29話 キラワレモノ(雪のキラワレモノ編)
ついに始まります。
雪のキラワレモノ編!
今回は医畑空介くんがメインとなって活躍します!
――宮地宅・玄関。
「あれ、今日も行くのか?」
「うん。ちょっと行ってくるよ。」
そう。これは俺とあの人の話。
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空介は、上栖鳥市に唯一架かる橋――ブルーブリッジを歩いていた。
名前のわりに、それは驚くほど小さな橋だ。
「このままじゃダメだ。このままじゃ、仲間からどんどん置いていかれる。」
俯いたまま、足取りも重い。
「よーお。悩みかい、そこの君。」
声に顔を上げると、欄干の上に一人の男が立っていた。
「おい!あぶねーだろ!死にたいのか馬鹿野郎!」
「よっと。」
男は軽く跳び、空介の目の前に着地する。
「死なねーったら死なねーよ。俺はこんなところじゃ。」
「全く、本当に腹立つやつだ!」
怒鳴りながら去っていく人影。
「相変わらずの嫌われっぷりですね。」
この男の名は、霧雪露電。
「別に嫌われてもいいのよ。俺は俺の好きに生きる。やりたいことを今やる。それで嫌われるってんなら、俺とは分かり合えねー奴だ。分かりやすいだろ?人の区別をちゃんとできんだ俺は。」
「かっこいい。さすが大人って感じですね。」
「そうかあ?いい歳こいたおっさんが何言ってんだって思うだろ。」
「いや、思いませんよ。人それぞれですもんね。」
男はふっと笑った。
「そっか。お前いいやつだなー!」
「ま、その話は置いておいて……。師匠!今日も習いにきましたよ!」
「今日もって……懲りないな全く。お前と出会って数ヶ月。俺は何一つお前に剣術を教えていないぞ。」
「そうですね……それでも!教えてもらえるまで、毎日でも訪ねますよ!」
「めんどくさいな全く。俺は教える気はこれっぽっちもないぞ。」
男は歩き出す。
その背中を、空介は迷いなく追った。
――俺は知っている。
この人はすごい。
普段は怠けているように見える。だが、あの時。
ふと姿を現し、一瞬で敵を蹴散らし、少女を救った姿を――この目で見た。
「師匠!」
男が振り返る。
「あ、俺が師匠か。」
「いい加減教えてください。」
男は少しだけ考え込む。
「教えてって言ってもね。何もわかんないよ俺。剣すらまともに振ったことないし俺。」
「またまた……俺は本気で言ってるんですよ。」
「って言われてもなぁ……。」
やがて二人は、男の家に着いた。
「俺、今から夕飯だけど…。」
「また……明日来ますね。」
踵を返し、歩き出す空介。
「あーまて。ったくミスったな。1人分多くご飯炊いちまった。誰かいねーかな暇そうなやつは。」
空介の目がぱっと輝く。
「はい!俺!俺暇です!」
男がかすかに笑った。
「おう。上がれよ。」
「はい!」
二人は並んで家に入る。
「ここが……師匠のお家。」
ぐるりと見渡して、思わず声が漏れる。
「散らかりすぎでしょ!」
「あーもういいからいいから。そこらへんにテキトーに座れ。」
「あーはい。」
腰を下ろしながら、改めて室内を見る。
(破壊された機械が多い。師匠はいったい何者なんだろう。)
「何か気になるもんでもあるのか?」
「この機械の残骸みたいなのは何ですか?」
「ゴミだ。外にでりゃ、拾い癖が発動してしまうからな。変なもんばっかり増えちまう。」
「にしても機械ばっかり。外でもあまり見かけることのない物ばかりですね。」
「そーだぞ。レアだぞレア。希少だぞ。」
「へぇ……。」
「ほら夕飯だ。さっさと食ってとっとと帰れ。」
目の前に並べられた食事。
空介は静かに手を合わせる。
「ありがとうございます。いただきます。」
「いただきます。」
しばし、食事の音だけが流れる。
「あのさ。お前が見たのは何かの間違いなんだよ。ほら、なんの取り柄もない普通のおっさんが、お前の言う奴に当てはまるわけがないだろ?」
「俺は師匠が……きっとそうだと思っています。」
「あの時、俺の周りにはたくさん人がいた。もちろんお前もそれを見ていただろう。他の奴が助けたとは思わないのか?」
「でも俺は確かに……!あなたを見たんです。たった1人の少女を助けるあなたを。」
空介の表情が、ふっと曇る。
「どうした、悩みか?吐き出せよ。美味しく飯も食えなくなるだろう。」
「俺、もっと強くなりたいんです。今のままじゃ、仲間との実力の差がありすぎる。誰が見ても明らか。俺が……弱すぎるんです。」
「別に仲間は競い合うもんじゃねーだろ。」
「でも!俺は強くないといけないんです!」
思わず声が張り上がる。
男は小さくため息をついた。
「弱音はやっぱり飯が不味くなるな。お前は大切なもんが見えていないんだよ。」
「それってどういう…?」
「自分で考えることだ。本当に仲間を思っているのならな。」
「仲間を……?」
「やめだやめだ。飯が不味い。」
そう言って立ち上がる。
「おいお前、少し素振りして見せろよ。」
空介の目が一気に輝いた。
「え!稽古つけてくれるんですか!?」
「しらん。ネットで見た情報だけだ。」
「わぁ!やってみます!」
男の口元が、ほんの少しだけ緩む。
(全く……こんなつもりじゃなかったんだけどな。)
後書きって何書けばいいんだろう。
自分のこと書いたらいいのかな。
それともお話のことを書けばいいのかな。
わからない、ことばかり。
あのね。一体いつから。優しく頭を撫でて欲しいの?
あははん。
あ、次回予告ね。
次回 『伝説のヒーラー』




