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その伯爵令嬢、〝替え玉〟につき ~替え玉のわたし(妹)が侯爵に溺愛されるなんてあり得ません  作者: とんこつ毬藻
<閑話~Scene Southolive>

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EX04 閑話サウスオリーブ ディアス部隊盗賊団アジト潜入編 前編

 本日第2幕特別話、先行公開しておりますノベルアップ+で読者アンケートを実施した結果、一番見たいシーンをお届けという事で、今回はなんとソルファ様視点のお話となります。前編、後編と2週にわたりお届け予定ですので、お楽しみにです。

 オレはソルファ・グランディア。グランディア侯爵家嫡男であり、ルモリーア王国・王宮騎士団ディアス支部の部隊長を務めている。


 今回ルモリーア王国南部サウスオリーブ領の領主を務めるオレの従兄(いとこ)であるアクアから直々に依頼があり、今、サウスオリーブで悪さをしていた盗賊団のアジト制圧のため、ディアス部隊の精鋭十名と、オレの配下にある密偵部隊数名で、ルモリーア王国建国前、かつての小国が治めていた城――古城オリーヴへまさに今、潜入しようとしているところだ。


 荒野の草に身を隠し、小高い丘へ聳え立つ古城を見据える。月灯りが荒野を照らす中、聳え立つ古城オリーヴは不気味なほどの静寂に包まれていた。


「ソルファ様、あそこに盗賊団が居るんですね」

「嗚呼シンシン。オレの部下である密偵部隊のジウが調べたので間違いない。既にジウの部隊は古城を取り囲むように身を潜めている」


「ついに、あのワイルドウルフの正体が暴かれるんですね」

「そうだな。だが、油断は禁物だ。シンシン常に周囲を警戒しておけ」

「わかりました」


 シンシンは精鋭部隊の中では一番若手だが、期待出来る男だ。この盗賊団制圧は彼にとってもいい経験となるだろう。


「夜明け前とは言え、道中罠もなく、此処まで移動の間も奴等は何も仕掛けて来なかった。皆、心して掛かるように」

「「「は!」」」


 皆が息を殺しつつオレの声掛けに返答する中、一人返事をしなかった男へ声を掛ける。


バルサーミ(・・・・・)。お前はディアス部隊ではないが、ミルア騎士団長が直々に連れていけとお前を指名したんだ。分かっているな?」

「へいへい。分かってますって先輩。戦場であんたの邪魔をするほど俺も腐っちゃいないっすよ?」

「分かっているならいい。作戦通りで行くぞ」

「へいへい。先輩」

「へいへいじゃない、はい、部隊長だ」

「はい、ソルファ部隊長」


 これ以上、構っていても仕方がないので、任務を開始する事にする。現在、松明などの灯りは消しており、あるのは古城を照らす月灯りのみ。丘の上をルモリーア海から流れ込んで来た風が駆ける。風の音と同化させつつ、古城へと近づいていく。そして、古城裏手の外壁が崩れている箇所へと辿り着く。予め、侵入経路はジウが想定済。この先は瓦礫によって相手からも視界が見えづらく、そのまま地下へ続く穴が空いている場所へと一気に抜ける。地下には牢屋もあるため、ディアスでやっていたように誘拐などしているなら、そこへ女子供を捕えている可能性もあったからだ。


「お待ちしておりました。こちらです」


 予め待機していた人物は、ジウの部隊に所属する菫色の装束へ身を包んだセイカ。彼女の誘導もあって、オレ達は古城内部へ一気に潜入する事に成功する。


「ここからA部隊、B部隊へ分かれるぞ。ルナ、B部隊は任せた」

「ええ、もちろんよ」

 

 黄金色の髪をポニーテールに束ね、白金(プラチナ)のプレートアーマーに身を包んだ女性はディアスの精鋭部隊に所属するルナ・スフォル。尚、彼女の姉、ソル・スフォルはルモリーア王国東の要となるグレイシャル部隊の部隊長を務め、白銀髪(シルバーブロンド)戦乙女(ヴァルキュリア)と呼ばれている女性だ。


 ルナ達、B部隊はセイカ達密偵部隊と共に、人質が居ないか、古城内に罠がないかを裏ルートより探索。

 一方、オレが率いるA部隊は正面突破。ワイルドウルフの連中が根城にしていそうな場所を中心に全て叩く。

 そして、地下から一階へと上り、ちょうど中央ホール付近へ差し掛かった時だった。オレ達の足許に無数の矢が飛来し、床へと刺さっていた。後方にある柱の陰へと素早く下がる。


 中央ホールは吹き抜けになっており、四方から下層の様子を確認出来るようになっていた。そして、上階より野太い男の声がホールへと響いた。


「西の英雄、ソルファ・グランディア。騎士団ディアス部隊の皆さん、歓迎するぜぃ」

「お前は盗賊団のボスか? それとも只の下っ端か?」

「答える義理はねぇ。と、言いたいところだがぁ、冥途の土産に教えてやる。俺様の名はナゲット。お頭に代わり、このアジトの留守を任されているのさ。あんたらが捜している我ら盗賊団のお頭はなぁ? 今頃、お前さんの婚約者を狙っているところさ!」

「なんだと!?」


 煽ってこちらの陣形を乱そうとするのは悪者の常套手段。分かっている。だが、こいつらのボスが、ローズ嬢を狙っているだと!? 嗚呼、前回もそうだった。オレはいつもローズ嬢がピンチの時、傍に居ない。その事実だけが許せなくて、腸が煮えくり返る程の熱を全身から感じていた。


「おぅおぅ、その顔が見たかったぜ? 西の英雄さん。お互い、本気で殺り合おうぜ!」


 ナゲットと名乗ったスキンヘッドの大男が二階の壁にあったレバーを下へと降ろす。

 刹那、中央ホールとは反対、オレ達が通って来た回廊側が爆発し、強制的に中央ホールへと弾き出されるオレ達。それが開戦の合図となる。

 二階へ待機していた盗賊団の連中が放つ矢が、オレ達に向かって五月雨のように降り注ぐ。並みの兵隊なら此処で傷つく者も居ただろう。だが、オレ達は西の要であるディアス部隊の精鋭だ。


 素早く剣を引き抜き、矢を弾き返していくオレ。小盾(バックラー)、斧、長剣、短剣。それぞれが矢を弾いていく中、一人の男が高速移動で敵の居る二階へ向け、あるものを投げつける。その様子を見たオレが手を挙げ、皆が目を閉じ、耳を塞ぐ。


「喰らいやがれ、俺の特製だ」

 

 響き渡る金切り音と眩い光がホールを埋め尽くす。バルサーミの閃光弾は、高音波の音も鳴る特注品。速さに自信を持つバルサーミは、先陣を切って敵地の懐へと飛び込み、閃光弾や火薬弾など、陽動に使える特殊な武具で、敵の陣形を崩す役目を担っている。


「ぐはっ」

「見えねぇ~」

「なんだこれはぁ」

「ぎゃああああ」


 目と耳をやられた盗賊団の者達が何が起きたのか分からず混乱する中、続けて動くは期待の新星シンシン。弓を持つ手首を目掛け、刃で出来たブーメランを投げ、敵の弓を落としながら攻撃。そのまま残りのメンバーで一気に階段を駆け上がり、二階へと攻め込む。二階に居た盗賊団の連中を次々に一階へと落としていく。


 しかし、この時点で先程まで二階に居た大男、ナゲットの姿が見当たらない。

 そして、周囲を見渡し、上からの殺気に気がついたオレは目を見開いた!


「西の英雄、ソルファ。この女(・・・)の命が欲しくば、一人で三階奥、王の間まで来い!」

「なっ、まさか……! ロジータ夫人なのか!?」


 ナゲットは二階から更に上、三階の回廊にてオレのよく知る女性を抱きかかえている。しかし、ロジータ夫人は何故か抵抗する様子を見せていない。双眸(ひとみ)は虚ろで焦点が合っておらず、項垂れるようにナゲットへ身体を預けていたのだ。


「貴様……! ロジータ夫人に何をした……!」


 怒りの形相で奴を睨むと、口角をあげ、スキンヘッドがニヤリと嗤う。


「何だって? この女は俺様のものになっただけさ? じゃあな!」

「待て!」


 そのままロジータ夫人を抱えたままナゲットが消える。いつもそうだ。こいつらは、自身の欲望を満たす事しか考えていない。だから悪事を働く連中は許せない。


「ソルファ様、此処は僕たちに任せて先へ!」

「嗚呼、シンシン、皆、頼んだ」


 別の部屋に待機していたんだろう。この時、ホールに居なかったワイルドウルフの連中がなだれ込んで来ており、ディアス部隊との交戦が始まった。オレの行く手を阻む奴等だけ凪ぎ払い、オレは真っ直ぐ奴の居る場所へと向かう。


『ナゲット。お前はオレを怒らせた。だから終わりだ』


 オレは心中に湧き上がる怒りを吐き捨て、三階へ続く階段を駆け上がった。

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