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ナツくん、女神のミー君にさらわれて信仰心集めの旅へ  作者: 未白ひつじ
4章 ちょっとヘルプに行ってきます。
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66話 言い訳を押し通す

「ティールから『絶対なにかするから楽しみにしておけ』と言われてたが……ほんとにやらかしちまいやがって」


 苦笑いを浮かべながら頭をガシガシと掻いているのは冒険者ギルドカリム支部のギルドマスター、ジールさんである。


 ニーファさんによって連行……もとい、ギルドまで同行した我々は、いつものパターン通り上の部屋に案内され、待ち構えていたジールさんから事情聴取を受けているところなのである。


「で、何をどうやらかしたらアレがああなるんだ?」


 何をどうしたら……か。流石に『俺の【修復】が誤爆して直しちゃいました! てっへぺろーん☆』なんて言えるわけがない。


 ここはノリと勢いで適当にそれっぽく誤魔化すしかねーな。


「いやあ、なんか散策したら魔導炉がある部屋についちゃいまして。んでまた、うちのモモが、えっと妖精なんですけどね、奴が操作盤の上でやたらめったらと踊っちゃいまして……ああ、何やらパチパチと音を立ててボタンを押してましたわ。

 そのせいなんですかねえ……いきなり明かりが灯ったと思ったら再稼働してましてね? そしたら館内が見る間に綺麗になるわ、お湯が湧いてくるわでびっくりですよ」


「……そうかい。まあ、そういうことにしておいてやるが……」


あれ……なんだか腑に落ちない顔してるな? まあいいや、このまま押し通してしまえ。

 

「で、お湯が出てきた辺りからして、あれって多分古代の入浴施設ですよね?」


「ああ、そうだ。お前らがやらかす前から『あそこは入浴施設だったのだろう』と学者共は結論を出していた。そもそも街の入浴施設はあの手の遺物を元にして作られたものだからな」


「そういえばメルフの風呂屋でそういう説明を見ましたね。なんでも遺跡を元にして作られた物で有るーとかなんとか」


「ああ、湯を沸かし、清浄に保つ魔導具。それらをなんとか真似して作って実現しているのが今の風呂だ。

 街にでけえ風呂屋が出来たと思えば儲けもんだが……またいらねえ仕事が増えてしまった……」


「あの、俺が言うのもアレなんですが、あのダンジョンって学者の再調査が入るんですよね……?」


「ああ? まあ、そうなるな。その連絡やら手続きやら……頭が痛え事を思い出させやがって」


「まあまあ。で、ですね。その際、面白いことがわかるかも知れませんよ。

 そうですねえ……できれば薬効に詳しい薬師や錬金術師を同行させると良いかも知れません」


「……何か知ってるような口ぶりだが……まあいい。

 ダンジョンを再稼働させたことについては、不問とする……というか、むしろ評価されると思うが……前代未聞過ぎて何も言えねえ」


「あれ……怒られるかと思って来たのに」


「あのなあ……いや、いい。これ以上話してると頭痛が増すわ。今後の事はまた連絡するから……どうかそれまで大人しくしていてくれ……頼むから……な?」


 頭を抱え込んだジールさんに追い出されるようにして部屋から出された我々。

 何かやっちゃいました? っていうか、まあ、めっちゃやらかしてるからなんだけど……かなり頭を悩ませるような事をやっちゃったんだなあ……。


 流石に今回はちょっと反省ですわ。


「あーあ。入りたかったな、温泉」


 ギルドを出て家に向かう途中、ミー君が心底残念そうな顔をしてぼやく。こいつ……ジールさんのぐったりとした姿を見てそれを言うかよ。

 

「ミー君は……なんか凄いよな……」

「えっへっへ-」

「褒めたわけじゃねえんだが……まあさ、調査が終わったら入れるようになるんじゃないか?」

「そうかな? だったらいいなあ」


 まったく脳天気な女神様だぜ。エミルも苦笑いしてらあ。


 ……

 …


 そしてあれから1日経ち、2日が経ち、とうとう10日が経った。ここの所、毎朝『今日こそ温泉入れるよね』と確信に満ちた顔で言うのがミー君の日課になっていた。


 流石にそこまで速く調査が終わらないだろうと言ったのだけれども、それでもミー君は毎朝毎朝祈るようにして温泉を切望し続けていた。


 今日もまた日課である『まだかな』を済ませたミー君は、そろそろお掃除依頼に行こうかなと支度をしていたのだが……。


「ナツくんナツくん! 誰か来たよ! 温泉かな?」

「温泉はこねえだろ……わかった、俺が出てみるよ」

 

『はーい』と声をかけると、トンカラトントンとノックをしていた音が止み、知ってる声で呼びかけられた。


「おはようございますー。冒険者ギルドのニーファです。例の件でお迎えに上がりましたが、ご都合の方は大丈夫でしょうか」


「大丈夫だよ! 今行くよ! ね? ナツくん!」

「ったくミー君は……すいませんね、扉を開かず応対しちゃった感じになっちゃって……支度するので中で待っていて下さい」

「はい、お邪魔しますねー」


 ニーファさんにお茶を出し、少しの間寛いで貰っている間にエミルとモモに声をかけ、都合が良さそうであったので同行して貰うべく支度をするように伝えた。


 上着を着てロビーに戻ると、ミーファさんがほっこりとした顔でお茶とクッキーを楽しんでいるところだった。


「あ、頂いてますー。おいしいですね、これ」

「どうも。お口に合ったようで何よりです」

「え、これナツさんが作ったんですか?」

「見よう見まねですけどねー」


 おやおや、クッキーをご存じない? そういや街で見かけた事が無かったような気がするな。これは俺にも料理チート主人公の道が開けたか……


「私もたまにクッキーに挑戦してるんですが、ここまで上手に出来ないんですよねえ」


 そんな事は無かったぜ……。


 ミー君達の支度が終わるまでの間、簡単なコツを説明しつつ、レシピを渡すなどをしてミーファさんに忖度をする。

 ギルドの人と仲良くしておくに越した事は無いからな。出来るときに出来る事をする、簡単な事だが世渡りとはなかなかに難しいのだよ。


「ナツくーんお待たせー」

「あ! サクサクだ! なつくん、モモにもサクサクをおくれー!」

「こらこら、モモ! ちゃんと外套を羽織るのだ!」


 どやどやと、がやがやとしながら賑やかにパーティーメンバーが現れた。どうやらのんびりとしたティータイムはここまでのようだな。


「お待たせしました、ニーファさん」

「いえいえ、美味しいお茶とクッキーご馳走様でした。では行きましょうか」


 ギルドまでの道すがら、それとなくニーファさんから聞いたところによれば、ギルドに学者が来ていて、これから調査結果の報告がされるそうだ。


 俺達はその関係者として招集されたとの事だけれども……ミー君が片手に持っているお風呂セットを見て学者さんがどう思うか不安で仕方が無い。


「なあ、ミー君……どうしてお風呂セット持って来ちゃったんだい?」

「だって温泉に入れるんでしょ? 準備をするのは冒険者として当然の事だよ」

「誰も今日入れるとは言ってなかっただろ……」

「あっ……」


 さっきまでのテンションは何処へやら。途端としょんぼりするミー君。少々心苦しいが、先にがっかりして置いた方がきっと良いはずだぜ。

  

 最早実家のような安心感すら感じるギルド2階のお部屋に入ると、既に学者先生らしき若い男性が席に座っていて落ち着かない顔で何か資料をチェックしていた。


「あ、どうもー。俺達は例の遺跡がああなった現場に居合わせた冒険者パーティ『掃除屋』です。俺はナツ、こっちがミューラ、後エミルとモモです」


 必殺! 先手自己紹介! 説明しよう! 偉そうな顔をした連中には先手を打ってへこへこと自己紹介をしておくと面倒なトラブルが発生しないのだ!


「あ、ご丁寧にどうもー。僕はトーマ・シュライトと申します。カリムで素材の調査をしているしがない学者です。どうぞよろしくですよ」


 向こうも下から来ただと……! 

 見るからに神経質そうな顔をしているからてっきり面倒な人かと思ったが、以外とそうでもなかったな。


 ジールさんがなかなか来ねえので、そのままトーマ氏と雑談をしていたけれど、彼は錬金術ギルドと薬師ギルド両方に所属していて、それぞれから依頼を受けてカリム近郊の素材調査等をよく請け負って居るらしかった。


 今回ここに来たのもその縁があって、両ギルドからの要請で例の温泉の水質調査等に携わり、その代表として報告来たのだという。


「いやあ、ギルドの人達に報告を押しつけられちゃって……ははは」


 疲れた顔をして笑うトーマ氏。なんだかパシリ見たいに扱われてない? 大丈夫?


「彼らも最近ようやく身体を休められるようになりましたからねえ。まだ報告するくらいの体力が戻ってないのでしょう」


 俺の考えが伝わったのかどうか知らないけれど、両ギルドのフォローをするトーマ氏。

 そういやこの街、いろんなところがボロボロだったな……。

 エミルも言ってたっけ、薬師ギルドも錬金術師ギルドもギリギリの状況だったって。俺達が来なかったらどうなっていた事かって……。


 この後、間もなく始まるであろう報告会。俺の思惑通りに事が進めばきっとこの街を救う事になるであろう提案をすることが出来る。


 それが通れば……この街は救われるぞ!

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