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星を護る者  作者: 花鹿
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19/20

前兆


「・・・こちら、岡部。通報のあったL地区に到着した。これより周辺の警戒・捜索に入る」


 インカム越しに聞こえる岡部の低い声は、深夜の静けさに溶け込むように冷静だった。


 ジェニスベースの中央管制室では、モニターの青白い光を受けたオペレーターがマイクへ向かう。


「了解、慎重に。周囲のエネルギー反応もスキャンして下さい」


 そして・・・・時計の針が30分ほど進んだ頃。


「・・・・こちら岡部。L地区、異常なし。エネルギー反応も許容範囲内。完全に空振りだな」


「了解しました。ご苦労様です」


 通信を終えると、岡部はヴェノヴェーダのハンドルから手を離し、小さく重い溜息をこぼした。


 最近の夜は、どうもおかしい。


 「エリア内で異獣の咆哮が聞こえた」「謎の地鳴りがして建物が揺れた」――そんな緊急通報が連夜のように入り、その都度、現場へ急行させられている。


 だが、待っているのはいつも肩透かしだ。

 怪物の影どころか、足跡一つない。


 そこにあるのは、ただ冷たい夜風と、不安を隠せない住民たちの視線だけだった。


「――ねえ、またこれ? もう何件目よ〜」


 助手席に深く体を沈めていた氷川雪菜が、疲労の色を隠せない声でうんざりしたように呟く。


「世間を騒がせたい奴のイタズラか、酔っ払いの嫌がらせかなのか・・どっちにせよ迷惑な話だ。だが、どれだけ無駄足だと分かっていても市民からの通報を無視するわけにはいかないからな」


 岡部は眉間にしわを寄せ、フロントガラスの向こうに広がる闇を睨みつけた。


 龍魔獣ガルサスとの激闘から数日。

 世間は「護り手」ルリの話題で持ちきりであり、人々はそれに熱狂していた。


 しかし、その裏で不可解な通報が頻発していることが、岡部の胸に重くのしかかっていた。


(ただのイタズラにしては・・・・何か別の意図があって、俺たちジェニスの戦力を分散させようとしているのか?)


 静まり返った夜の街に、ヴェノヴェーダのエンジン音だけがむなしく響いていた。


 ———ジェニスベース・朝


「おはようございます」


 俺がいつものように元気な挨拶と共に、チームルクシオンのミーティングルームへ足を踏み入れると、すでにメンバー全員が揃っていた。


 しかし、どうも室内の雰囲気がおかしい。


 中央のテーブルに設置された大型コーヒーサーバーからは、芳醇な香りを伴う湯気が立ち上っている。

 だが、そこを囲む面々は一様に深いクマを目の下に作り、どこか気怠げで眠そうな顔をしているのだ。


「・・・おはよ、ルリ・・・」


 デスクに突っ伏しかけていた玲が、生気のない声でかろうじて右手を持ち上げる。


 隣に座る岡部や他のメンバーたちも、コップのコーヒーをすする手が重そうだ。


「 みんなどうしたんですか? そんなに眠そうな顔して」


 慌てて自分の席に歩み寄りながら首をかしげる俺に、土門は重そうにまぶたをこすりながら答えた。


「ああ・・・ここのところ深夜から朝かけて、異獣に関する緊急通報が何件も入って、その度に現場に急行して解析やデータ照合に追われていたよ」


「なるほど・・・」


 地球防衛組織と言うのも、ある意味ブラックなんだな・・・


「しかも、どれも現場に急行してみたら異獣の影どころか痕跡すらなかったってオチよ。完全に振り回されたわ」


 あくびを噛み殺しながら、玲が深い溜息をつく。


「お疲れ様です」


 そういえば、さっき会った岡部さんも似たような事を言っていたな。


(昨夜はあちこちでフェイクの通報が相次いでいたんだな)


 


次回予告

チーム・ルクシオンが謎の通報に振り回されるなか

ルリは謎の少年と出会う。彼は自分を宇宙人だと名乗り、故郷に帰りたいと言うのだ。果たして・・・・

次回「故郷は彼方の星」でFuture Go!!

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