17話 発明家
こんにちは。
今回も読んでこー!カーカー!
宮地たち、6人の元へ依頼人が来ていた。
依頼人は困り果てた顔で言った。
「節理さんのお宅。
毎日毎日、大きな物音がして迷惑なんです。
対応していただけませんか?」
それに対して悠尋は、どこか慣れた様子で息をつく。
「あの家に対する依頼は、これまで数多く届いています。何度も訪問はしているんですが、一向に出て来ないんですよね。」
「じゃあ……どうにもならないんですか?」
「いえ、もう一度行ってみます。」
そう言ったもののーー
「って言ってもなー、どうするか?」
現場に着いた悠尋は肩をすくめた。
隣で琉妃が無言でチャイムを押す。
ピンポーン。
……反応なし。
「チャイム押しても出てくる気配なし。」
「だよなぁ。」
諦めかけたその時だった。
ガンッ!ゴンッ!ガンガンッ!
家の中から、明らかに普通ではない大きな物音が聞こえた。
「うわっ!なんだ今の!?」
俊音が思わず飛び退く。
「これは……確かに近所迷惑だね。」
空介が苦笑いを浮かべた、その瞬間。
バンッ!と扉が開いた。
そこには逃げる1人の少年と、それを追いかける中年の男がいた。
「悪い!そこの子供!そいつを捕まえてくれ!」
その言葉を聞いた悠尋は、反射的に捕まえた。
「君が節理さん?」
「違う。俺は鴉だ。」
「……は?」
間の抜けた声を漏らしたのは日和だった。
追いかけていた男が、その"鴉"の頭を軽く叩く。
「こら!人に迷惑かけちゃいかんだろ!」
「どこの家の人が言ってんの……。」
空介がボソッと突っ込む。
「元の体に戻してやるからちょっと来い!」
「ちょっと待ってください。」
悠尋が中年の男を見据える。
「あなたが節理さんですか?」
「あ?あぁそうだが。俺が節理良平太だ。何かようか?」
「ご近所から苦情が入っていまして……大きな物音がすると。」
「あー……やっぱりか。」
節理は頭を掻きながら、少し遠くを見る。
「昔はな、この辺りには俺の家しかなかったんだ。
だが気づけば周囲に家が増えて……そりゃあ苦情も入るわな。悪いな。」
軽く謝ると、どこか誇らしげに続ける。
「俺は発明家なんだ。多少の音は目を瞑ってほしいところだけどな。」
「"多少"ってレベルじゃなかったですよ。」
弘明が呆れ気味に言う。
「何を作ってるんですか?」
日和が言うと、節理はニヤリと笑った。
「まあ仕事だ。
……ちなみに俺の失敗作で、こいつは鴉から人間になっちまった。」
「え!?」
「ガハハ!!面白いだろう!」
豪快な笑い声が響く。
悠尋は少しだけ真面目な顔に戻った。
「できれば音を抑えていただきたいんですが……。」
「無理だな。
……まあ地下室でもあれば、多少はどうにかなるかもしれんが。」
節理は肩をすくめる。
「こんなこと、誰にも相談できんだろ?」
「だったら発明して作ればいいじゃないですか。」
琉妃がさらっと言った。
「地下室。」
「採用。」
「はや。」
「ないなら作る。それだけだ。」
あっさり決断する節理に、悠尋は目を細める。
「引っ越すと言う選択肢は?」
「できねえな。」
即答だった。
「どこに行っても迷惑になる。
まあそれは建前。
本当は、江原日暮から依頼を受けている。」
「依頼?」
「そいつを完成させるまでは、ここを離れられん。」
「何を作ってるんですか?」
「そいつは言えねえな。」
きっぱりと断られ、会話は一度途切れる。
そこへーー
「もういいか?俺は行くぞ?」
さっきの"鴉"が動き出した。
「待て!」
節理が腕を掴む。
「俺は会わなきゃいけない人がいるんだ!
邪魔すんな!」
「せめて鴉に戻ってから行け!」
「鴉じゃ話せないだろ!今しかねえんだよ!」
必死の叫びに、空気が少しだけ変わる。
そんな中、悠尋がポツリと言った。
「……その前にさ、服、着ようか。」
全員が一斉に"鴉"を見る。
「あ、ぽこてぃんだ。」
俊音が笑いながら言う。
「外に出るのはいいけどさ、服、着ようぜ!」
"鴉"の方に手を乗せて言う。
「……はい。」
小さく頷いた。
――――――――――
家の中で作業服を着せてもらい、ようやく落ち着いた。
「これでいいか?悪いな、こんなんしかなくて。」
「いや、構わねえよ。」
「で、誰に会いに行くんだ?」
悠尋の問いに、"鴉"は少しだけ視線を逸らした。
「……別に誰でもいいだろ。」
もじもじしている。
「あら、照れてる。」
「言えよー!」
「うるせえな!分かったよ!」
観念したように口を開いた。
「俺を救ってくれた爺さんに会いてぇんだ。」
「救ってくれた?」
「あぁ、3年くらい前、俺は爆発に巻き込まれてな。
もう飛べねえと思った。
でもあの爺さんが助けてくれた。」
まっすぐな目だった。
「だから……礼を言いてえ。」
「いいじゃん、行かせてやろうぜ。」
俊音が笑う。
だが節理は首を横に振った。
「その姿で行ってどうする。
相手からしたらただの知らない"人間"だぞ。」
「……。」
「鴉の姿で礼をしろ。それで十分だ。」
「違う。」
"鴉"ははっきり答えた。
「俺は言葉で伝えたいんだ。」
短い沈黙。そしてーー
「戻ってくるなら行け。」
「!!」
"鴉"は目を見開いた。
「その覚悟が本物ならな。」
「ありがとう。やっとカーカー礼を言わないで済むぜ。」
俊音が何か閃いた。
「待って!名前つけようぜ!」
俊音が割り込む。
「名前?」
「どうせないんだろ?」
「まあな。」
「ブラックハーバードとかどうよ!」
「大学?」
「黒……。」
ポツリと呟いた悠尋の言葉に、"鴉"が反応する。
「それだ。」
「え?」
「クロ。いい名前だ。」
柔らかく笑った。
「厨二っぽい顔してる。」
軽口が飛ぶ中、クロは扉へ向かう。
「行ってくる。」
そして勢いよく飛び出した。
「クロクロクロクロクロクロクロクロクロクロクロクロ……!」
「うわ!気持ち悪っ!」
「気に入りすぎだろその名前!」
そんなやりとりを背に、節理がポツリと呟く。
「あいつの会いに行く爺さんなら、俺は知っている。」
え!節理さん、その人のこと知ってるってどう言うことだろう…!?
次回『鴉の恩返し』




