第5話 余った収納
シャワーを浴び終わった俺がスマホを手に取ると、一件の通知が来ていた。
【ユウコ】
こんばんは〜
今日もお仕事お疲れ様です
日曜日、10時ごろからアキラを預けさせてもらってもいいですか?
黒崎さんからだ。日曜日にアキラ君を見ておいてほしいとお願いされていた。
【湊斗】
こんばんは
10時ですね、了解しました
ちなみに、お迎えは何時くらいの予定ですか?
メッセージを送ってすぐに既読がついた。
【ユウコ】
お昼前にはお迎えに行けると思います
【湊斗】
分かりました
また日曜日、よろしくお願いします
テンポよくメッセージがやり取りされ、大体の日程もまとまった。小さい子と接するのはあまり慣れていないが、まぁ、多分大丈夫だろう。
「うーん、何しようかな」
金曜日の夜。自由の身となった解放感はあるものの、何をするか意思を持っていないと、すぐに瞼が重くなってしまう。
とりあえず飯を食おう。帰りに寄ったスーパーで半額になっていた弁当と缶チューハイでお腹を満たし、早速布団にダイブ!
「あー、やばい寝そう」
睡魔に隙を与えず、スマホで動画配信アプリを開き、適当に話題作を再生する。
眠気覚ましで再生したのは好評のホラー作品だった。だんだんと追い詰められていく主人公を演じているのは絶賛売り出し中の若手俳優で、さすがと言える演技力で、思わず引き込まれてしまった。
「久しぶりにイッキ見なんてしたなぁ」
最新話までぶっ通しで見たので、少し目が疲れた。そろそろ日付も変わる。今日はもう寝るか。
日曜日はアキラ君を預かるというイベントがあるが、明日は一日中フリーだ。午前中は布団でゴロゴロして過ごそう。
程よい疲労感に包まれ、目を閉じるとすぐに眠気に襲われた。
◇
カーテン越しでも伝わってくる熱気を感じ、じんわりと汗をかいての起床だった。
「あー、よく寝た。今何時だ?」
スマホを見ると9:30と表示されている。思っていたよりは早い時間に起きられたみたいだ。
とりあえずシャワーを浴びて汗を洗い流す。扇風機をフル稼働させて、珍しく朝ごはんを用意する。
休みの日は比較的朝も食べることが多いが、時々起きたらお昼過ぎのこともあるので必ずではない。
と言っても、俺に作れるものには限りがある。今日の朝食はトーストとコーヒーだけ。それでも、いつものブラックコーヒーだけよりは健康的なはずだ。
朝ごはんを食べながらスマホをいじっていると、いつの間にか時間が過ぎ去っていた。
いけない、いけない。せっかくの休みを浪費するところだった。いつもならこのまま脳みそを空っぽにしたまま、気がつくと休みが終わっているなんていう恐ろしい事象に巻き込まれることもある。このタイミングで気づけたのだいぶファインプレーだぞ、俺。
休日は自分で自分を褒める余裕まで与えてくれる。
さて、何をしようか。完全ノープランで休みに突入したため、あまり趣味とかもない俺は時間を持て余してしまっていた。
「うーん、片付けでもするか」
そう呟いて、俺は一階のある部屋へと向かう。
俺の部屋になるはずの、今はただの物置と化している部屋だ。まずはここの整理から始めよう。
意気込んで始めた整理整頓だったが、そもそもの物の量があまり多くないので、30分もすると、既にだいぶ綺麗になっていた。
ついでに他の部屋の整頓も始めたのだが、どこも部屋の大きさに物の量が見合ってなく、どうしてもアンバランス感を拭えなかった。
「ここって使ってたっけ?」
一通り片付けを終えた俺は、まだ使っていないスペースの確認に移った。2階は全く活用できていないのだが、1階で使っていないスペースは、階段下の収納だけだった。
「あれ、ここってこんな広かったんだ」
収納の扉を開けると、想像の倍ほどのスペースが広がっていた。
よくデッドスペースと呼ばれる階段下の空間だが、これはもはや、何か目的があって作ったのではないかと思える広さだった。
まぁ、収納がたくさんあるのは嬉しいことだ。
高さはそこまでないのだが、人が二人か三人は入れそうだ。少しの好奇心で中に入ってみると、やはり手を広げても余裕なほどのスペースがあった。
なんか秘密基地みたいだな。俺の中の童心がくすぐられ、奥の方に進んでみる。
「うん? 何だこれ?」
暗くてよく分からないが、奥の壁に何か突起がある。
「これは……ドアノブ?」
触ってみると、確かにドアノブだ。下に動かそうとすると、鍵がかかっているのか、全く動かない。よくみると、ノブの上に小さい鍵穴がついている。
その後も何度か開けようとノブを動かしてみたものの、全く歯が立たない。
不動産屋からも、このドアについては特に説明を受けていない。恐らく何かの点検のためのドアなのだろう。
ちょっと暑くなってきたので、リビングに戻る。
「うーん、あとはもう片付けるところもないし……」
やれることもないので、また布団の上に横になる。お昼はもうちょっと遅くてもいいかな。朝ご飯がちょっとゆっくりだったし。
2時過ぎにお昼を食べて、その後もスマホと一心同体で休日を満喫した俺は、明日に備えて早めに眠りにつくことになった。
もちろん、あのドアのことなんて全く気にせずに――




