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105話 スキルを得たいかー!? 

 狩人のガツやカイ等に『今日の夕方おもしれえことやるから物作りが達者な連中に広場に来るよう言っとけや』と言ったところ、はじめは首をかしげていたけれど『お前達のように……一つ上の段階に連れてってやるよ……』と、耳元でそれっぽく囁いたところ、俺が何を企んでいるのか察したようで。


 今日は午前で上がるぞーと俺に言われてしょんぼりしていた顔が急に嬉しそうになるのだから現金なもんだ。


 取りあえず一度解散じゃいと、村の入り口で別れた後はお昼を食べに一度おうちに。


 帰宅すると『おかえりー』と、のほほんとしたミー君の声が真っ先に飛び込み、同時に鼻腔をくすぐる旨そうな香りが全身を包み込んだ。


 旨そうな……香り? おかしいな。ミー君はそこまで料理が上手くはない。

 メシマズ属性とまではいかないが、料理と言える者は卵焼きや簡単なスープくらいしか作れない筈だ。


 じゃあこの香りはいったいなんじゃらほい? と、見てみれば、ミー君がにっこにこ笑顔でテーブルに乗ったお鍋から木皿に何か煮込み的な物を盛り付けている。


 ツヤツヤとしたお肉はとっても美味そうで、いよいよもってこの出処がミーくんじゃないのは明らかだ。


「やあ、ミー君美味そうな煮込みだね。これは一体どうしたんだい?」


 なんて訪ねてみれば。


「えへへ。これね、マリリさんと一緒に作ったんだよ」

「ミー君が作ったのかい? へえ、やるじゃないかミー君。とっても美味そうだ」


 いやいやほんとにやるじゃないか。少しやらかしグセが在るミー君にここまでしっかりとした料理を作らせるとは……。


「ねね、冷めちゃう前に食べてみてよ。ほっぺたがおちるぞう」

「おう! もうお腹ぺっこぺこでね。じゃあ早速頂くとしよう」


 なんだかちょっぴり古典的なやりとりをして、ほんの少しだけ恐る恐る口にしてみれば――


「ンマーイ!」

「でしょでしょ! 私もびっくり! ちゃんと教わるとこんなに上手にできるんだね」


 これは昨日ゴブのついでに狩ったヒッグ・ホッグのお肉かな。何か爽やかな、レモンのような香りがする香草と塩、それと何か甘みを出すような物で煮込まれたお肉はぷるっぷるのふわっふわで。


 噛みしめればじゅんわりと旨みたっぷりの肉汁が甘辛いスープと絡み合って口内に広がって……これはあかんわ。ごはん欲しくなる。


「いやほんとすげえ美味しいぞこれ。でかした! ミー君!」

「えっへっへーそれほどでもあるよね? ね?」

「うむ、これは本気で美味いわ。ありがとなミー君。今日の疲れが全部ぶっ飛んだよ」

「嬉しいな、そこまで言ってくれると! ねね、それ食べたら今日はもう寝ちゃおっか? きっと幸せな夢を見られるよー」

「そうだな、ぐっすりと安眠できそうだ――ってだめだよミー君! 今日の夕方はアレやるんだから!」

「あっ! そうだった。えへへ、忘れていたよ」


 危ない危ない! この料理やべえな!? 何か変なものでも入ってんじゃないの? 

 うまいのは確かだけど、リラックス効果が半端ないっていうか、癒やされ効果?

 よくわかんねえけど、ミー君が作ったから……なのかな?


 ……鑑定


=========================================

 名前:ヒッグ・ホッグのとろとろ煮込み

 

 ミーちゃんが村の女性マリリと共に愛情たっぷり込めて作った逸品。

 なぜ私がそれを口にできないのか悔しさと妬ましさしかないけれど、ナツくんに免じて許してあげるわ。


 効果は癒やし以外特に無いけれど、マリリという女性に調理スキルが芽生えたら……素敵なことが起こるかもね?


========================================


 前の妙なテンションの鑑定もウザかったけれど、このいよいよ隠す気がなくなった感溢れるテキストも中々にうぜえな。


 前みたいに直接脳内に――ッって感じじゃないから、まだ精神衛生上好ましいけれども、これはこれでなかなかイライラっとするぜ。


 ていうか、気になるのは最後の行だ。調理スキルが芽生えたらって。

 明らかにミー君のお姉さんが我々の行動を監視しているのはまあいいとして、よくはねえけどいいとして。


 調理スキルに飯をうまく作れる以上の秘密があったりするんだろうか。

 なんだかわからんが、マリリさんとやらにも可能性を感じる。


 これは試すほかあるまいな。


「ミー君。マリリさんにもスキルを付与してみたいんだけどいいかい?」

「うーん? そうだね、いいんじゃないかな。マリリさんね、料理が得意で独身の男の人達に炊き出しをしてあげたりしてるんだってさ。スキルが身についたら作業が楽になるもんね、きっと喜んでくれるよ」


 うっ……ミー君の笑顔が眩しい。 

 俺はこう、何か便利な特殊効果が芽生えるのではという、実験的な意味合いで言ったんだけども、そんな顔されると謎の罪悪感に苛まされてしまうぜ。


 ……しかし、スキルの可能性か。


 これはちょっと予定より多めに声をかけてみてもいいかも知れないな。


……


 そんなわけで迎えました夕方! 広場には人、人、人! とても多くのワンワン達がこの場を埋め尽くさんばかりに集っています。


 ……どうしてこうなった。


 この村――ククリ村の人口は凡そ120人。

 この広場に集まっている人の数は凡そ120人。


 全員来ちゃったのはいい、しょうがない。娯楽が少ない村だからね? 何か面白そうなことがアレばわわわっと集まっちゃうのはしょうがない。エルフ共もそうだったし。


 けれど――

 

 うち、加護を与える人の数は凡そ70人(狩人達10人除く)


 ――めっちゃ多くね?


 ミー君が声をかけたのはせいぜい2~3人で、俺が個人的に声をかけた分が5人、暇そうにしていた大工さん達や川で投網を投げてたおっちゃんくらいのもんだ。


 だから残りは狩人達のスカウトって事になるんだが……あいつら11人いるからな。数の暴力でスカウト人数が膨れ上がっちまったって言うか、これ村の大人殆どじゃんな。


 耳をすませば聞こえてくるのは『俺達にも村を護る力が得られるらしい』という希望に満ちた声だ。


 狭い村だ、昨日の狩りで狩人達が大幅に強化された話は全体に広まったはずさ。

 となれば我々がそういう力を与えてくれるらしいとなれば、ピュアピュアなわんわんたちだもの、喜んで飛びついてくるのは仕方のないお話。


 ただ単に力をつけたいという、ゴリラ感あふれるエルフ共とは違って彼らには身近な恐怖、森からにじり寄る強力な魔物の存在があるからね。


 力がもらえるとなりゃあ、二つ返事で頷くわけだよ。


 ま、まあ……村全体がスキル持ちと言う特別な状態も? 今だけだし。いずれ世界中に広まる事だし。

 

『えっ!? うちの村だとじいちゃんもばあちゃんもスキル持ちだったんだけど?』


 みたいなことを言いながら村の常識で無双をする未来の主人公なんてもんは現れることが無いはず。


 ……無いはず。


 だからこれも一つのテストケースとして……割り切ってやるしかねえな! 

 今更『20人まででーす』なんて言ったら暴動が起きちまうわ。


 となれば、まずはざわざわタイムに突入しているこの場を収めようじゃないか。


「ククリ村の諸君! 新たな力、スキルを得たいかー!?」


「「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」」


 なんだかクイズ大会でも始まりそうな雰囲気になってまいりましたが……まずは簡単な説明からはいらせていただきますかね。


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