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なんか捨て子の女の子に転生したらしい  作者: ダレイワス1世
第六章 アレクシア学園一年目序列戦編
87/131

なんか変わったところを確認されるらしい

朝。

 

起きた時には、もうルカがいた。

 

布団の横に座って、じっと見ている。

 

「……おはようございます」

 

「ねえちゃ、おきた」

 

確認は済んだらしい。

 

満足そうだった。

 

顔が近い。

 

かなり近い。

 

「ルカ、近いです」

 

「ねえちゃ」

 

返事になっていない。

 

機嫌は良さそうだった。

 

襖の向こうからアンナの声が飛ぶ。

 

「ヨウカ起きたー? カリン来てるわよ」

 

思ったより早い。

 

 

庭へ出ると、カリンがいた。

 

制服ではない。

 

村の服。

 

それでも、盾と剣はある。

 

癖らしい。

 

カリンが俺を見る。

 

視線が少し止まった。

 

「おはよう」

 

「おはようございます」

 

沈黙が挟まる。

 

気まずいわけではない。

 

昨日まで同じ学園にいた。

 

それなのに、村で会うと少し違う。

 

距離の測り直しをしている。

 

「ちゃんと寝た?」

 

「かなり」

 

「よかった」

 

カリンが安心した顔をした。

 

それから、少し迷う。

 

珍しい。

 

「……少し、見たい」

 

「何をですか」

 

「今のヨウカ」

 

言葉に詰まった。

 

順位戦の話はした。

 

でも、カリンは全部を見ていたわけではない。

 

俺も、全部は話していない。

 

「投げるのとか」

 

「ああ」

 

それなら分かる。

 

「でも、軽くです」

 

「うん」

 

「あと、危ないのはなしで」

 

「分かってる」

 

返事が早い。

 

カリンも本気でやる気はないのだろう。

 

確認だ。

 

 

庭の端。

 

木剣。

 

鞘に入れた短剣。

 

地面には小石や小さな木片。

 

特別な準備は何もない。

 

村の庭だった。

 

「始める?」

 

カリンが盾を構える。

 

重くない。

 

いつもの立ち方より柔らかい。

 

本気ではない。

 

見る姿勢だ。

 

俺も短剣を抜かない。

 

鞘のまま。

 

一歩。

 

カリンが前へ出る。

 

速くない。

 

でも、真っ直ぐ。

 

俺は地面の小石を一つ拾った。

 

投げる。

 

カリンにではない。

 

足元より少し外。

 

踏み込みたくなる場所。

 

カリンが止まった。

 

一瞬だけ。

 

盾が動く。

 

その隙に、横へ回る。

 

「……嫌」

 

カリンがぼそっと言った。

 

「何がですか」

 

「そこ」

 

足元を見る。

 

「踏みたくない」

 

笑いそうになる。

 

効いている。

 

正面から崩せない相手には、こっちの方が早い。

 

今度は木片。

 

投げる。

 

盾側へ。

 

当てるのではない。

 

見ないといけない場所へ。

 

カリンの視線が落ちる。

 

そこへ近づく。

 

短剣の距離。

 

でも、入る前に盾が来る。

 

重い。

 

押し切れない。

 

すぐ引く。

 

「前より、嫌」

 

「褒めていますか」

 

「かなり」

 

それは良かった。

 

でも。

 

次の瞬間、盾が前に出た。

 

距離を潰される。

 

一歩。

 

もう一歩。

 

速い。

 

近い。

 

俺は短剣を置く。

 

止める。

 

腕。

足。

入り口。

 

でも。

 

「届かない」

 

カリンの木剣が、俺の肩口で止まっていた。

 

近距離はまだ上だ。

 

「負けです」

 

「うん」

 

カリンが木剣を下ろす。

 

息は乱れていない。

 

俺もそこまで疲れていない。

 

試合ではない。

 

確認だった。

 

それでも、分かったことはある。

 

「前と違う」

 

カリンが言う。

 

「どう違いますか」

 

「前は止まってた」

 

少し考える。

 

たぶん、合っている。

 

前の俺は、見てから止まることが多かった。

 

今は少し違う。

 

見る。

置く。

動かす。

入る。

 

その順番になってきた。

 

「でも」

 

カリンが続ける。

 

「少し無茶する」

 

「しました?」

 

「する」

 

言い切られた。

 

否定できない。

 

順位戦でも、入りすぎた。

 

ディオン戦は特にそうだ。

 

「あと」

 

カリンが視線を逸らす。

 

「前より、ちゃんと戦ってる」

 

その言い方が引っかかった。

 

「前は?」

 

「守られる側だった」

 

ああ。

 

そういう意味か。

 

少し黙る。

 

嫌ではなかった。

 

むしろ、嬉しい。

 

「カリンは変わりました」

 

「そう?」

 

「強くなりました」

 

「ヨウカも」

 

短い会話だった。

 

それでも、昨日より自然だった。

 

学園で話せなかった分が、少し埋まる。

 

その時。

 

「ねえちゃ!」

 

ルカの声が飛んだ。

 

振り向く。

 

走ってくる。

 

危ない。

 

俺とカリンが同時に動いた。

 

先に届いたのはカリンだった。

 

すっと前へ出る。

 

止める。

 

抱き上げる。

 

自然だった。

 

あまりにも自然だった。

 

「危ない」

 

カリンが静かに言う。

 

怒ってはいない。

 

でも、真面目だった。

 

ルカはきょとんとしている。

 

それから、カリンを見る。

 

俺を見る。

 

「ねえちゃ、いた」

 

「います」

 

安心したらしい。

 

アンナが少し離れた場所で笑っている。

 

「カリン、もう完全にお姉ちゃんね」

 

カリンが固まった。

 

「……違います」

 

「そう?」

 

「違います」

 

耳が赤い。

 

俺は笑った。

 

昨日から、帰ってきた感じが少しずつ増えている。


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