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LEGEND SPIRIT 〜後に伝説と呼ばれる者たち〜  作者: ゆに


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35話 来訪(古友恋心編)

ついに始まりました。本格長編。

古友恋心編です!


皆さんご覧ください!

「よおし……着いた……。」


 少女は、小さく息を吐きながら目の前の家を見上げた。


 長旅だったのだろう。肩で息をしながらも、その瞳には確かな意志が宿っている。


 そして、迷うことなくチャイムを押した。


 ピンポーン――。


「ん? 誰だ。」


 リビングでくつろいでいた悠尋が顔を上げる。


「ちょっと見てくるよ。」


 弘明は立ち上がり、そのまま玄関へ向かった。


 扉を開ける。


「どちら様で……?」


 そこには、見知らぬ少女が立っていた。


 どこか儚げで、けれど芯のある目をした少女だった。


「あ、どうも。こんにちは。琉妃はいらっしゃいますか?」


「琉妃の友達?」


「はい。」


 弘明は一度、家の中を見渡した。


「まだ寝てるかも。ちょっと待っててね。」


 そう言って奥へ向かう。


 しばらくして、寝起きの琉妃がぼんやりとした顔で廊下を歩いてきた。


「んん……。おはようみんな……。」


 その瞬間、少女の表情がぱっと明るくなる。


「あ、琉妃!」


「んー?」


 眠そうに顔を上げた琉妃は、次の瞬間、目を大きく見開いた。


「え……純香!?」


「うん。純香だよ。」


「どうしたのこんなところで……!」


 純香は少し目を細める。


「話に聞いてたからね……来ちゃったよ。」


 琉妃も同じように目を細め、小さく笑った。


「そっか……。体の調子は大丈夫?」


「大丈夫だよ。」


「ならいいんだよ。でも何かあったら大変だからね。ちょっと家の中に入りなよ。お茶も出すし、エアコンも効いてて快適だから。あ、お薬は持ってきた? ないなら一応安定剤ならあるよ。必要なら教えてね。あ、寒いなら言ってね。温度の調整はできるから。」


 矢継ぎ早に言葉を並べる琉妃。


 その様子は、異常なほど過保護だった。


「ありがとう。」


 純香は優しく笑う。


 その横で、弘明が小さく首を傾げた。


「この子はあまり体が良くないの?」


 琉妃は薄く目を細めた。


「まあ……ね。」


   ◇


 純香は家の中へ通された。


「はじめまして。」


 丁寧に頭を下げる。


 琉妃がみんなの方を向いた。


「紹介するよ。この子は皆田木純香。」


「君が噂の皆田木純香か!」


 日和が思わず声を上げる。


 純香は少し戸惑ったように瞬きをした。


「噂……?」


「あーあはは、ごめん。純香のことは、みんなに話してるんだよね。」


「そうなんだ。」


「純香にも紹介するね。」


 琉妃は一人ずつ指を差しながら紹介していく。


 純香は真剣に聞いていたが、途中から少し混乱したような顔になった。


「な、なるほど……。」


「まあすぐに覚えるのは大変だからね。ゆっくり覚えてくれたらいいよ。」


「分かった。ありがとね琉妃。みなさん、今後ともよろしくお願いします。」


 もう一度、ぺこりと頭を下げる。


「うん。よろしくね。」


 空介が柔らかく笑った。


 すると俊音が興味津々な顔で前に出る。


「そういえば、琉妃とは幼馴染なんだろ? ガキの頃のこいつはどんな感じだったの?」


 純香は俊音を見て、ふっと笑みをこぼした。


「なんや変わっちゃいませんよ。今も昔も何一つ変わっていない。本当に底がしれない男の子。何かに縋り付くことは、昔から同じみたい。」


「えぇ……どう言う……?」


 困惑する琉妃を見て、周囲から小さな笑いが漏れる。


 その時、悠尋が立ち上がった。


「ま! 久しぶりの再会で、水入らずを邪魔しちゃいけないな。俺たちは少し外す。だから二人は仲良く話してなよ。」


「分かった。ありがとう悠尋。純香も好きにくつろいでよ。」


 純香はソファを指差した。


「ここに座っても?」


「いいよ。」


   ◇


 悠尋たちは外へ出た。


「ん? なんだか騒がしいな。」


 周囲を見渡すと、妙に人だかりができている。


「人が多いな。」


「一体なんの騒ぎだろうね。」


 空介が呟く。


 日和は近くにいた男へ声をかけた。


「あの、何でこんなにざわついているんですか?」


 男はにやりと笑う。


「決まってる。今この街に、財産の為に――」


   ◇


「純香。どう? この街は。」


「とても賑やかだね。ここが琉妃の育った街なんだね。」


「俺のようなやつでも受け入れてくれる街だよ。」


 しばらく沈黙が流れる。


「そういえば、どうして一人で来たの?」


「ちょっと無理言ってね。どうしても……琉妃に会いたかったから。」


「そっか……。」


 琉妃は少し俯いた。


「体の調子はどう?」


「うん……大丈夫だよ。」


「そっか……それはよかった。」


 また沈黙。


 重くはない。けれど、どこか言葉を選ぶような静けさだった。


「ごめんね琉妃。私の病に巻き込んじゃって。」


「いや! そんなこと!」


 琉妃は勢いよく立ち上がり、すぐに座り直した。


「俺でよかったよ。他の誰かじゃない、俺で。」


「そっか……。」


「そういえば純香の夢は……変わった?」


「夢……何だっけな……。」


 純香は少し考え込む。


「ごめんね。最近物忘れもすごいの。」


「あ、ごめんねこっちこそ。」


 琉妃の表情が曇る。


「あ、少し外でも歩く?」


 純香は少し考えた。


「ごめん、きつかったよね。」


「いいえ。」


 純香は軽く首を振る。


「歩こうかな。」


「本当に? 無理してない?」


「してないよ。」


「ほんとかなぁ。」


「もちろんだよ。それにね私、柿が食べたい。好きな食べ物なんだ。」


「知ってるよ。」


 琉妃は優しく笑った。


「じゃあ一緒に買いに行こうか。」


「うん。行こう。」


   ◇


 二人は外へ出た。


「……琉妃。」


「んー?」


 弱々しくも優しい声に振り返る。


「何も変わっちゃいないって言ったけど、変わってるところは沢山あるよ。」


「例えば?」


「君が中学生になってるところ。少し声変わりをしているところ。私相手でも口下手になっているところ。」


「そ、そうかなあ。純香も……。」


 琉妃は柔らかく笑った。


「あの頃から何も変わっちゃいないよ。」


「ふふふ。」


 純香も小さく笑う。


「本当なのか冗談なのか、わかりやすいな。」


 その時だった。


 周囲からざわめきが聞こえてくる。


「あれじゃないか?」

「あの子供がか……!?」


 琉妃は近くにいた日和へ声をかけた。


「何の騒ぎ?」


「あー琉妃か。ちょっと大変なんだよ。財産が何とか……。」


「財産……?」


 その瞬間、純香が俯いた。


「純香……?」


「私はお金なんか持っていませんよ。」


 だが、周囲の人間たちは聞く耳を持たない。


「やっぱりあの子供だ!」

「ちょっとお金を恵んでくれよ!」

「くれるんだろ!? お金!」


「私にお金はありません!」


 純香は弱々しくも、大きな声で叫んだ。


「純香……。」


「私ではない……私のご先祖様だけです! 誰彼構わず恵を与えるお人好しは!」


「そんなこと言わずにさあ。」


 一人の男が純香へ手を伸ばす。


 その瞬間――琉妃がその腕を掴んだ。


「ちょっと、何してるの? 嫌がってるでしょ?」


「何だお前! お前に用はねえ!」


 男は乱暴に手を振り払う。


「引っ込んでろこのガキ!」


 再び純香へ手が伸びる。


 しかも一人ではない。周囲の男たちまで、純香へ群がり始めた。


「やめろ……。」


 琉妃は手を伸ばす。


 だが、弾かれる。


「やめろ……!」


 何度伸ばしても、何度でも弾き返された。


「この子には触るなっ!」


 さらに前へ出た瞬間、一人の男に胸ぐらを掴まれる。


「てめえさっきからうるさいんじゃ。財産を独り占めしようって魂胆か? あ?」


「何を言ってるんだこいつら……。」


 琉妃は男の手を払いのけた。


「この子はお前らなんかに構っている暇はないよ!」


 そして純香を見る。


「ねえ純香……!」


 純香は酷い汗を流していた。


「純香……?」


 顔色は真っ青だった。


 琉妃の背中にも冷や汗が流れる。


「純香!」


 琉妃は無理やり人混みの中へ割り込んだ。


「ちょっと……! ちょっとどいて!」


「いってえ……何すんだよお前!」


 男が琉妃の髪を掴む。


「やめろ……! この子は……! やめろって……!」


 必死に抵抗する。


 だが男たちは離れない。


 さらに琉妃へ群がっていく。


 それでも琉妃は、純香へ手を伸ばし続けた。


 しかし――。


「……。」


 純香の体から力が抜ける。


「純香っ!」

古友恋心編。

こゆうこいしん編と自分は言っています。


次回 謎の病

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