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97話 森を出るゾ

 とりあえず森を抜けねば話にならねーよねってことで、現在我々は南西へ、南西へと何度か野営をしながら歩みを進めているところであります。


 何故南西なのかと言えば、周辺調査として高めの木に登って周囲を確認した結果、そちらの方向に向かえば手っ取り早く森から抜けることが出来ると判明したからだ。


 いやあ、持っててよかったよスマートフォン。

 方位もきちんと示してくれるしさ、ほんと方角がわかるって素晴らしいぜ!


 あ、チキュウと違うのにドウシテ位置情報サービスが、方位測定がツカエルノデスカー見たいな事を言っちゃいけないよ。世の中な、都合が良いように出来てんだ。あんまりカツカツと厳しくやっちゃうと話がいっこも進まなくなっちゃうからね? いいね? わかったね? 面倒なリアリティを持ち出すんじゃないよ?


 って、何だかメタな事を言ってしまったけれど、まあそういうわけで、我々はスマホの画面をチラチラと見ながら南西へ、南西へとてくりてくりと歩いているわけで。


 字面だけ見ればピクニックのようでなんとも呑気なもんですけどね、実際はひでえぞ?

 ここ数ヶ月間、だーれもあるいてねーんじゃねーの? ってくらい荒れに荒れ果てた野性味溢れる森ですぜ? 


 道なんて当然ねーからさ、闇烏をバッサバッサと振って木々や雑草などを切り飛ばしながらの移動ですわ。 ウォオン! 俺は土木用重機だ! って、やらせんなっ!


「ナツくんナツくん、何だか一人で楽しそうだよね、いいないいなー」

「あのね、ミー君。これはわざとテンションあげてんの。そうでもしないとね、何もかも嫌になっちゃうの!」

「ふうん、そうなんだ。ねね、じゃあさじゃあさ! 私も一緒にやっていい?」

「楽しげに言ってくれるけど、そこまでいいもんじゃないぞ?」

「んーん。ナツくんと一緒にやれば何でも楽しいんだよ。後ろからついていくよりずっと楽しいに決まっているよ」

「おう……そこまでいうなら……別にいいけどな」


バッサリバッサリ、時折……いや、ちょいちょいドーン。


 俺の剣にミー君の魔術が加わったからさあ大変。

 ささやかなるルート確保が、ガチの林道工事に変わってしまったじゃあないか。


 いつも使っている杖とよく似た棒を拾ったミー君は、ニッコニコで風やら氷やら岩やら土やら……流石に火こそは使わなかったけれど、何かの鬱憤を晴らすがごとく俺が払った後を仕上げるようにドーンドーンと広げていく。


「ナツくんナツくん! これ結構たのしいじゃない! やっぱり二人でやればなんだって面白くなるんだよ! ね?」

「そうかな……そうかも?」


 楽しいかどうかは……わからないけれど、確かに何かがスッキリとしていくのを感じる。

 アレかな……自分ではあまり感じていなかったけれど、なんだかんだ忙しく駆けずり回っているのにストレスを感じていたのかな?


 依頼の間に他の冒険者に呆れられるレベルの長期休暇を挟んでは居たけれど、アレはなんか知らんがあっという間に溶けちまってたからな。


 なんだろうな、こういう感じの……特に何か制限されること無く、ノルマを求めること無く自由気ままに活動をする時間っていうのはやっぱり良いものなんだな。


「いやー! やっぱり魔術をわっと出すのは気持ちいいね。見てよナツくん。馬車だって通れるくらいの道幅になったよ!」


「お、おう……!」


 ……いや、これはただ純粋に身体を動かしまくってスカッとしているあれか?

 バッティングセンターやカラオケなんかでわーーっと発散してるのと同じアレか?


「おおい、ミー君。一応気をつけながら進んでくれよ? 売れそうな素材があったら採取していきたいからね」

「うんうん! それに薬草のコロニーはみんなの財産だからね。きちんと保護していくよ……っと、みてみてナツくん! ほらアレ! アママ草じゃない?」

「どれどれ……凄いなミー君。あれは毒草のニセアママ草のコロニーだよ」

「うわああん!」


 移動の足取りは非常に快調だ。

 ご覧の通り、我々のでたらめな開拓力(かいたくぢから)でグイグイと強引に森を縦断しているし、ホイホイと群がってくるはずの魔物共は結界に阻まれて近寄ることが出来ないでいる。


 時折それを解いては食材となりそうな魔物を狩ったりもしたんだけど……いやあ、何処にでもいるんすね、ゴブの野郎は。

 

 てっきりここいらはゴブの代わりにオークがポップするようなエリアだとばかり思い込んでたけれど……結界を解いた途端、ホイホイホホイホイとやってきましたもの。


 ただまあ……見慣れた緑色のキモい感じじゃあ無くて、白っぽい色……灰色?

 まあ、わからんけど少なくとも緑色よりはキモくはない感じの色をしてるからさ、はじめて見た時は挨拶しちゃったよ。俺もミー君も。


 あれは確か、夕食用にクッカ的な鳥さんを探し、結界を解いてうろついていたときだったな……。


『あ、見てみてナツくん! 小川に居るの、人じゃない?』

『こんな森の中に……? ああ、しかし小柄なおじさんがいるな』

『なんだか不健康そうな顔色だよ』

『そりゃあ、半裸でうろついてるから……ってそうか、遭難してるのかもしれんな』

『大変だね! ねね、ちょっと声をかけてみようよ』

『そうだな。おーい、こんにちはー!』

『こんにちは、おじさーん!』

『ギャゲグゲ!?』

『『ゴブゴブじゃーん!』』


 みたいな事が会ったんだよなあ。哀れなゴブゴブは、我々にびっくりしたのか小川に落ち、両腕を上げたままあっという間に流されていってしまったよ。


 ま、肌の色は違うけれど顔つきはやっぱりゴブゴブだし、コイツラも変わらず俺らに襲いかかってくるからね。そこは遠慮なく出会ったそばから適当にオーバーキルしているよ。


 討伐報酬がーとか一瞬思ったけど、街につくまでどれだけかかるかわからんからね。

 流石に背負子の中身をゴブゴブイヤーでみっちり満載ってのは気持ちが悪い。


 俺も嫌だし、それを出されたギルドの人だって悲鳴を上げるはずさ。


 だからゴブは素材を考慮せず遠慮なく叩き伏せ、運良く回収できそうな場合のみお耳や牙を拾うことにしている。


 我々のかばんは無限じゃないからね、そうやって拾うものを選んで居るんだけれども……それでも結構パンパンになってきた。


 ゴブゴブの他にも色々とやってくるんだけれども、オークの姿は見えないな。アレはあの日イベント用に用意された魔物だったのかも知れない……。

 

 っと、話しが変に逸れた。


 そんな具合に色々と倒して良さげな素材はキープしている我々なのだけれども、すっげえ邪魔な素材がひとつ、いや、1頭ある。


 ヒッグ・ギッガなるヒッグ・ホッグの上位個体だ。

『ブルルァ!』なんて飛びかかってきてさ、びっくりして思わずブン殴ったら動かなくなったので、強いとか強くないとかは良くわからんかったけれど、これがまあ兎に角でかい。


 ワゴン車くらいは軽く在るため、こいつを狩った後は肉に困らなくなったと言うか、他に何も狩れなくなってしまった。


 流石に肉をすべて持っていくことはできないから、その大半は森に帰すことになったけれど、そのお肉を包んでいた尾頭付きの毛皮さんが我々にとってものすごくお荷物になっている。


 これはどう折りたたもうと背負子に入るようなもんじゃないからさ、ミー君と二人で担いで……例えるならば獅子舞のような感じでえっちらおっちら運んでるんだ。


 なかなか疲れるけれど、もうすぐ森を抜けそうだし、ミー君はこの状態でも魔術を放てるからね。バンザイポーズのまま、じわりじわりと進んでいけるのさ。


 と、そろそろ森を抜けようかという時……少年の悲鳴が聞こえた。


「ヒッ……な、なんだお前! うわああ……く、来るなあ……! こっちくんなよ、お、おれはうまくないぞ……!」


「ミー君」

「うん! なにかに襲われてるんだよ。助けなきゃ!」

「ああ!」


 思ったよりもすぐ近く……よく見れば我々の前方で腰を抜かしている少年に向かっていく……が、どうしたことだ。魔物の姿が見えないではないか。


 ああ、そうか。ミー君の結界で押し出されたんだなー? 

 ミー君め、とっさに張るとはやるじゃないの。


 もう大丈夫だよと、少年に向かっていくが、彼は座り込んだまま器用に後ずさりをしていく。


「ヒ、ヒィイイ……たすけ……助けて……じいちゃ……」


 フゥっと意識を失う少年。一体何が起きたんだ!


「ねね、ナツくん……」

「どうしたミー君。何かわかったのか!?」

「うん……すごくいいにくいけどさ、その子が見て怯えていたの……私達じゃない?」

「なんでそんな……あっ」


 ヒッグ・ギッガの毛皮をかぶり、獅子舞的にうごめく我々は……傍から見れば得体が知れぬ魔物にしか見えなかったことだろう……。


「とりあえずこの子が目を覚ますまで見守ってようか……」

「うん、そうだね……」

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