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121話 まだ4時なんですけおー!

 マティア率いる冒険者達と合流してからさらに5日が経過した。

 

 残りを絞り出すかのように現れるヒッグ・ギッガやマンティコア、それと少量のゴッブやおっさん(オーク)達を狩り続けていたお陰で狩人や村の臨時戦闘員、それと冒険者達のレベルはメキメキと上昇し、狩人たちは70を越え、冒険者達は50を越えて何処かエルフ(ゴリラ)達を思い出させる恐ろしい戦力にまで育っていた。


 レベルの上限が何処まで有るのかは知らないが、アレだけ重そうに持っていた重魔鉄鋼の武器をブンブンと振り回している辺り、常人から見たら人間をやめているレベルに違いない。


 それでも俺が振る闇烏は振り回せないというのだから不思議なのだが。

 いやまあ、確かに連中が使ってる剣の3倍位は在るけどさあ、そんだけレベル上がったらいけるんじゃねえの? 俺をオーガ呼ばわりしたいとかそういう理由で持てないふりしてるだけなんじゃないの? 違う? 解せぬ……。


 ただ、これでもやはり気がかりな点はある。


 まず、圧倒的に魔術師の数が足りないことだ。

 魔術というものは、加護が消え失せた世界であっても存在し続けていて、現在に置いてもそれを使用する魔術師という職業は在る。


 当然冒険者にもそれを攻撃方法として使うものは居るのだが、魔術をそこまで昇華させるものはあまり多くない。


 100人いれば内80人くらいが生活魔術レベル止まり、攻撃魔術としてまで使えるようになるのは僅かなのだという。


 実のところ、本気で鍛え上げれば魔術的素養が在るものであれば誰でもある程度のレベルにまではいけるらしいのだが、魔術を覚えるためには根気と金、もしくは運が必要であるらしく……つまりは、師を雇える金を持っているか、無償で教えてくれる奇特な師と出会えるか……書を求め独学で根気よく学ぶか。


 何しろ実用レベルにまで極めるには何かとハードルが高いため、冒険者を志望するような連中はめんどくさがって早々に魔術の取得を諦め、肉体魔術(ぶつりこうげき)の道に進んでしまうのだ、ということである。


 これはかの大魔術師、エミル大先生が野営時の暇つぶしに語ってくれたことだ。

 元気かな、アイツら。


 そんな魔術師は今回の冒険者達の中に8名居た。これはかなり多いほうなのだと、マティアが威張っていっていたが、エミルが言うことを思い出せば正しいのだろうな。


 魔術師に期待することは対空だ。


 バリスタや弓でも勿論それは出来るし、バリスタはそれを期待して設置したのだ。しかし、魔術であれば炎で敵の顔を覆ったり、翼を凍結させて墜落させたりと……色々と応用が利くのではないかと思うのだ。


 なぜそこまで対空に拘るかって、スタンピードが続くうちに確実に来るだろうと思ってるからだよ……お空担当の連中がさ……あ、やべ! 今のフラグでした? 立ってないよね! 立ってない、たってない! よし!


 ごほん。


 そしてもう一つの気がかりはやはり回復周りだ。

 ミーくんのエリアヒールが在るし、それが届かぬ範囲でも錬金おばけ(ユーリ)が作ったポーションが人数分用意されているため、仲間達の生存率は上がるだろうと思うけれど……やっぱレイドにヒーラー居ねえとか、もやもやするよなあ。


 もっとも、そのヒーラーを誕生させるためには神に対する信仰心というものが必要となるわけで……神の概念が無い以上、それは叶わぬわけですよ。


 というわけで、このお話はおしまい! 無い物ねだりダメ、絶対!


……


 カンカンカンと音が鳴る。


 うるせえな、今何時だと思ってんだ! ああ、くそアラーム狂ってやがるな? AM4時じゃなくてPM4時にかけたんだろうが………はっ!?


 けたたましくなる鐘の音、こいつぁスマホのアラームなんかじゃねえ、敵襲だ!


「おい、ミー君起きたまえよ! 敵襲だよ、敵襲!」

「ううん? 三種のチーズ牛丼温玉乗せください……」

「俺は牛丼屋じゃねえ! 緊急時! 緊急時なの! 起きてええ!」


 眠い目をこするミーくんを引きずるように外に出ると、目を覚ました冒険者や狩人たちが西門へと向かって走っている姿が見えた。


「おう! ナツさん! 朝っぱらから来やがったぜ!」

「そのようだな! ったく勘弁してくれよ、まだ日が昇りかけた所じゃねえかよ!」


 ゆらゆらと太陽がゆっくりと顔を出し始めた時間、その光を遮る壁の内側はまだ薄暗く、ミーくんの手を引いて西門へ急いだ。


 門には既に多数の戦闘員達が集まっていて、俺の姿に気づいたガツが駆け寄り状況を説明してくれた。


「ナツさん、おいでなすったよ。ありゃ確かゴルニアスって奴だ……確かに森の深部に居るらしいたぁ聞いてたが、まさかあんなに出てくるとはよ」


 開け放たれ、戦闘準備が進められている門から外に出て状況確認をすると……ドスンドスンと嫌な地響きを立て、こちらに向かうワニさんの姿が……!


 いやアレワニなの? 地龍ってやつじゃね? つうかヒッグ・ギッガをワゴン車だって言ったけどさあ、ワニさんそれよりでけえんだけど!? 


 アメリカなんかを走ってるクソでけえトラックっていうか、特殊重機っていうか。

 兎に角やたらめったらクソでかいワニさんがひーふーみー……30体くらい? こちらにじわりじわりと向かってきているのが見えてしまった。


 それにちらりほらりとこれまでの魔物が混じっていて、なんつうか歩兵と装甲車を叩き潰していたら戦車を呼んで戻ってこられた、そんな感じだよ。


 これまでの襲撃と比べ数は少ねえけど、ありゃちょっとやべえ予感がするぜ。


「取り敢えず硬さを見るか。ガッツ、カタパルトだ」

「おうよナツさん。カタパルト隊! 放てェ!」


 ガッツの指示が村に響き渡り、ビュンビュンと風をきる音とともにカタパルトが作動する。

 放物線を描いて飛んでいくのは魔鉄鋼で作られた球だ。

 本当は重魔鉄鋼を使いたかったんだけど、素材が足らなかったし、足りたとしてもそれを射出できるカタパルトが作れねーとかで……。


『ナツさん、あんたが投げるわけじゃねえんだ。カタパルトが持たねえよ』


 なんて呆れ顔で言われちゃったよ。いやいや、俺人間だよ? カタパルトより頑丈だと思ってんじゃねえよ!


 ……案外行けるかもって思ってたのは内緒だが。


 と、ズズン、ズズンと弾着を伝える音が耳に届く。


「どうだー!?」


 ガツが見張りに尋ねると――


「なんて硬さだ! 奴ら耐えてやがるぜ! けど、一応は効果があるうだ!」

「うっし、じゃあ暫くの間続けて撃て! んでよ、ナツさん、後はどうすりゃ良い!?」

「あれでペチャンコになってくれたら良かったんだけどなあ……しょうがねえ、カタパルトの射程内の内はそれに任せて待機、その後は勿論……狩りの時間だぜえ!!!」

「「「「「うおおおおおおお!!!!」」」」」


 ひゃあこわい。この子たち戦闘民族化なんかなの? スキルシステムとかレベルシステムとかヤバい何かが入ってたりしない?


 なんて思っちゃうほどに、士気が高え。 

 

 それぞれが思い思いの武器を手に獰猛な笑みを浮かべ門前に並ぶ。

 カタパルトにより、()()の何体かは地面の染みになったようだが、ゴルニアス(わにさん)はものともせず、ズシンズシンとこちらに歩みを向けている。


「お前ら、準備は良いな!?」

「もちろんだぜ、ナツさん!」

「さっきから腕がうずうずしてらあ!」


 何とも頼もしい限りだぜ!


「うっし! そろそろお待ちかねの時間だぜ! 行くぞお前ら!」


 再び野太い雄たけびが響き渡る。随分とかてえ相手の様だが……こっちの連中も随分とヤベエ感じに育ってるもんでね。


 朝食はワニさんステーキと行かせてもらうぜ!


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