120話 後はトントン拍子に
マティアをなんとか言い包めて……もとい、きちっと納得していただいた俺は早速ミーくんを呼び、いつもの流れで冒険者達へ加護を与えた。
今回は後の事を考えて『近日公開予定の新技術を先行して試してもらう』との名目でスキルとレベルの実装をさせてもらった。
この様に説明をしておけば、今後冒険者ギルドを通じての加護の配信……もとい、付与が始動した際に『ああ、例のアレかあ。俺達はもう既にgff……』と、勝手に納得してもらえると言うか、万が一冒険者共の口が滑っても『なんかおめーら凄いんだな』で話が済んでしまうのである。多分!
広場に冒険者を集め、マティアに点呼をとってもらった後は目を閉じてひざまずいてもらう。
冒険者達はこの行動に何か意味があるのかと首をひねっていたが……なんとなくこうさせておいたほうが良いような予感がしたんだ。
言うても女神ミーくんから加護を貰うんですよ。神の概念を今後実装する予定があるのだから、今のうちからそういう物だと刷り込み……ではないけれど、祈れば良いことが起きるって考え方に誘導しておくのは悪いことじゃないだろう?
何かと祈るようになるかもしんねえし……ってやっぱ刷り込みだわこれ。
今回楽なのは既に覚醒済みの連中が居ることだな。俺が引率しなくとも、狩人達に細かい説明を任せられるし、パワーレベリングだってきっと出来ちまう。
覚醒者用の武器はステータス的にまだキツいだろうから、取り敢えずは通常の武器を装備してもらって、森に送り出してやった。
狩人たちが指導者であるということになんとも不満げな表情を浮かべる冒険者達だったが、ガツが剣で、カイが弓でそれぞれ腕前を披露してやったら静かになっていた。
当たり前だよなあ……従来の冒険者の中にショートソードで大木を切り倒すやつなんて居なかったろうし、矢で岩を砕く奴なんてのも居なかっただろうから。
「す、すげえ……まるでリトルオーガみたいだ……」
「うるせえ! 聞こえてんぞ! さっさと森に行け! オラァ!」
「「「ひ、ひぇええ!!」」」
「ば、馬鹿野郎! 俺らまでナツさんに怒られたじゃねえか!」
「やっぱここでもあれ言うと怒るんだな……」
「あたりめえだ! 言うなつってんだからいい加減覚えろ!」
逃げるように森に向かう狩人と冒険者達。まったく……ほんと腹立たしいぜ。何処まで行ってもオーガ呼ばわりされちまうんだからよお……。
いっそ、噂のオーガの国なんてところに行けば逆に心平穏に暮らせちまうのかも知れねえなあ。
……考えとこ。
……
…
冒険者達が村に来てから今日で10日が経過した。
今の所は前回同様、残党めいた魔物がちょろちょろと現れるだけで、大規模な襲撃は起きていない。
こんなに長いこと冒険者達を拘束していて良いのか、そもそもマティアお前ギルドの仕事は大丈夫なのかと一応は気を使って聞いてやったのだが。
「大丈夫にゃあ。どうせあたしなんて居てもいにゃくても一緒にゃあ……それにこれは『ククリ村襲撃の原因を探れ』という依頼で、終了までに1ヶ月を想定した長期依頼にゃ。
10日やそこらじゃなんでもないにゃ」
すっかり猫キャラを隠さなくなったマティアは気怠げにそう言ってニャハハと笑う。
居ても居なくても……と言うのは聞いててなんだか少しだけ可愛そうになったけれど、話を聞いていて気になることがあった。
「ところで……長期依頼だって事だが、これだけの冒険者を1ヶ月も拘束したらよお……依頼料が結構ヤバい感じになると思うんだが、それ、誰が払うの……? まさか俺じゃねえよな?」
「流石にそれはないにゃ……いやあ、あたしも良くわからにゃいんだけどにゃあ? どうもギルドが持ってくれるらしいんにゃ」
「ギルドが? なんでまたそんな……言うのも何だが、ククリ村ってそこまで重要視するような村でもないだろう?」
「そうなのにゃ。だから良くわからにゃいんにゃあ……」
マティアの雑な説明をまとめると……あの日、俺達が村に向かった後、テッツを宿に託したマティアがギルドに戻ると、いつになく冒険者達がワラワラと集まっていて、それに合わせるように職員たちも慌ただしく動き回っていたのだという。
まったく忙しい連中だにゃと、マティアはあくびをしながら席につこうとしたらしいのだが、そこでギルドマスターから呼び出しを受けてしまった。
突然の呼び出しに、目を白黒とさせ、全身から嫌な汗を流しながら例のお部屋に呼び出されたマティアは『冒険者を率いてククリへ行くように』と有無を言わさず命じられたそうな。
きっとギルマスはマティアが選出された理由をきちんと述べたのだろうが、マティアはマティアなのでそれは耳に入らず、こうして俺に説明をする際に肝心なその部分が抜け落ちてしまっているに違いない。
『きっとあたしがいつも暇そうにしているからギルドに居なくても良い奴と判断されたんにゃ』
なんて言ってたからな。
そんなネコちゃんでも一応は詳細を尋ねる知能はあったようで、それを尋ねてみれば――
『これは冒険者ギルドリエノ支部からの緊急依頼である。ゴールド1パーティ、シルバー6パーティを招集している。翌朝速やかに現地へ迎って出立せよ』
流石のマティアでもそれを『いやにゃ!』と断ることが出来ず。
フラフラと部屋を後にすると、ホールに集まる冒険者達に『じゃ、また明日にゃ』と言い残し……そのまま帰宅してしまったらしい。
「いやあ、うっかりしてたにゃあ。ショックでびっくりして帰っちゃったけど、翌日同僚たちから滅茶苦茶怒られたにゃ」
そらそうだ。勝手に早退したようなもんなのだろうからな……。
んで、後は同行するというテッツ少年を連れ、共に村まで急いだらしい。
「まさか7日も掛かるとは思ってなかったにゃあ……。少年はピンピンしていて、急ごう急ごうと言うんだけど、うちらの馬が持たないからにゃあ」
スキル持ちのテッツが乗る馬は高効率で移動が可能だからな。スキルを持たない冒険者達と同行するとそんな風になってしまうわけだ。
「一人で向かおうとするのを『道案内が居ないと困るにゃ』となんとか宥めて来たんだけど……ついたら戦闘にゃ? もう少し急げばよかったと思ったにゃあ……ごめんにゃ」
「だからそれについては良いって言っただろ。人手が足りなくて困ってたんだ、何よりありがたかったよ」
ほんとありがたいよ。
パワーレベリングのお陰で、冒険者達は見違えるほどに強くなり、村の防具職人ハルコさん達が作った魔鉄鋼の防具を身に着け、さらにダンバ氏作成の重魔鉄鋼製の武器を握ってもそれなりに動けるようになっている。
重魔鉄鋼って素材は俺にゃあ丁度いいくらいの重さなんだけれども、強まった狩人達でも闇烏くらいデカくなると満足に振り回せねえらしいからな。
それでも片手剣程度なら余裕で振れるようになったんだ、十分じゃないか。
これらの装備なら大型種にも十分対応出来る。
それに――いつの間にかアーツめいた物まで扱えるようになってる狩人が居たからな。
今日まで俺にその手のものが芽生えた気配が無いため、それはそれで別口の加護なのではって思ってたんだが……どうもセンスの問題かも知れねえな……ちくしょう。
まあいいさ。
こんだけ強まれば次もなんとか防衛出来る!
これは予感でしか無いけれど、次を凌げばこの大襲撃は終わりを迎える気がするんだ。
次が終わったら森の最深部にいき原因を潰す、そこまでやればもうこの村やリエノが危機に瀕することはなかろうし、回収される素材も結構ヤバいことになるだろうからな……。
ぐふふ……村と街は危機から脱し、我々は多額の旅費を手に入れる……これぞwinwinってやつですわ。




