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104話 よっしゃもう一段階アゲちゃうかあ?

 なんだかんだでめっちゃ疲れてクッタクタになっておうちの扉を開いてみれば、そこにはニッコニコ笑顔を浮かべたミー君が待っていた。


「お帰りナツ君。なんだかとってもお疲れ様みたいだね? えーい!」


 ごはんにする? お風呂にする? それとも……なんて質問無しで唐突に飛んでくる回復術……いいですよね。


 わけわからん? うるさいですね……いいんだよ。こういうのでいいんだよ。

 テンプレのやり取りもそりゃまあ楽しいし癒されるけれど、こういう罪が無い単純な優しさってのが現代人には一番効くんだよ。


 みろ、実際疲れがスゥっと溶けるように消えていくわ――ってまあ、回復術かけてもらったんだからそうなんだけど。しかも女神さまの奴だからな、HPMPSPなんもかんもぜーんぶ回復しちゃうやべー奴だ。


 元気にならねーわけがねえっつうの。


「ありがと、ミー君。こっちはボチボチだったけれど、そっちはどうだったんだい?」


 なんて聞いた瞬間のミー君の顔と来たら。ぱあっと花が咲く様な表情っていうの?

 もしもミー君にしっぽがあったならばブンブンと高速で振られてる感じですわ。


 うん、この話題、めっちゃ振ってほしかったんだねえ。


 可愛いだろう? この駄犬……もとい、駄猫。うちの子なんですわ。


「あのね! 聞いて聞いてー!」


 それからのミー君と来たら、止まらねーんだ。今日何があったか、あれやこれやとどうでもいいお話まで織り交ぜてワーッと語るんだ。


 支離滅裂な内容だったけれども、全然苦痛じゃないんだよなこれが。なんつうの? 俺に聞かせたくて仕方がないんだよーって一生懸命な感じがめっちゃ伝わってくるっつうか……なんだこのかわいい生き物は。


「それでね、ククリ村の大事な水源地の泉を復活させたんだ」


 なんてこった……さすがミー君だぜ……。


 俺がなんとなく聞かないでいた村の名前をあっさり聞いて知識として吸収していやがる。


 うん? ミー君が凄いのはそこじゃないだろ、泉の浄化だろだって? いいんだよ。ミー君が浄化に優れてるのはもう知り尽くしていることだし、そんな事より、ミー君がきちんと情報を仕入れてきているって事実の方が凄いんだよ。


 この子しっかりしている様に見えてどっか抜けてますからね? こうやってきちんと必要な情報を仕入れてきているミー君は手放しでほめたくなるんだよ。


「ヨーシヨシヨシ! よくやったぞミー君! そうか、水源地の復旧を果たしたか!」

「そうなんです! えっへっへ。頑張ったよね? 私」

「ああ、頑張ったとも! こっちもミー君のお陰でなんとかなったし、ほんと良い女神さまだよ、ミー君は」

「えへへー!」


 なんてちょっぴり甘酸っぱい感じのやりとりもそこそこにお仕事のお話です。


 今日はテンション上がりまくった狩人達と夕方まで頑張っちゃったでしょう? それでちょーっと問題がでちゃったんだよねえ。 


 固い固いゴブゴブを斬っても剣が折れず、矢じりも痛まず……みたいな事をいったよな、ありゃ気のせいでしたわ。


 いや、気のせいってわけじゃないんだ。確かに技術が武器を補うという現象は起きていてね。直ぐにはポッキリ行ったり砕けたりって事はなかったんだけど、言うても普通の武器ですぜ? 戦っているうち、どんどこ切れ味が落ちていったんだ。


 最後あたりになるとさ、流石に限界を迎えてね。


 それこそパキーンと折れちまったり、矢も壊れてしまったりと、明らかに武器が突いてこられていないのが明らかになっちまって、ああこりゃ武器もパワーアップしなきゃいけねえなとおもったわけなのだけれども。


『なあ、村に武器を打てるような人はいるのか? 今のお前らにゃもっと頑丈な武器を使わせたいし、それが無理でも修理くらいは出来ないと武器が無くなっちまうぞこりゃ』


 なんて聞いてみた所……。


『村は街から遠いだろ? なんでも自分たちでやらねえと困るもんで、流れの鍛冶師から習って打てるようになった奴は居るぞ。ただ、打てるってだけで立派なもんを作れるわけじゃねえが……』


 みたいな反応で。


 詳しく聞けば、鍛冶を担っているのは50に差し掛かろうという脂がのったワンワンで、かれこれ20年くらいは槌を振っているらしい。


 他にも裁縫好きが転じて防具を作っているおばちゃんや、色々と拗らせて錬金術で薬師の真似事をしているお嬢さん等々……もうちょっと()()すれば良き力になってくれそうな人たちの存在が明らかになったわけですよ。


「というわけでだね、ミー君」

「どうしたんだい? 突然まじめな顔をして……ま、まさか……だ、だめだよナツ君! ふ、二人きりでチャンスと言えばチャンスだけど……こんな状況でそんな……」

「てえい!」

「痛あっ!?」

「なんだか久々のノリにちょっぴり楽しくなりかけたけど、そうじゃない、そうじゃないんだよミー君」

「うう……いつになくまじめな顔するんだもん、しょうがないじゃんか……それで、一体何なの?」


「ほら、我々強制転移喰らっただろう? だから結局ユグドラールでは試せなかった事なのだがね、純粋な非戦闘員、つまりは街で生産活動をしている人達にも加護を与えてみたいなと思ったわけだよ」


「ふむー。ナツ君が言うのだから、私は大丈夫だと思うんだけど、一応理由を聞いてもいいかな?」


 おっと流石のミー君も素直に『うん』とは言わなかったか。

 これまでの流れから行くと、当分の間はスキルやレベルと言った加護は魔物と対峙する戦闘員、冒険者なり狩人なりの連中にのみ与えていくといった具合だったからな。


 ここに来てあっさりそれを破って生産職にまで与えるとなれば、ミー君だって理由が気になる事だろうさ。


「単純な話なんだけどさ、ユグドラールもそりゃ田舎だったけれど、ここと比べたら大きな街だったじゃないか」

「そうだね。お店も色々あったし、人もたくさん住んでいたよね」

「この村で新たに強い武器や防具、薬品を手に入れようとしたらさ、村の人が頑張って作るか、行商人を待つか、街まで買いに行くかしなければいけないわけだ」

「村の人が強力な装備を作るのは……きっと大変だから、ある程度以上の物は街で買う必要があるんだろうね。お金は……魔獣素材を売ればいいのかもしれないけど、街は結構遠いみたいだし、行商人もいつ来るかわからないんだっけ」


「うむ。例え一度は調達できたとしても、壊れちゃったらまた大変だろう?」

「そうだね、また買いに行かなきゃ無いだろうし、その間は村の防御力が下がっちゃうね」

「そこで村の職人さん達にスキルを与えてさ、今より強力な装備を作れるようにしたらどうかって思ったんだ」

「なるほどね! 良いんじゃないかな、ユグドラールではテスト出来なかったことだしさ、これはいい機会かもしれないね」


 パアっと明るい顔で頷くミー君。そうだろう、そうだろう。いいテストになるだろう?

 外部への影響が薄いこの場所でならば、そう妙な問題に発展することは無いだろうし。


 ホントはこれユグドラールでやりたかったんだけど、唐突に飛ばされてしまったからな。

 この村は良い場所だと思うんだよな。


「というわけで善は急げだ。明日、狩りに出た時にでも狩人達に頼んでおくからさ、ミー君も誰か良さそうな人が居たら声をかけておいてくれよ。俺も明日は午前で切り上げるからさ」

「うんうん、わかったよ。集合時間とかはどうすればいい?」

「そうだね、急だけど速いほうが良い。明日の夕方にでも広場に人集めてぱあっとやっちゃおうか」

「いいねいいね。ユグドラールみたいに……はフワちゃん居ないから無理だけど、多くの人に加護の力をそれとなく認知してもらうのは今後のために良いからね、そうしよう」


 何人が賛同してくれるかはわからないけど、少なくとも数人は来てくれるだろうさ。

 そうなりゃあ、この村もちったぁ安心して暮らせるようになる筈。

 頼むぜ、狩人達、上手く営業してくれよなー。


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