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102話 すげーだろ? これが新たな力なんだぜ! 

 てなわけで森です。


 レベルシステム及びスキルシステム、ついでにそれらを閲覧出来るステータスシステムを実装したワンワン達を連れ、俺は森にやってきました。


 うん、ミー君は村のお掃除に行ったよ。一緒にどうだいと誘っては見たけれど、どうやらミー君はミー君で、村の女性達と仲良くなってるみたいでね。


 今日も一緒におそうじするんだーっと、嬉しそうに手を振って行きましたとも。

 寂しくは無いぞ、寂しくは無いのだけれども、途端にこうむさ苦しくなっちまったパーティはあれですわ。


 これまでずっとハーレムパーティだったでしょう? 

 実際にハーレム状態だったかどうかはまあ、置いといて俺以外の全員が女性だったわけじゃん。チーおじ? あれはいいんだよ。俺の最後の記憶はユグドラールなんだから。


 だもんでこう、むさ苦しくてむさ苦しくてしかたねーんだけれども……まあなんつか黒一点というのもなかなかに疲れる事がありましたからな。


 これはこれで楽しくないと言えば嘘になる。


「どうだお前ら。何か身体に変化は感じるか?」


「そう言われてみれば、何時もより弓が扱いやすいような気がするな」

「カイは弓術スキルが3の状態で生えてるからな。以前より大分手に馴染むはずだぜ」


「俺のこれは剣スキルのお陰なのか? やたらとなめらかに身体が動くんだよ」

「ああ、そうだな。ガツは剣術が2だ。そこらの冒険者より上手く立ち回れるだろうさ」


「けれどよ、言うほど力が湧いてくるとかそういう感じはしねえぞ?」

「だよな。もっとこう、身体が軽くなるとか、力が漲るとかそういう感じかと思ったんだけどよ」


「まあまあ焦るなって。それはスキルじゃ無くてレベルの方だ。経験や鍛錬を積む事によって伸びる力だから、今現在Lv1のお前らがなんも変わらねえのは当たり前の事だよ――と、丁度良いのが出てきたな。おまえら、かかれ!」


 現れたのはゴブゴブ1体。

 と言ってもただのゴブゴブじゃあ有りません。ご存じ、リッグ・ゴッブ。これまで狩人達の攻撃が一切通らなかった白くて憎いあいつです。


「マジかよリッグ・ゴッブじゃねえか! 無理だって!」

「無理でもやるんだよ! 心配すんな! ヤバそうになったら俺がぱーんってやるから!」

「それはそれで近くに居たら色々かぶるじゃねえかよお!」

「うるせえ! 男だろ! いってこいやオラァ!」


 ……何故だかユグドラール以降、俺の性格が荒っぽくなってきている様な気がするのだが、それはマジで綺麗なゴリラ(エルフ)共のせいだと思う。


さて、そんな俺に()り出されたワンワン達ですが……以外にも善戦してますな。

 メタルゴブゴブ(リツグ・ゴツブ)の鋼のように頑丈な肌には刃が立たぬ、それは確かにそうで、LV1のワンワン達では傷ひとつ付ける事が出来ないのだが、スキルによって向上した技術により剣は的確に打撲傷を与え、矢はいやらしくネチネチと顔を狙い、じわりじわりとゴブの生命力を……。


 ……えい。


 パアンと音を立て破裂するゴブゴブ。

 かつてゴブゴブだった液状の何かを全身に浴びるワンワン達。


「「「ぬわあああああああ!!!?」」」


「な、なにするんだナツさん!」

「うええ……ひでえやナツさん!」

「うっぐ、な、なんでいきなり投石したんだよお!」


 なんで? 何でってそりゃおめぇ……


「なんだかよってたかってゴブゴブ虐めてるみたいで居たたまれなくなったんだよ!」


 反撃しようにも執拗にゴブゴブの動きを阻む矢、下がろうにもしつこく斬りかかる剣。

 かといって、それらによって深いダメージを負う事無くいつまでもいつまでもボコボコにされ続けるゴブゴブを見ていたら……もういい! 休め!って……ね? 介錯したくなるのは仕方が無い事だろうがよ!


 それはそれとして。


「まあ、そう怒るなよ。あのままじゃいつまで経ってもゴブは倒しきれなかったし、そのうちお前らの攻撃が崩れて酷い事になると思ったんだよ」


 それに――


「そんな事よりお前らステータスを見て見ろよ。今の戦闘は少なからず経験になったろうし、何より()()()()()()()で魔物を倒せばその力を糧としてレベルが上がる事があんだからよ」


 不思議なナニカ、それは言うまでも無くミー君の加護の力なのだが、行動によって得られる経験値の他に、何故か魔物を倒す事によってもきちんと経験値が貰えてしまうのだ。

 とどめを刺さずとも、ダメージを与えていればその適応範囲に入るというのだから後衛さんも安心だ。


 なんてゲーム的な! なんて思ったけれど、エミル大先生が言う事にゃー……


『魔物を斃すと大なり小なり蓄えられていたマナが解き放たれるんだが、これまでそれはそのまま世界に還っていたのだよ。

 しかし、ミー殿がレベルの概念を世界に実装した結果、それは直接世界に還らず討伐に参加した存在全てに分け与えられるようになったのだ』


 ――と。


 そのマナは魔術なんかを使うときに使う魔力だとか呼ばれるやつなんだけど、それを魔物から吸収することによって生物としての格が上がる糧になるとかで……まあ、まんまゲームの経験値だよね。元々その仕組みを作った存在がゲームを元にしたんじゃねえかなって勝手に思ってんだけど、間違いでは無いような気がしている……。


 元となったであろうゲームのアレは戦闘での経験から技術を身につけましたーってのが数値となって表れているんだと思うので、なんだか仕様上2重取りになってる感あるけどまあこまけーこたあいいんだよ。


 ゴブゴブを寄ってたかってボコってる最中にもじわりじわりと経験値はたまっていっていたのだろうけれど、それを倒して得られた経験値(マナ)はそれ以上の物だったようで、言われてそれに気づいたのかワンワン達から歓喜の声が立ち上った。


「うおおお!? なんか漲ると思ったらレベルが4になってるぞ!?」

「俺もナツさんみてえに戦闘で高揚感が! って思ったらこれ、レベルアップって奴か!」

「うるせえ! 俺をオーガ呼ばわりすんな!」

「まあまあ! でもスゲエよこれ! 今なら前よりやれそうだ!」


 そして迎えました第2戦。


 今度もまた、凄惨ないじめの現場を見てしまうのだろうかと石を握って様子を見ていたのだけれども――


「おるぁあああああ!」


 ガツの握るショートソードはシュシュっとゴブの皮膚を切り裂き、出血させることが叶った。


 流石に一撃でざっくりとはいかなかったけれども、ひっかき傷ひとつ負わせられなかった事を思えば大きな一歩だよ。


「やったぜ! 見ろよ、俺の剣で――」

「あぶねえ! 油断すんな! ガツ!」

  

 怒号と共に矢を射るカイ。放たれた矢はピュンと高い音を立てゴブの耳を貫いた。


「GYOOOOOB!」


 たまらず耳を抑え、うめき声をあげながら下がるゴブ。凄いな、レベルが上がるだけでこうも違うのか。つうか、スゲエのはこいつらの武器もそうだ。


 いくら使用者の能力が上がったといっても相手は皮膚が固いゴブだぞ? 下手をすれば耐え切れずに折れちまうんじゃあと思ったけれど、そうはならずに何故か切れ味や貫通力まで上がってらあ。


 元々強い武器を使っていたのか、それとも武器に何かこう、体からあふれ出てマナ的な物を纏わせられるようになったのか……いや、スキルによって武器の扱い方が向上し、切れ味が上がる使い方が出来るようになった、レベルの上昇により膂力が上がり、それを生かせるようになった――とかか?


 うーむわからん! 助けてエミル先生! 今とっても先生が恋しいの!


 だめだな。こういう時に「ほう、まさかここまでやるとはの」「知っているのかエミル!」なんてネタを出来ないってのは寂しいし、何より博士キャラが居ねえと謎が謎のままになってモヤモヤする!


 あーもう!


 ……えい!

  

「「「ぬおおおおお!?」」」


「だ、だからなんで石投げんだよ! ナツさん!」

「今度はやれそうだったじゃねえかよ!」

「うええ……全身ベタベタじゃねえか」


「うるせえ! 浅い傷つけられるようになっただけで、全然致命傷になってなかったじゃねえか! あれじゃ何時までたっても終わらねえわ!」


 いやまあ、ほっとけば後30分くらいで勝てたかもしれないけれど……例によって泥仕合過ぎてみていてつらかったし、何より心のモヤモヤを晴らしたかったのもあってつい手が出ちまったんだよ。ああ、そうさ! 八つ当たりだよクソが!


 こうして――


 我々はこの後も同じようにゴブを追い回し……昼食後の狩りでは早々に俺の投石が炸裂する前にゴブを倒せるようになってしまった。つまらん。


 今日の所はまだ複数人で1体狩るのがやっとの状態だったけれど、あと数日同じようにレベリングをすればきっと単独で討伐できるようになるだろう。


 世界に新たな仕組みが実装された以上、やがてこのゴブは歯が立たない上位種ではなく、ありふれた雑魚モンスターになるはずだ。


 しかし、ゴブよりもつえーやつらが世界各地に居るのも事実。

 ゴブを倒せたことに甘んじず、これからも鍛錬を続けてそれらに備えてほしいもんだね。


 ――ま、熱心なわんわん達と、ほっといても勝手に森を荒らしまわるエルフ共はほっといても頑張ってくれそうだけどな!


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