故郷は彼方の星
ほぉ、ジェニス開発陣もたまには良い仕事するな? ルリ専用の特製スクーター型ビーグル――その名も、『VS-07V スパーク・スクーター』だ!」
ルリ専用スクーター型ビーグル:主要性能設定
——機動性(ホバー&ホイール可変機構)
アスファルトの道路はもちろん、ビルの壁面や水面だってスイスイ走れる万能仕様。市街地の入り組んだ路地裏でも、小回り抜群で敵を翻弄できる。短時間なら飛行も可能。
——武装(小型エーテルキャノン)
ハンドル周りに内蔵された小型の魔力火器。巨大なボスに挑む前の雑魚掃除や、動きを封じる足止めには十分すぎる火力だな。
——防御・展開機能
車体展開と同時に、微弱なエネルギーシールドを展開。不意打ちの攻撃を受けても安心。
——通信・ナビゲーション(バロン専用リンク回路)
これが一番大事な機能だな! ボクの美声と的確なアドバイスが、リアルタイムでルリの脳内に直結する特等席仕様。実況解説付きの安全ドライブ。
「どう? なかなかにテンション上がるだろ?
さあ、その相棒にまたがって、悪徳どもをまとめてブッ飛ばしに行くぞ――アクセル全開、頼んだぞ、ルリ!
———某所・パトロール中のルリ
潮風を切り裂きながら、スパーク・スクーターが海岸線の舗装路を軽快に駆け抜ける。
小さな体で、ちょこんとシートに座るルリの姿はなんとも微笑ましい。
「ふんふんふーん♪ 海風が気持ちいい……っと!?」
不意に脳内にバロンの声が響く。
「そこ右、なにかいる」
「何かって?」
「行ってみないとわからん」
それだけ言うと、バロンの声が途絶える。
「ちょ、まっ……また意味深な事言いやがって」
文句を言いながらも、指示通りにハンドルを右にきりアスファルト小道を抜ける。
そうして辿り着いたのは、すっかり寂れ廃棄された港だった。錆びついたクレーン、ガタのきた倉庫、そして打ち寄せる波が冷たくコンクリートを叩く音だけの寂しい空間。
「ここに何が‥‥ん?」
その防波堤の先端に一人の少年が、ぽつんと佇んでいた。高校生ぐらいか?
冷たい海風が彼の制服の裾を激しく揺らしている。
けれど、少年は海面など見ていない。
曇った空、そのはるか彼方を見上げていた。
「あれ? あんなとこに学生がいる‥‥サボりか?」
スクーターのエンジン音を切り、俺は近づいて行く。
「やあ、少年。イジメにでもあったのか?」
少年は無表情のまま振り返ると‥‥一瞬、目が青く光った。それを目にした時、俺の中の何かが反応した。
「今日は星が見えない‥‥」
「お前何者だ?」
少年、空を指す。
「此処ではない所から来た」
「お前、異星人なのか?」
俺は無意識のうちに、腰の銃へ手を伸ばしていた。
「僕は……故郷の星に帰りたいだけだ」
「故郷の星? それは何処にある?」
「此処から、20万光年ほど先にある惑星だ」
——ジェニスベース
「というわけで、迷子の異星人を保護しました!」
胸を張るルリが、ジェニスベースへ連れてきたのは自称・異星人の少年だった。
しかし、黒髪黒目でどこからどう見ても、ごく普通の日本人の少年にしか見えない。
「は? 異星人?」
張りつめた司令室に、拍子抜けしたような沈黙が流れる。オペレーターの面々は顔を見合わせ、モニター越しに視線を送る隊員のひとりは「ルリちゃんの冗談か?」と肩をすくめた。
急いで駆けつけてきた警備班も、拍子抜けしたように銃口を下げ、困惑した表情で首をひねっている。
隊長の織田も、さすがに判断に困って腕を組んだ。
「とりあえず……ラボリーダーの湯川さんに任せるか」
当の少年はといえば、周囲のざわつきなど意に介さず、相変わらずぼんやりしている。
何を考えているのかさっぱり分からない。
「ルリちゃん、本気で言ってるの? この子が異星人だなんて……」
あまりの落差に戸惑いを隠せない玲が、不安そうにルリの袖を小さく引っ張る。
「うーん……だが、バイオセンサーの波形に見たことのない微弱なノイズが混ざってはいるな。ただの人間じゃないのは確かだ」
端末のデータを食い入るように分析していた湯川がそう呟くと、それまで半信半疑だったメンバーたちの間に、一転して緊張したざわめきが広がった。
次回予告
迷子の宇宙人?を保護したルリ達。
彼は何をしに地球に来たのか?例の通報騒ぎに関係あるのか?
次回「異星人の贈り物」




