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第35話 ピクニック

 ゴブリンサイコー! あ、どうもナツです。


 いやあ、ゴブくん最高ですわ。この世界に来て早々、我々に苦汁を飲まさせて下さったゴブくん達に軽くトラウマって勝手に苦手意識を持っていたけれど、大太刀(紅雀)で語ってみれば悪い奴じゃ無かったね。


 なんたって日に大銀貨5枚は軽く稼がせてくれるんだからたまらない。

 おかげでね、貧乏だった我々掃除屋の貯金が金貨3枚に手が届く所まで来ちゃったんだよな。


 もう職業ゴブスレで良いかなあって思い始めてたんだけど……そう上手くは行かねえわな。

 ここの所、ゴブの出が悪くって、昨日なんて大銀貨1枚と大銅貨数枚の稼ぎにしかならなかった。

 それでもまあ、薬草屋時代を考えれば凄まじい稼ぎではあるのだが、お耳が詰まった袋を持ってくと……ギルドの職員が悲しそうな顔をしてこちらを見るんだよ。


 ゴブリンの討伐をしてくれるのは嬉しい、けれど袋にみっちり詰まったお耳は辛い、そんな心の声が聞こえてくるかのような……。


 なので、そろそろゴブリンは辞めて次のに行こうかなあって思ってた所だったんだけれども、そんなタイミングでゴブのエンカウントがしょっぱくなったのは良い機会だったと思う。


 んでまあ、結構稼いだし? ここらでちょっと遊びにでも行こうかねと、今日はエミルも連れて森までピクニックに来ているわけで――


「ううむ、昔は現地調査など移動だけで時間の無駄だと思っていたが……やはり外で直に見て調べるのも良い物だなあ。長らく探索に出ていなかったが……この森は昔と変わらぬなあ」


「そうだよ。お外じゃ無いと知れない事は沢山あるんだからさ、エミルちゃんはもっとお外に出て色々見た方がいいよ」


「うむうむ。ミューラ殿、ナツ殿。今日は誘ってくれて有り難うな」


「良いって事よ。ま、今日は仕事じゃ無くてピクニックだ。適当に楽しもうぜ」


 今日の我々はレジャーで来ているので勿論結界をガッツリ張って貰っている。


 今の我々ならこの森の魔物程度、適当に鼻歌交じりで倒せちまうのでは無いかと思っては居るが、折角のピクニックを血生臭くするのは嫌だからな。


 安心安全のミー君バリアを使ってお散歩モードでお送りしますってなわけだ。


 しかし、結界を張ってるとほんと穏やかで良い森なんだよなあここ。

 

 ミー君の結界が弾くのはこちらに敵意を持つ害がある存在だけだ。

 なので、敵意が無い動物たちは普通に結界内に入り込めるわけで、先ほどから小鳥たちの可愛らしい歌声が聞こえてくるのだ。


『チチチチ……』

『ピュールルルルル……』


 はー、癒やされる。いいですよね、森林浴。


 決まった何かをするでも無く、思い立ったままに適当に花を摘んだり、蝶を追いかけたり……エミルが良くわからん土や植物を採取するのを手伝ったりしながら当てもなくだらだらと歩く。


 俺とミー君は鍛えているし、エミルも大精霊なので誰一人疲れたと音を上げること無く、どんどこ気ままに森を奥へ奥へと進んでいく。


 結界のおかげで戦闘に入ることも無いので、遊びながらとは言え普段よりハイペースでどんどん奥へ奥へと入り込んでしまったが……エミルが片手間にマッピングしてくれているので、迷うようなことは無い……と思う。


そろそろお昼ご飯にしようかなと、軽く泣き始めた腹の虫を気にしはじめたタイミングでミー君が良い活躍をしてくれた。

 

「ねね、ナツくん。あそこに広場があるよ。お弁当食べるのに良さそうじゃ無い?」

「お、ミー君でかした! 広場でかした!」

「えへへ、どうもどうも」


 ミー君が指さす先には、森の中にぽっかりと空いた妙に広い空間があった。

 木が密集する森の中だというのに、その広場は草原のようになっていて、草もまた伸び放題のぼうぼうというわけでは無く、背が低く揃えられているため非常に歩きやすい。

  

 明らかに誰かの手が入っているような場所がこんな盛りの奥深くにいきなり現れたのは少々怪しいが、ここは異世界だ。まあそう言う事もあるだろうと特に気にせず、我々は適当に真ん中まで移動し、シートをバサリと広げて腰を下ろしてお待ちかねの昼食タイムとなった。


「はー、お腹ペコペコだよナツくん!」

「うむ、我も空腹で辛い。最近、食が楽しくなってきたからな。余計に辛いぞ、ナツ殿」

「はいはい、今出してやるから待てって」


 普段は冒険者稼業に使う道具を詰め込んでいるザックだが、今日は違うぜ。

 中に入っているのは水筒と、お弁当箱とお弁当箱とお弁当箱だ。


 ふふふ……なんかさあ、ピクニックに行くぞってなったらさ、妙にテンションが上がってアホほど弁当を作ってしまったんだなこれが。


 と言っても、馬鹿みたいに同じ物を沢山作った訳じゃあ無いぞ。


「ほれ、ゆっくり食べるんだぞ」

「わあい!」

「わあい!」


 何故だかエミルまでミー君化しているが……まあ無理も無かろう。

 まず一つ目と蓋を開けた箱から現れたのは、エミルの新たな好物となったタマゴサンドをはじめとしたサンドイッチだからな。


 米が無いくせに、ふかふかの食パンが存在しているのを見たときは神に感謝したね。ミー君、有り難うって。


 ミー君は良くわからないという顔をしていたけど『どういたしまして?』って言ってたっけ。


 んで、試しに作ったマヨネーズでタマゴサンドを作って出したときのエミルと言ったら。一口食べた瞬間、くわっと目を見開いてさ。


『これは良い! 作業をしながらでも食えるという高効率食だというのに、なんだこの旨さは! ポーションを飲みながら作業をしたあの日々はなんだったのだ!』


なんてすっかりタマゴサンドの虜になってしまったんだ。


 だが、弁当はまだこれだけじゃ無いぞ!


「おかずもあるからなー、サンドイッチにがっついてお腹いっぱいにするなよ-」


 次に開けるはおかずの箱。中に入っているのは鶏肉……のような魔物肉の唐揚げと、ハンバーグ、ポテトサラダに卵焼き。たこさんウインナーにコロッケだ。


「わああい!! ナツくんありがとー!」

「ナツ殿ー! 我より早く起きてこんなにも素晴らしいおかずを支度して下さっていたのかー!」


 ミー君とエミルが美味い美味いとおかずを頬張る。

 美味そうに食う顔を見るとさ、やっぱ満たされるよなあ。


 ミー君は駄猫のような顔でもっちもっちと唐揚げを頬張り、エミルは愛らしい少女のような微笑みを浮かべながらポテサラを頬張る……てかエミルってほんとマヨ好きだよな。


 実はまだオヤツ箱があるのだが、それは後のお楽しみだな……流石にこれだけ食わせれば暫く入らないだろう。


 こうして3人仲良くわっしわしとお弁当を食べていたのだが……何やら凄まじく視線を感じる。


 ミー君バリアが張られているので、魔物に囲まれていると言う事は起きないはずだが……しかし、なんだろうなこの気配。


「って、わあ! な、なんだ!?」

「どうしたのナツくん……わー!?」

「む? おお、これはこれは……凄い数だな……」


 我々を取り囲む視線が……ひとつ、ふたつ、みっつ……沢山!

 その正体はなんと、妖精さん達であった。

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