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ナツくん、女神のミー君にさらわれて信仰心集めの旅へ  作者: 未白ひつじ
4章 ちょっとヘルプに行ってきます。
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73話 立つ鳥後をにごさ……ず! 

「ナツ……なんだか数年分働かされちまって、何度お前をぶん殴ってやろうかと思ったかわからねえが、結果としてはすげえ感謝しているぜ、ありがとうよ」

「ジールさん……褒められてんのかなんなのかわかんねーですよ、それじゃあ」

「はっはっは。言うなナツよ。ギルド一同、皆一時期はそう思っていたし、今では共に感謝してるんだからよ」

「そんな話聞きたくなかったよ!」


 別れの朝――っつうわけで、現在我々はカリムは冒険者ギルドの前に来ています。

昨日、今回の指名依頼達成の手続きを済ませた際に『んじゃ明日は適当に馬車拾って帰りますんで、先にご挨拶を』なんて言ったところ……。


「水くせえ事言うなよな。馬車ならこっちで手配してやっからよ。見送りくらいさせてくれよ」


 なんて言われてさ、まあ馬車手配してくれるんならいっかーと、気楽な気持ちでOKしたらこれだもん。


「ミューラ殿! 貴方が居ない間、ヌタハマグリの処理は我らモールトン辺境兵団にお任せ下さい!」

「ミューちゃんほんと今日までありがとうね。冬でも街が綺麗なのはあんたのおかげだよ」

「エミル師匠~! 名残惜しいですう……! 本当に帰っちゃうんですねえ……」

「エミル殿ともっとあの湯について議論をしたかったですねえ」 

「モモちゃーん! これ、帰りに食べてね! クリームタップリ盛って置いたからさ!」

「おっと、うちのスープも持っていっておくれ。明日までなら温めれば食べられるからね」

 

 なんともかんとも。ギルドの職員達だけでは無く、ミー君達が仲良くなったらしい町の人達がわっと駆け寄り別れを惜しむように言葉を交わしている。


 ったく、ジールさんめ、憎いことをしやがるぜ。


「ナツ! お前達のお陰でカリムの民は凍えずに済んだ! ありがとうよ!」

「ナツさん! あんたが狩る獲物の肉が買えなくなるのは残念だぜ……」

「ナツ殿ぉ! 魔物素材、本当に助かりましたぁ! 錬金術ギルド一同、深く深く礼を!」


 ほんと憎い……! 美女の一人や二人俺に別れを惜しみに来てくれたって良いじゃん? 錬金術ギルドにだってさ、かわいい受付嬢がいたんだよ? 何で俺の所には脂ぎったおっさんばっか来るんだよ……。

 

 もっとこう、美女が……ねえ? 美女がさあ……美女が……あれ、あの怪しげな布を被った女性……何処かで見た覚えが……。


「あの、貴方……」


 思わず声をかけてみると、怪しげな女性はビクンと肩を震わせ……うっわ、そんなびびるこた無いじゃん……けれど、小さな声でこう言った。


「その節はお世話になりました。おかげさまで私は無事に街まで帰ることが出来ました」

「良かった、心配していたんですよ」

「ええ、ありがとうございました。本当に……。最後にこうしてまた会えてうれしく思います」

「はは、俺もですよ。貴方が無事でいるか心配でしたからね。元気な姿を見られて本当に良かったです」

「ふふ……本当にナツ殿はお優しいのですね。是非またこの街に来て下さいね」

「ええ、いつか必ず来ますよ。とある人とも約束しましたからね」

「……! そうですか。そうですか! はい、約束ですからね。必ず!」


 なんだか……この人の声、知ってる感じがするんだよなあ。

 いやまあ、しかしだよ。神様は見てるもんですね。ミー君はこっち見てねえけどさ。

 あの可愛らしい声、顔は隠れていて良くわからんが、かなりの美人さんですぜ?


 そんな美人さんがわざわざ見送りに来てくれるだなんて……いやあ、俺の異世界生活は今、真の始まりを迎えたのかも知れないな!


「おう、ナツ。済まねえがそろそろ時間だ。ニーファ」

「はい、ギルマス。というわけでナツさん、本当に大変お世話になりました。ギルド職員としても、私個人としても凄く感謝していますよ」

「なんだかニーファさんに褒められると照れちゃうな」

「ふふ。ナツさんはもっと自信を持って下さいね。それだけの事を成せる御方なんですから……っと、ギルドで手配をした馬車が到着しましたので……名残惜しいですが、お別れですね」

「そう……ですね。なんだか結構この街に馴染んじゃったもんで、ほんと名残惜しいですよ」

「そう言って頂けて本当に嬉しく思いますよ」


 そう言って可愛らしく笑うニーファさん。 マミさんの笑顔はクセになるけれど、本来の笑顔という物はこういう可愛らしく、背筋に何も感じない事のことを言うのだよ。


 この笑顔を見られるのも今日で最後かと思えば、ほんと寂しく思うな。


 等としんみりしている気分を打ち消すように、ガタガタゴトゴトと音を立てて大きな馬車がやってきた。


「ミー君、エミル、モモ。帰りの馬車が来たようだ。準備は出来ているな?」

「うん! じゃあね、みんな! またいつかお掃除に来るからねー!」

「良いか? 食事と睡眠は削ってはならぬ。後悔したときにはもう遅いのだからな」

「モモな、皆にここのごはんおいしいぞーって伝えるからなー!」


 それぞれがそれぞれに別れを告げ、メルフへ向かう馬車へと近寄ると……。


「わりいわりい、仕入れに時間かかっちまってな。まあ、帰りは急ぐ旅じゃねえんだろ? ノンビリ行こうぜ、ナツ!」


「「「「チーおじ!?」」」」


「はっはっは。驚いたか。ああ、今回は依頼で来たわけじゃねえぞ? 純粋に商売で来たんだ。ギルドに護衛を頼みにいったらよ、ナツ達を紹介されてな。二つ返事でお願いしたよ」


「なんだよ、来てるなら教えてくれてもよかったじゃんか」

「へへ、わりいわりい。あの浴場がよ……すげえ良くてな……仕事以外は飲んでるか風呂入ってるかになっちまって、お前の事すっかり忘れてたんだよな」

「ったく、チーおじらしいぜ」


 なんとも。


 いつも通りになんとも締まらない我々は、どやどやと馬車に乗り込むと、窓から街の皆に手を振って、縁を結んだ人達に見送られながらカリムを後にした。  


 そして何事も無く、無事にメルフに到着してから数日後――


「な、ななな、なーーー!」

「なんですか、ミー君。『な」は1回で良いですよ」

「なにいってるんだい? もう! そうじゃなくて! ナツくん! 大変なんだよ!」

「一体何だよ騒々しい」

「それがね! すっごいの! カリム滞在中も少しずつ貯まってたアレがね、今日になっていっきにどばばばばばっと! 出ちゃったの!」

「えっ……なに? トイレのお話?」

「ばっ! ばっか! ナツくんばか! えっち! そうじゃないよ! リソースだよ、リソース! もう、凄い勢いで溜まっていくの!」

「ならそう言ってくれよな。溜まっただの出ちゃっただの言うから勘違いしただろ」

「ごめん……出ちゃったは言い間違いだったよ」


 なんでそんな言い間違いをしたんだ……。


 しかし、この様子だとメイサさんはきちんと約束を果たしてくれたようだな。

 今回もまた、ガムリ村の時と似たような物をオーダーしたからな。


 ミー君の姿を知っている人は勿論、知らない人だって良くわからんが感謝の気持ちをぶつけることだろう。


 なんたって、あの日メイサさんはこう言ったんだからな。


『英雄は目立つのが苦手らしいのでな。今日のところはこの素晴らしき施設の誕生に英雄的存在の功績が陰ながらあったという事だけ皆に伝えておこう!』


 温泉の立役者がどのような風貌の者か、一言も言っていなかったのだ。

 故に、あの施設にどーんとミー君の像が建てられ『カリムの湯 功績者』等とプレートが付けられていたら『ああ、これが領主様が仰っていた例の!』となるわけだよ。


 元々ガムリ村とは規模が段違いの街であり、今後はどんどん観光客が訪れるわけだ。

 そりゃもう、ガンガンとリソースが送り込まれてくるわけで、笑いが止まらないとはこの事だな。


「凄い、しゅごいよぉ……ナツくぅん……こんだけリソースがあったら……何でもしちゃうよおお」


「おい、ミー君。やめろ、その台詞はまずい。それに『何でもしちゃう』じゃなくて『なんでも出来ちゃう』だろ!」


「えへへ……余りにも凄くて間違えちゃった……でもほんと凄いよ。今時点で取れる物が結構有るもの。ねね、ナツくん。今夜さ、ゆっくりと……ね?」


「お、おう……そうだな。ゆっくりと……加護やギフトを選ぼうか」

「うん! きっとだよ!」


 まったく……まったくミー君は台詞回しが危険すぎるぜ。

 何かに興奮するとそれが出る気があるからな……俺じゃなかったら変な勘違いしてしまっていたところだぞ。


 しかし、ほんと長いようであっという間の2ヶ月間だったなあ。

 一期一会で終わらせてしまうにはもったいない人達と知り合えたし、結果としてはほんと良い依頼だったよ。


 さて……暫くはメルフで細々と依頼でもこなして、暖かくなったらまたどこか遠くに出かけてみようかね。


 ◆◇カリム冒険者ギルド◆◇


「本当に嵐の様な人達でしたね-」

「全くだ。ニーファ、俺はさ。最低でも10件の依頼を頼むっていっただろう?」


「ええ、ふっかけすぎたかなってビクビクしてましたね」

「うるせーやい。それをさ、初日に終わらせてしまったわけだよ。

 それについてはまあ、驚いたが、同時にもう依頼をうけてくれねーのかって残念にも思った」


「全然そんなことはありませんでしたね」

「ああ、ほぼ毎日同じペースで依頼を受けるんだもんよ。でよ、メルフの湯でナツとあった時聞いたんだよ『なんであんなに多くの依頼を受けてくれたんだ』って」


「それ聞いちゃうんですか」

「だって気になるだろ? そしたらよ『いやあ、最低でも10日間は依頼を受けろっていったじゃ無いですか。そんで、それ片付けてるうちに、なるべく多く消化した方が良いなって思ったんで、まあ、ついでですよついで』だってよ」


「10件を10日と勘違いした上に、自らの意思で受託を続けて下さってたんですか」

「ああ『ほっといたら自分たちが帰った後大変かな?って思ったんで』だとさ。まったく、とんだ英雄様だぜ」


「全くですね。そうだ、英雄様で思い出した。ジールさん、見ましたか? 礼の英雄様達を」

「ああ、見たときは噴き出しちまったよ。アレ作らせたのメイサ様だろ? 一体なんでまたあんな物を……」


「きっと、余程の感謝をしたんでしょうね。ふふ、ナツさん達、今度来たとき驚くでしょうねえ」

「ちげえねえや。あいつらが来たらよ、一緒に温泉いかねえとな」

「そうですね! 驚く姿は直に見ないと!」


 ◆◇メイサ◆◇


 今朝方『例の物が完成した』と報告を受け、早速各所に通達を出して除幕式の予定を立てた。


 設置に先立ってその姿を確認させて貰ったけれど、数枚の写し絵から作られたとは思えないほど、そのどれもが素晴らしい出来映えで、本人達がその場に立っているかのように思えた。


 ……実物と比べて随分と大きな身体になってしまっているけれど。


 白夜石で作られた石像は白くしっとりとしていて、妙に肉感的でドキドキしてしまった。

 ああ、結局どうしても最後にひと目見たくて見送りに行ってしまった日を思い出す。


 話せなくても良い、ただひと目見たくて行っただけだったのに、まさか向こうから声をかけて下さるなんて。


 残念ながら、ナツくんは私だとは気づいてくれなかったけれど、それでもあの日助けた者で有ると認識し、心配していたのだと言ってくれた。


 そんな事があったからだろうな。石像の依頼に力が入りすぎてしまったのは。


 ナツくんは『ミー君が壺を抱えている石像を作って欲しい。壺からはお湯か水が出るようにして、カリムの湯に飾って欲しい』なんて言っていたけれど、英雄は一人だけじゃ無いでしょう?


 勝手なことをしちゃったから、後でナツくんから怒られちゃうかも知れないけれど、私が発注したデザインはナツくんが望んだ物と少し違う物にしてもらった。


 まず、向かって左側には錬金釜を前に両手を上げた姿のエミルちゃん。頭の上にはモモちゃんがいて、彼女たちの後ろには多くの薬草が茂っている。


 そして、その隣にはナツくんが居て、右端にはミューラさんが立っている。

 その二人は大きな壺を仲良く掲げていて、そこから蕩々と流れるのはカリムの湯から汲み上げたお湯だ。


 流れたお湯は錬金釜の中に入り、そのまま排水溝に流れ落ちるようになっている。


 これをカリムの湯入り口前に飾るんだ。勿論『カリムを救いし者達』と書かれたプレートと共にね。


 彼らはあの遺跡を蘇らせただけでは無く、それ以前からカリムを救う活動を続けていた。たった2ヶ月間でどれだけの事をしてくれたのか、本当に感謝をしてもしきれない。


 だから、少しばかりお礼に色を付けすぎてしまったけれど……ナツくん、怒らないでね?

 貴方だって、多くの人達から感謝される権利はあるのだから。


 ふふ、ほんと、次にナツくん達がこの街に来る日が楽しみでならないわね。

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