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115話 救助活動

 マティアの報告を受け、慌ててギルドに舞い戻ると、そこには青い顔でへたり込んでいるテッツの姿があった。


「ミー君!」

「うん!」


 すぐさま駆け寄ったミー君が回復術をかけると、直ぐにその顔色は良くなり、テッツはハっとした顔で辺りを見渡した。


 目の前に立っている我々の存在に気が付くと、安心したのか目に涙を浮かべながら状況を語り始めた。


「ナツさん! ミューラさん! 大変なんだよ! 村が、村が!」

「ああ、マティアに聞いた。なあ、村に一体何が起こった? 一人なのか? ガツか誰かついてきていないのか?」

「ここまでは俺一人で来たんだよ……ガツさん達は魔物から村を護らなきゃ無いから……」

「魔物から村を……」


 テッツ少年によれば、突如として現れた魔物の群れが村に差し迫り、狩人達が防衛に向かったのだという。


 その際、ガツから『ナツさん達を呼んできてくれ! 俺達では多分持たねえ!』と、伝言役を頼まれたテッツはここまで一人で馬を飛ばしてやってきたらしい。


 一体なぜ、テッツ一人で来たのかと言えば、彼には【弓術】のほか、【馬術】と【気配察知】スキルが生えており、誰よりも速く、長く馬を駆って移動が出来、また魔物の気配を探れる事から危険回避に優れていると判断され、連絡役として確実性が高い彼に白羽の矢が立ったのだという。


「俺……一緒に戦うにしても足手まといになるからさ、こうやって役に立てたのが嬉しいよ……へへ……」

   

「テッツ!」

「大丈夫だよ、ナツ君。テッツくん、疲れて寝ちゃったみたい」


 ここまで最低限の休息しかとらずに来たのだろう、役目を果たした少年は満足げな表情を浮かべてすやすやと眠りについた。


 しかし馬の脚でここまでどれだけかかったのだろうか? 村が襲われてからどのくらい時間が経ってしまったのだろうか。


 こうしちゃいられねえ……あの村が滅んじまうなんて考えたくねえぞ!


「マティア!」

「にゃっ!?」

「テッツを、この少年を頼む!」

「それはわかったけど……あんた達は!?」

「助けを求めに来てくれたんだ、行かねえわけにはいかないだろ! なあ、ミー君!」

「うん! マティアさん、テッツくんをお願いね。私とミー君はククリ村に向かうよ」


 ひと月分先払いをしてある宿の事をマティアに告げ、そこにテッツを泊めるよう託し、我々は急ぎギルドを後にして村へ向かって駆け出した。


 背後からマティアが何か言っている声が聞こえるが……わりいな、今は少しの時間も惜しい。


 門に立つピッコさんに『緊急事態なので急ぎます!』と大声で伝え、そのまま止まらず門を抜け、街道をひたすらに走った。


 時折ミー君にヒールをかけてもらいながら常に全力疾走。

 駆けて、駆けて、駆け抜けて。日が暮れて、夜が明けてまた日が暮れて。


 丸二日走り続けたところでミー君が酷い顔をしているのに気づき、慌てて走るのをやめた。


「わりい、ミー君。気遣ってやれなかった……」

「ううん、いいんだよ、ナツ君。私だって急がなきゃって思ったから……でもごめん、実はちょっとだけ辛いんだ。少しだけ休ませておくれよ」

「ああ、どうせこのまま村に行っても足手まといになっちまう。実は俺も割と限界でな……ちょうどいい、あそこの木陰で今日は寝ようか」

「うんうん、そうだね。あ、ポケットにヒッグ・ホッグのジャーキーが入っているんだよ。

 飲み物はお水しかないけど……それでご飯にしよ?」

「ああそうだな。飲まず食わず寝ずでここまで来ちまったからな……ホントわりい、ミー君」

「言いっこ無しだよ、ナツ君」


 ……

 …


 パチリと目が覚めた。胸元に伝わる柔らかで暖かな感触、視線を落とすとミー君がぴったりくっついてスウスウと静かな寝息を立てていて……思わず飛び跳ねそうになっちまったが……ああそうか。


 昨夜ここで野営をして……夜は肌寒かったからなあ。どちらからともなく、くっついて寝ちまったんだろう……と、分析をする事によって気分を落ち着かせ、どうにかミー君を起こさずに済んだ。


 スマホを見れば時刻は朝4時だ。あと1時間くらいはゆっくりさせてやろう。

 今日でリエノを出てから3日目……テッツが村を経ってから何日経ったのだろうか。


 村はいまだ健在だろうか? いや、そのはずだ。村を護るのは頼りねえ冒険者なんかじゃねえ。ゴールドクラスなんざ軽く超越した化け物みてえな狩人達なんだ。


 きっと今でも頑張っていてくれるはずだ。


 時刻を見たついでにスマホで現在地を確認すると……村まで結構近い所まで来ていたようだ。

 この分なら我々の脚で1時間も走れば様子がわかるところまでは行けるな。


 ……

 …


「ん……ううん……ん……? わひゃ!? ナ、ナツ君!?」

「お、起きたか。おはよう、ミー君」

「うん……おはよ……あの、わたし、そのナツ君に……」

「あ、ああ。さむ、寒かったからな。寝てるうちに……そ、そうなったんだろ」

「そ、そうだね! えへへ、おかげであったかあったかに寝れたよ、ありがとね、ナツ君」

「そりゃお互い様さ」

「えへへ」


 なんて甘酸っぱい空気を作ってる場合じゃねえ。


「さて、起きて早々悪いけど、30分後にここを経つよ」

「うん、ごめんねナツ君。ゆっくり寝ちゃってさ」

「いいんだよ、気にすんなって」


 昨日と同じく、ジャーキーと水で軽く腹を満たし、我々は再び大地を蹴った。

 駆けて駈けて翔けぬけて。


 小一時間程走ったところで轟音が耳に届く。


 何かが破壊されるような音、背中に嫌な汗が流れたが、かまわず風を追い抜く勢いで森を駆け抜けた。


 すると……


「クソッ! 防壁がやられちまってる!」

「急ごう、ナツ君!」


 以前見た時とは比べ物にならぬ程に頑丈そうな防壁が村を囲っていたが、それは既に何か所か破られていて、内部にどんどん魔物が侵入していた。


 破損個所から村に飛び込むと、ゴブとオークの群れがワラワラと村を荒らしまわっている。


「クソ共が! なにしてくれてんだよ!」


 闇烏を振るい、獲物を破裂させながら村人の姿を探す。素朴ながらも美しかった村の家々は無残にも破壊され無残な有様だ。


「せっかく皆で立派にしたのに! 台無しじゃないかー!」


 ミー君も負けじと氷の矢を放ち、ゴブやオークをハチの巣にする。

 二人で魔物を殲滅しながら村の奥に向かうと何やら金属音が耳に入った。


 急ぎそちらに向かうと、そこには剣を片手にオークと立ち回るガツの姿があった。


「ガツ! 無事だったか!」

「ナツ……さんっ……か!」


 俺の呼びかけに答えながらも視線は決してオークから外さず、俺の声で隙が出来たオークのふところに飛び込むと、剣を一閃させ、オークの首を斬り飛ばしてしまった。


「やるようになったじゃねえの」

「ははっ約束だからな……いや、この有様だから護れたとは言えねえが」

「ほかの連中はどうした?」

「ああ、狩人達なら多分平気だ。戦えねえ連中は集会場に避難してるよ」

「ミー君、非戦闘員の保護を頼む。ついでに村を覆うくらいの結界を張ってくれ。とりあえず無理やり外に追い出してやろうぜ」

「そう言えばその手があったね! うん、わかった! やっとくよ」


 ……ぶっちゃけ俺も忘れてたんだよね。

 結界って身を守るには便利だけど、魔物が来なくなっちゃうからな。

 ここ最近の我々は魔物がコロンに見えていたわけで、転がり込むコロンをはじくとは何事かと言わんばかりに結界を封印しちゃってたんだ。


 けれど、今は稼ぎとかそういう事を言ってる場合じゃない。

 まずは村の安全を確保して、弾かれた残党を狩らないとな!


「おおい! ガツ! 一体なにが起きてる!? 魔物共が何かに押されるように村の外に出て行っちまったぞ!」


「おう、カイじゃねえか! 心配すんな、ミー君の結界に押し出されてんだよ」

「結界だあ? って、ナツさんじゃねえか! そうか、テッツはやってくれたか!」

「とりあえずこれでしばらく村の中は安全だ。詳しい話を聞きてえし、これからの打ち合わせもある、集会場で待ってるから二人は他の連中も連れてきてくれ」

「ああ、わかったよ!」


 これで村の脅威は去った……とは言えないからな。

 今は結界に守られとりあえず安置になっているってだけ。ミー君の結界が無くなったらまた直ぐに襲われちまうだろうさ。


 まずは今後の流れを相談して……取りあえず目先に迫る脅威だけでも何とかしねえとな。


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