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ナツくん、女神のミー君にさらわれて信仰心集めの旅へ  作者: 未白ひつじ
5章 フラグってのは簡単には折れねンだなこれが
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78話 ぶっちゃけどうなんです?

「で、わざわざ花見に誘うだけのためにティールさんが来たと信じるほど俺は可愛くありませんよ。ぶっちゃけ何の用事で来たか、腹を割って話そうじゃありませんか」

「くっ……! 花見の話で上手く乗せて煙に巻きながら依頼を受けさせる筈だったのに!」「そんなこったろうと思ったよ!」


両手を上げ、小首をかしげながらてへぺろを決めてあっさりと認めるティールさん。

 ぱっと見可愛らしく見えるが、エミルを小娘と言える年齢を考えると複雑な気分になるね。

 

「バレてしまっちゃ仕方ねえ……まあちょっと話を聞いてくれよ。単なる俺の我が儘ってわけじゃねえんだよ、これがさ」


 ……

 …


カクカクシカジカとティールさんが説明をする。いやまあ、適当な仕事じゃないってことはわかったけれど……なんでまた我々に。説明は至極まっとうな内容だったが、それを我々に持ってくる意味が分からなかった。

 

「……ユグドラールに冒険者ギルドを。それが何故俺たちに話が来るんでしょうか? 俺達よりベテランの連中に頼んだ方がずっといいと思うんですがね」


 ユグドラール、大陸中央部にあるらしいエルフの国にも冒険者ギルドを置いてほしいとの声が国から上がってきたらしい。


 これまで作ろうとしなかったのは、その必要が無かったからと言う事なんだけれども、どうやら事情が変わったようで、これまでいくら誘ってもウンと言わなかったユグドラールから逆にお願いをされている状態なのだという。


 んで、新しく作られるギルドで少しの間冒険者として働いて見せて、エルフの方々に『冒険者と言うのはこう言うお仕事ですよー』と言うのをわかりやすく見せて宣伝して欲しい――ていうのが、ティールさんが俺たちに持ってきた依頼だ。


 いや、マジでどうして俺たちなんかに……?


「若者の冒険者離れ……いや、冒険者になってくれる若者は数多くいるが、その殆どが安全な近場の依頼や、ダンジョンの探索に集中していることは知っているだろう?」


 カリムで見た話だな……。

 あそこのギルマス、ジールさんも頭を悩ませてたっけ。

 

「確かに命は無駄にすべきではないし、彼らの気持ちもわからんでもない。冒険者とは我が身を賭けて名誉を手にするものである――等と言う暑苦しい根性論を言いたいわけでもない。けどな、カリムの現状を思い出してくれ。あれはこの世界に近い将来訪れる未来だよ」


「……世界中がああなると……?」

「ああ、これからそうなっていくだろうし、そうなったらかなり不味い事になる。

 そうだな、ちょっと長くなるが聞いてくれないか? お前達にも知っておいて欲しい話だしさ。そんでナツ達が俺に付き合ってくれるかどうかはそれを聞いてから判断してくれたらいい」

「わかりました。エミル、お茶を頼むよ」

「私もー!」

「モモはジュースが良い!」

「俺にも勿論いれてくれるんだよな?」

「……かしこまった……チッ」


◆◇ティール◇◆


 昔々のお話だ。この地に再び足をつけた先祖達は、すっかり荒れ果ててしまったかつての故郷を見て『ここからまた築き上げていこう』と誓い合い、なんとか手元に残して置いた僅かな資材を頼りに仲間たちと協力をして荒れ果てた大地を開拓し、それを拠点として長き年月をかけて人が住む領域を広げていったと言う。


 人が住める世界を再び作り出す、それには知恵と努力と体力……そして戦力が必要だった。

 何故戦力が必要だったか? かつての故郷は危険な土地に変貌していたからだ。


 天敵である人間達が姿を消した世界は魔物達の楽園となり、我が物顔で闊歩する危険地帯となっていた。安住の地を作り出すためには開拓作業と共に脅威となる魔物の討伐も必要だったんだ。


 かつて持っていたとされる超常の力を失っていた先祖達は苦戦を強いられたが、それでも仲間たちと手を取り合い、少しずつ攻略を進め、やがて最初の国家と言える場所を作りあげた。


 伝承によれば、この大陸を切り開いたのはヒュームとエルフ。二つの種族がこの地で再び目覚め、共に手を取り合って人間の領域を広げていったのだという。


 同じようにナルガ大陸は獣人達が、 ガンズール大陸はドワーフと竜人達が、そしてシルラ諸島は魔人達がそれぞれ開拓したと言われている。

 ……各大陸に似たような話が伝わってるから、まあ、本当の話なんだろうさ。


 んで、どの大陸も先祖たちのお陰で人の領域を確保する事に成功し、今では不自由無く、安心して生活ができるようになっているわけなんだが、なぜ穏やかに暮らせるのかをきちんと理解する、それは大切な事だ。


 いくら人の領域を確保したと言っても世界は広いんだ、人間がその全てを手中に収めた訳じゃあ無い。これは忘れちゃいけない事さ。


 魔物は今でも存在するし、総数で見りゃあ魔物が住む領域のがまだまだ多いんだからな。


 街から遠く離れなければ、街道から外れなければ安全である、なぜ安全に生活が出来るのかを考えられない若者が増えてしまった。


 俺達が人の領域で穏やかな生活を送れるのは先祖達が、冒険者たちが体を張って魔物の討伐をしてきたからだ。


 魔物だって生殖活動はする。放っておけば数は増し、やがて人の領域を飲み込んでかつてのように大陸中を我が物顔で歩き回るようになるわけだ。


 んで現在問題になっているのは冒険者の弱体化だ。

 ベテラン共が元気なうちはまだ良いが、これからを担う冒険者共がひ弱になっちまってる。


 ベテラン共が数を減らすに連れ、どんどんと平均戦力が落ちていっちまっているんだ、これじゃあお先真っ暗よ。


 俺はな、冒険者たちにかつての力を取り戻させ、皆がより安心して暮らせる世界を生み出す力となってほしいんだよ。


 そこで、俺の田舎が出てくるんだが……保守的な田舎もん達もようやく冒険者ギルドを置いた方が良いだろうと考えたようなんだ。


 ギルドがこの世に出てからどんだけ経ってんだって思うかもしれねえが、まあ俺たちエルフの尺度ってのは長命種故に……のんびりとしてるんだ、そこは目をつぶってくれ。


 田舎の連中はギルドなんざなくとも各々が適当に魔物を狩って自衛をしてっからな、それもあってわざわざギルドなんぞ作る必要がなかろうと思ってたようなんだが、里でも似たような事は起きてるんだ。


 若い連中がどうも狩りに興味を示さないようでな? やれほっといてもジジババが狩るだろうだの、狩りはかっこ悪いだの、面倒くさいだの……なんつうか兎に角狩りを覚えようとしねえらしい。 


 今はまだジジイババアも体が動くが、それも長くは続かねえ。

ふと、今後訪れる未来を考えたとき、ようやく事態の重さに気づいたらしいんだな。

『やべえ、このままだと国を護る力が無くなるじゃねえか』

 ってな。そんで流石のジジババ達も慌てて対策を練り始めたんだ。

 

『若者たちが狩りに興味を示すにはどうすればよい? そうだ、若者の憧れ、冒険者ギルドだ!』

『おお、都会で流行ってるアレだな! それはいい!』

『情けない事に我々エルフは影響を受けやすい悪い癖があるからなあ。ギルドを置いたらきっと若者たちもノリノリで狩りを覚えたがるようになるだろう』

『ワシらもそろそろ街のナウい流行を取り入れていかねばならんのだろうな』

『時代ってやつじゃのう。そろそろ新しい風を入れる時が来たわけじゃなあ』


 なんてな。いつの流行だよっつう話なんだが、まあ、そんだけ田舎だと思ってくれ。

 しかしその田舎ってのが今回の場合は良い方向に作用するんだ。

 

 何しろ外部から殆ど情報が入らねえほどのクソ田舎だ、ジジババはもちろんの事、純粋な若い連中だって今の冒険者たちの流行なんて知るわけもねえ。

 つーか、そもそも冒険者なんて見たことねえ連中ばかりだからな、冒険者は魔物を狩る連中なんだろう、それくらいの知識しかねえ。

 

 そこで一般的な冒険者としてお前たちを紹介する。

最初は座学でハートを掴むんだ。なーに、お前たちがこれまでにやってきた事を面白おかしく語ってやればそれでいい。それだけで間違いなく連中は食いついてくる。


 そしたら後は簡単さ、エルフ共を連れて魔物を狩りにいきゃあ良い。そこでお前たちの圧倒的な力を見せつけてやれ。


 お前たちの冒険譚を聞き、実際に見せられちまったら感化されねえわけがねえ。

 さっきも言ったがエルフって連中はこう……単純で影響されやすい所があるからな。

 

 んでま、冒険者になったらば外に出たがる連中も増えるだろうし、ギルドが出来りゃあついでに道も整備されっから外から来る客も増える。そうなりゃ流石のエルフ共も『あれ、俺が知ってる冒険者とちょっと違うのでは』と気づくかもしれねえが、それでいい。


 今度はエルフの冒険者共が他種族の手本になる。

 俺たちに鍛え上げられた冒険者だぞ? それが一人や二人じゃねえときたら、怖じ気ついてる連中も『俺達でもああなれるかも』と思うんじゃねえか?


 それが広まっていきゃあ……なあ? おもしれえと思わねえか? 俺たちの手で冒険者の意識を変えていくんだぜ? 


どうだ? なんとか協力しちゃくれねえかな……。

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