21話 高級茶会(平柳家侵入編)
シリアス回なのに、お茶会!?
何考えてるんだこの作者は!?
襖が静かに滑り、屋敷の一室へと開かれる。
「お邪魔しまーす。」
軽い調子で入ってきたのは、琉妃だった。
部屋の中にいた少年が、驚いたように顔を上げる。
「……あなたは……」
「こんにちは。魔条琉妃です。」
「あ、こんにちは。平柳圭です。」
穏やかな挨拶が交わされる中、琉妃は早速本題に入った。
「爆竹君知らない?」
「……居場所は、わかりません。」
「そっか。ありがとう。」
聞きたいことだけ聞くと、琉妃はあっさりと踵を返す。その背中に、圭が慌てて声をかけた。
「あ、待ってください!よかったらどうですか?お茶、していきませんか?」
「え、お茶?」
「はい!お茶です!」
琉妃は一瞬きょとんとした後、少しだけ考え込む。
「いや別に、喉は渇いて……」
そこで言葉を止め、ぽつりと呟いた。
「お金持ちのお茶……気になる……」
気づけば、圭の向かいに腰を下ろしていた。
「あはは!結局いただくんですね!」
「まぁ、お言葉に甘えて。」
圭は嬉しそうに立ち上がり、手際よく茶の準備を始める。
「少し待っててくださいね。」
「うん。ありがとう。」
やがて差し出された湯気の立つ茶を、琉妃は受け取った。
「はい。どうぞ。」
「ん、ありがとね。」
一口含み、ふっと眉を上げる。
「んー?これは何茶?」
「茶外茶というらしいです。スターフルーツが含まれているとか……」
「スターフルーツ……漫画でしか聞いたことない。」
「漫画ですか……」
「あんまり読まないよね、そういうの。」
「はい!あんまりです!」
「うん、知ってたー。」
軽いやり取りの後、ふと圭の表情が陰る。
「……正直、僕なんですよね。日菜乃さんを求めたの。」
「へえ。」
「車内から見えたんです。彼女が歩いているのを。一目惚れでした。」
静かに語られるその想いに、琉妃はただ相槌を打つ。
「父に話したら……まさかこんな事になるなんて、思いませんでしたけど……」
「君の意思じゃないってことね。」
「……はい。」
「もっと他のやり方、あったと思うけどなあ。」
「そうですよね……すみません。」
落ち込む圭に、琉妃は少しだけ笑って言った。
「でも、いいと思うよ。」
「え?」
「いい機会だと思う。」
琉妃は湯のみをくるりと回しながら続ける。
「弘明。君が一目惚れした子のお兄ちゃんね。多分、妹の気持ちとか分かってないと思うからさ。」
「分かっていない……?」
「優秀だからって、一人で大丈夫だって思ってる節がある。」
圭は静かに頷いた。
「なるほど……」
「だからさ、いい機会なんじゃない?あの堅苦しい兄が、ちゃんと向き合うための。」
「……ですが、本来こんな戦いは起こるべきでは……」
「まあまあ。」
琉妃は茶を飲み干し、にやりと笑う。
「こんな美味しいお茶飲めてるし。戦いよりお茶だよ、お茶!」
「そんなに喉渇いてたんですか?」
「渇きまくってるから、おかわり貰うことってできる?」
差し出された湯のみを受け取り、圭は慌てて立ち上がる。
「あ、はい!今すぐ!」
再び注がれた茶を受け取りながら、琉妃はふと思い出したように言った。
「ところでさ、なんでお父さんに恋愛相談したの?
普通小っ恥ずかしくてできなくない?」
圭は少しだけ苦笑する。
「恥ずかしいことなんて、あの父には筒抜けですから。」
「なるほどね。」
「……正直、どうしていいか分からなかったんです。」
「恋愛、分かってないタイプね。」
琉妃は肩をすくめた。
「俺も全然知らないけどさ。外の世界、見た方がいいかもね。」
「外の世界……?」
「人がどう恋して、どう想いを伝えてるか。実際に見るのが一番早いよ。」
圭の目が、ぱっと輝く。
「確かに……そのような選択肢も……」
しかしすぐに、その表情は曇った。
「……でも、もう遅かったですね。」
「もっと早くあなたに出会っていれば……」
「まあいいってことよー。」
琉妃は立ち上がる。
「美味しいお茶も飲めたし。でもさ——」
その目に、わずかに鋭さが宿る。
「一旦受けた勝負は、受けるよ。」
「……すみません。」
「気にしない気にしない。」
軽く手を振り、琉妃は笑った。
「高級茶会、楽しかったよ。今度は美味しい食べ物、ご馳走になろうかな。」
「またいつでも。」
「ん。ご馳走さん。美味しかった。」
「こちらこそ、ありがとうございました!」
琉妃が会釈した、その時だった。
襖が勢いよく開かれる。
「いたぞ!」
「げっ……見つかった!せっかくいい感じで終わってたのに!」
武装した者たちがなだれ込み、琉妃の前に立ち塞がる。
「圭様は下がってください!危険です!」
「危険ではないよ。」
「いえ!我々は今、こいつらと戦って——」
言い終わる前に、刃が振り下ろされる。
しかし——
「待って。」
圭の一言で、空気が止まった。
動きも、音も、すべてが凍りつく。
「これは今、僕が決めたルールです。」
静かな声だったが、絶対の重みを持っていた。
「この瞬間、この場所での戦闘は認めません。」
そして琉妃を見る。
「さあ、早く。別の場所へ避難してください。」
琉妃は少しだけ目を細めた。
「避難するほど弱くないよ、俺。
でも……ありがと。」
「ほんのお礼です。」
琉妃は背を向け、襖へと歩き出す。
「君と話しててさ——」
ふと、足を止めた。
「君と話してて、とある人、思い出しちゃったよ。」
それだけ言い残し、部屋を後にする。
残された圭は、ぽつりと呟いた。
「……とある人?」
お茶飲みたいね。
お喉が渇いたね。
そんな時は、ラ◯カストーンで回復できるにゃ。
なんちゃって。
さて次回は 『守ること』です。
お楽しみに〜。




