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なんか捨て子の女の子に転生したらしい  作者: ダレイワス1世
第五章 アレクシア学園入学編
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なんか合格しても安心できないらしい

午後の追加確認は、思っていたより事務的だった。


別室に呼ばれ、番号札を渡す。


係の人が書類と顔を見比べる。


「二十七番、ヨウカさん。フィル村出身。保護者、アンナ殿、ヨシュア殿」


「はい」


「入学後は寮生活になります。例外申請は出ていませんね」


隣に座っていた父さんが答えた。


「ああ」


母さんも頷く。


「王都に預け先はありません」


係の人は紙に線を引いた。


「では、寮規則の説明は合格後に行います」


合格後。


その言葉だけ、耳に残った。


まだ受かっていない。


それでも、受かった後の紙はもう用意されている。


次に聞かれたのは、持ち物だった。


刃物。


薬品。


魔道具。


許可なく持ち込めないものが、いくつもある。


薬草袋のところで、係の人の筆が止まった。


「薬草類の持ち込み予定あり。種類は?」


母さんが紙を出した。


「乾燥させたヒナギ草と、虫除け用に匂いを移した布です。治療用の薬ではありません」


「ルーベル薬師工房の補足書類と一致。入寮時に確認」


それで終わった。


取り上げられたわけではない。


許可されたわけでもない。


確認、と書かれた。


この学園では、人も物も、まず紙の上に置かれる。


追加確認が終わると、宿に戻された。


結果は翌朝、掲示場で発表されるらしい。


一日置かれる方が嫌だった。


部屋に戻ると、母さんが俺の顔を見た。


「疲れた?」


「疲れた」


父さんは窓際に立っていた。


「何を聞かれた」


「寮のこと。持ち物。薬草袋。連絡先」


「そうか」


「面接より、変に疲れた」


「手続きはそういうものだ」


父さんらしい返事だった。


俺は椅子に座り、水を飲んだ。


部屋の外を、他の受験者の家族らしい声が通り過ぎていく。


笑っている声。


怒られている声。


泣きそうな声。


王都の宿は、壁の向こうまで落ち着かない。


記録板を出しかけて、やめた。


今書くと、面接と書類の言葉を全部並べたくなる。


代わりに、薬草袋の留め具を確かめる。


硬い。


指に力を入れないと開かない。


今はそれくらいでよかった。


夕食の味は、あまり覚えていない。


肉が入っていた。


温かかった。


母さんが何か話して、父さんが短く返した。


俺も返事はした。


頭の隅には、ずっと掲示場があった。


次の朝、学園の掲示場には人が集まっていた。


昨日までの試験場とは違う熱がある。


泣いている子がいる。


笑っている子がいる。


紙を睨んでいる大人もいる。


俺は母さんと父さんの間で、掲示板へ近づいた。


番号が並んでいる。


名前もある。


二十七番。


ヨウカ。


合格。


一度では、うまく入ってこなかった。


もう一度、上から追う。


二十七番。


ヨウカ。


合格。


息が抜けた。


膝から力も抜けかけて、母さんの手が背中に触れる。


「おめでとう、ヨウカ」


「……うん」


父さんが俺の頭に手を置いた。


強くはない。


重い手だった。


「よくやった」


その一言で、胸の奥が詰まった。


掲示板の横には、別の紙が貼られていた。


合格者への案内。


入学手続き。


寮規則。


補習確認。


魔法実技の個別確認。


身体基礎訓練の班分け。


下の方に、俺の番号があった。


王国史・礼法、補習確認。


身体基礎、要観察。


魔法実技、個別確認。


薬草類持ち込み、入寮時確認。


合格していた。


その横で、次の予定がもう並んでいる。


母さんも案内紙を読んだ。


父さんも黙って目を通す。


「多いわね」


母さんが言った。


「多い」


父さんは案内紙から目を離さない。


「受かったから終わりじゃない」


「うん」


「ここからだ」


分かっていた。


紙で見ると、重さが違う。


合格の文字は大きい。


確認事項は細かい。


細かい方が、現実に近かった。


係の人が合格者を集め始める。


「合格者は、こちらで入学手続きの説明を受けてください。保護者の方も同席してください」


俺たちは列に入った。


昨日まで受験者だった子たちが、今は合格者として並んでいる。


顔つきが明るい子もいる。


もう次の説明に集中している子もいる。


俺は番号札を握ったまま、手続き用の紙を受け取った。


「ヨウカさんですね。寮入居、薬草類確認あり。魔法実技の個別確認対象です」


「はい」


「入寮日に持ち物確認を受けてください。薬草袋は封をした状態で提出。確認後、許可された範囲で返却されます」


「はい」


「補習確認の日程は、入学後に通知します」


「はい」


返事をするたびに、合格した実感が別の形になっていく。


嬉しさではなく、予定。


安心ではなく、手続き。


説明が終わる頃には、昼に近くなっていた。


宿に戻る道で、母さんが言った。


「疲れた?」


「うん」


「嬉しい?」


「うん」


「不安?」


「うん」


母さんは笑った。


「全部あるのね」


「ある」


父さんが前を歩きながら言う。


「全部あっていい。歩け」


「うん」


合格通知は鞄に入れず、手に持ったまま歩いた。


紙は薄い。


軽い。


それなのに、指が離れない。


宿に戻ると、記録板を出した。


一行だけ書く。


合格した。


そこで手が止まる。


嬉しい。


怖い。


忙しい。


どれも合っている。


どれか一つでは足りない。


記録板を伏せた。


合格しても安心できないらしい。


手の中の紙は、まだ温かかった。

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