。涙は流しました。」


 風は唇を噛んだ。


「だからある程度覚悟はしていたんです。だけど……身近な人が亡くなるって……こんな心に来るんですね……。」


 堪えていた涙が溢れる。


「純香……手紙、読んでもいいかな?」


「読んであげてください。」


 琉妃はゆっくり封を開けた。


   ◇


『琉妃へ


元気に過ごしているかな?

私はどこにいるのか分からないけれど、琉妃のそばにいられたらいいなと思っています。


私の人生は、生まれた瞬間から徐々に辛くなっていきました。子供の頃から恐怖を感じ、死にたくないという気持ちが強くなりました。


だから、気を紛らわせるためにあなたに声をかけたのです。最初は戸惑ったよね。でも、私もどう声をかけたらいいのか分からなかったから、同じように戸惑っていました。


それでも、その一歩が未来へとつながったんだ。

君と笑い合える未来へと。


琉妃と一緒に遊んで、笑い合える日々は本当に幸せでした。


最後に、怖くて辛い日々も、私はあなたのそばにいます。きっと近くであなたを見守っているから、私のことを忘れないでほしいです。


私の道が、あなたと共に歩めますように心から願っています。今までありがとう。

幸せな日々が訪れますように。』


   ◇


「ずるいよ純香……。」


 手紙に涙が落ちる。


「俺は一度背負い込むと、全然うまくいかないことが多い……。そんな時、君は俺を励ましてくれるかい……?」


 琉妃は静かに目を閉じた。


「聞いても届かないことは分かっている。でも俺は……絶対に諦めない。諦めないで進むよ。」


 涙を拭う。


「君が茨の道のような人生を生き抜いたように……。」


 そして、ゆっくり目を開ける。


「純香……ありがとう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ