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なんか捨て子の女の子に転生したらしい  作者: ダレイワス1世
第六章 アレクシア学園一年目序列戦編
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なんか順位戦は学年を選ばないらしい

順位戦の説明は、翌週の朝にあった。


クラリス先生が教室に入り、黒板へ文字を書く。


学年末順位戦。


その字を見た途端、教室の声が止まった。


レオスは背筋を伸ばし、リーナは筆記具を握り直す。


マリベルは黒板を見て、エレシアはもう話を聞く姿勢になっていた。


俺も筆記具を持つ。


「説明する」


クラリス先生は前置きをしなかった。


「アレクシア学園では、学年末に順位戦を行う。一年から六年まで、参加者は学年を越えて組まれる。形式は一対一」


教室がざわついた。


一年から六年。


やはり、混ざるらしい。


「武器、魔法、体術は使ってよい。ただし武器は訓練用のものを使う。教師が危険と見れば、その場で止める」


クラリス先生が黒板に書く。


降参。


場外。


戦闘不能。


教師判断。


「決着はこの四つだ。教師判断には、実戦なら致命傷になる攻撃が入ったと見なされる場合も含む」


教室が静かになる。


「首、頭、心臓、腹の深い位置。そこへ届いたと判断されれば、実際に傷を負わせなくても終わりだ」


黒板を見る顔が固くなった。


「反則、暴走、教師の制止無視は失格にする。止められない力は、使わせない」


誰も茶化さない。


「上級生は強い。体格も、魔力量も、経験も違う。勢いだけでどうにかなるものではない」


上がりかけていた熱が、一度落ち着く。


「ただし、下級生が上級生を破る年もある」


また顔が上がった。


レオスの目が変わる。


「珍しい。だが、不可能ではない」


短い説明だった。


それなのに、教室は授業前とは別物になっていた。


休み時間になると、レオスがすぐ来た。


「ヨウカさん、誰と当たりたい?」


「気が早いです」


「気になるだろ」


「気にはなります」


「ほら!」


嬉しそうにされても困る。


レオスは拳を握った。


「俺、上級生と当たったら、一回くらい粘りたいんだよな」


「勝つ、ではなく?」


「勝てたら最高。でも、まずは一撃入れたい」


レオスらしい。


前を見るのが早い。


その後ろで、リーナが小さく言った。


「私は、怪我しないで終わりたいです」


「それも大事です」


「ですよね」


リーナはほっとした顔をした。


怖がっているだけではない。


自分に必要なことを見ている。


エレシアは手元の紙に何かを書いていた。


「エレシアさんは?」


「余計な失敗を減らします」


「失敗、ですか」


「不用意に下がる。相手から目を切る。礼を忘れる。焦って魔力を乱す。そういうものです」


エレシアらしい答えだった。


マリベルが笑う。


「私は相手を見てから考えるわ」


「出るんですか」


「出るわよ。勝てる相手と勝てない相手くらい、早めに見ておきたいもの」


「商人ですね」


「学生よ」


本当だろうか。


怪しい。


「ヨウカは?」


マリベルがこちらを見る。


「何をするつもり?」


「何を」


「投げるのか、短剣なのか、魔法なのか」


「全部、中途半端です」


「またそういう言い方をする」


「足りません」


使ったことのあるものは増えた。


胸を張れるものは少ない。


「まず、倒れない体力をつけます」


マリベルが黙った。


それから笑う。


「そこから?」


「そこからです」


三日続けて動いただけで疲れている。


順位戦どころではない。


放課後、訓練場で上級生の試合を見た。


説明を聞いた一年生たちが集まっている。


俺も来た。


見ない理由がない。


出てきたのは、二年生の男子と、五年生の女子だった。


木剣同士。


魔法はなし。


教師が短く合図する。


試合は静かに始まった。


二年生は速い。


足も、剣も、一年生とは違う。


五年生は崩れなかった。


大きく動かない。


受けて、ずらして、半歩入る。


木剣が二年生の肩の手前で止まった。


一度目。


二度目。


三度目。


二年生が下がる。


息が乱れている。


五年生は、呼吸も姿勢も変わらない。


レオスが隣で呟いた。


「……強」


同じことを思った。


派手ではない。


なのに、届かない。


二年生が踏み込んだ。


今度は速い。


五年生の木剣が遅れたように見えた。


違う。


誘っていた。


二年生の剣が空を切る。


足元を崩される。


転ぶ前に、五年生の木剣が喉元の手前で止まった。


「そこまで」


教師の声が響く。


すぐには誰も声を出さなかった。


遅れて、訓練場がざわめく。


上級生は強い。


知っていたつもりだった。


見た方が早い。


「ヨウカさん」


リーナが小さく言った。


「今、すごく考えてますね」


「はい」


「怖いですか?」


「怖いです」


「でも、嫌そうではないです」


返事に迷った。


怖い。


見たい。


試したい。


その三つが、同じところにあった。


「怪我しないようにはします」


「それは絶対です」


リーナが強めに言った。


俺は頷いた。


「はい」


その日から、練習の形が変わった。


朝は走る。


速さより、続けることを優先した。


リーナは途中まで一緒に走り、三日目で歩きに変えた。


「無理しない練習です」


そう言って、胸を張る。


それでいいと思う。


投擲は、小さい動きほど乱れた。


大きく投げれば当たる。


小さくすると、左下へ落ちる。


投擲担当の教師は、毎回同じことを言った。


「手で直すな。足から」


短剣は速さが足りない。


丁寧すぎて間に合わない。


セレス先生は容赦がなかった。


「今のは死んでいる」


「はい」


「今のは生きているが、指がなくなる」


「はい」


分かりやすい。


心臓に悪い。


闇の膜は、破片の代わりに軽い木片を使った。


大きくしない。


薄くしない。


抱え込まない。


カイルが水と風で木片を流す。


初めは抜ける。


弾く。


床へ転がる。


何度目かで、ぱた、と勢いを失って落ちた。


指先が冷える。


「持続しすぎるな」


レヴィン先生が言う。


「はい」


「受けたら落とす。抱えるな」


「はい」


闇は、掴むものではない。


止めて、落とす。


今は、それだけで手いっぱいだった。


二週間が過ぎた。


最初に聞かれたのは、光と闇。


次に、投擲。


その次に、順位戦。


最近では、宿題の場所を聞かれることもある。


「ヨウカさん、ここって何を書くんですか?」


「王国史なら、建国年だけでなく、なぜそこに都を置いたかも書くといいと思います」


「ありがとう!」


「ただ、私も間違えるので確認してください」


「そこまで丁寧なんだ」


丁寧にしないと、あとで困る。


そう言いかけて、やめた。


遠巻きに見られるだけだった頃より、声は近くなった。


疲れる。


でも、悪くはない。


一か月が過ぎる頃には、朝の走り込みで息が切れるまでの時間が伸びた。


リーナは途中で歩く。


マリベルは走る前から「私は無理をしない派」と宣言する。


エレシアは姿勢よく走る。


カイルは涼しい顔で横を走る。


腹立たしい。


「ヨウカ、顔」


カイルが言った。


「何ですか」


「今、僕に腹を立ててる顔だった」


「していません」


「してたよ」


「少しです」


「正直」


「余裕そうなので」


カイルは笑った。


「余裕ではないよ」


「説得力がありません」


「じゃあ、順位戦で見せる」


「やめてください」


「順位戦だから」


「なおさらやめてください」


カイルは楽しそうだった。


悪気はない。


だから困る。


訓練場の端では、三年生が練習していた。


その中に、カリンがいた。


盾を構える。


剣を振る。


受けるだけではない。


踏み込み、切り返し、一撃を入れる。


盾で守り、剣で攻める。


周囲の三年生より、動きが静かだった。


弱い静けさではない。


必要なところだけが動く静けさ。


足を止めかけた。


止めなかった。


ここで止まると、見入っているのがばれる。


普通に見たい。


無理だった。


「見てるね」


カイルが言った。


「見ています」


「素直」


「隠す方が不自然なので」


カイルは同じ方向を見る。


「カリン先輩、強いよね」


「はい」


「でも、あの上にもいる」


「分かっています」


四年生、五年生、六年生。


この学園には、まだ上がいる。


カリンも強い。


カイルも強い。


知らない誰かも、きっと強い。


順位戦は、それを同じ場所に並べる。


俺はまだ一年生だ。


勝てない相手の方が多い。


それでも。


何もできないまま終わるつもりはなかった。


夜、記録板を開いた。


順位戦は、一年から六年まで学年を越えて組まれる。


一対一。


勝負は、降参、場外、戦闘不能、教師判断で決まる。


致命傷になる攻撃は、当てなくてもそこで終わり。


制止無視や暴走は失格。


上級生は強い。


それでも、下級生が勝つ年もある。


二年生と五年生の模範試合は、差が大きかった。


投擲は、小さい動きで左下へ落ちる。


短剣は丁寧すぎる。


闇の膜は、受けたら落とす。


体力は足りない。


やることが多い。


多すぎる。


でも、全部必要だ。


俺は記録板の最後に、短く書いた。


投げる。


外す。


止める。


落とす。


見る。


それだけ書いて、板を閉じた。


明日も走る。


リーナは途中から歩くだろう。


マリベルは何か言う。


エレシアは姿勢よく準備運動をする。


カイルは普通に走れる。


俺は、置いていかれないように足を動かす。


どうやら、順位戦は学年を選ばないらしい。

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