表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんか捨て子の女の子に転生したらしい  作者: ダレイワス1世
第五章 アレクシア学園入学編
64/92

なんか止まることも試験らしい

翌朝、受験者だけが訓練場へ案内された。


昨日の魔法実技場とは違い、外の空気が近い。


土の広場の横に、屋根付きの訓練場がある。


白線の引かれた地面の端には、木剣、木槍、短い木の刃が並んでいた。


係の教師が前に立つ。


「身体能力と武器の基礎確認を行います。速さ、力、反応、姿勢、合図への対応を見ます。無理をして怪我をしないように」


受験者たちの顔が引き締まった。


剣の方へ目を向ける子。


足首を回す子。


肩をほぐす子。


俺は手を開いて、閉じた。


ここでは、体そのものをごまかせない。


最初は短い走りだった。


合図で走り、白線の手前で止まる。


前の少年は速かった。


土を蹴る音が軽い。


白線の手前で滑りかけたが、教師はすぐ板に印をつけた。


「速さは良い。次は止まり方も整えなさい」


少年は息を弾ませながら頷いた。


次の子は、線の手前できれいに止まった。


速さはさっきの少年ほどではない。


教師は別の欄に印をつける。


俺の番が来た。


「二十七番」


「はい」


線の前に立つ。


土の匂いが近い。


「始め」


走る。


腕を振りすぎない。


足だけ先に行かせない。


白線が近づく。


止まった。


線まで、まだ距離がある。


安全に寄せすぎた。


「もう一度。今度は線に寄せて」


「はい」


二回目は深く入る。


靴の先で土が崩れた。


線は越えていない。


「速さは平均。二回目の修正は悪くありません」


「はい」


胸に残る言い方だった。


次は方向転換。


合図に合わせて左右へ動く。


一回目は遅れた。


声を聞いてから、体が考えていた。


二回目は、重心を真ん中に置いて待つ。


「右」


足を出す。


体が流れかける。


踏ん張る。


「力で曲がろうとすると崩れます。今の直し方は悪くありません」


「はい」


低い柵を越える動きでは、さらに差が出た。


軽々と越える子がいる。


着地の音まで小さい。


「跳躍、着地とも良い」


教師の筆が動く。


俺の番では、足が重かった。


柵は越えた。


着地で膝が沈む。


前の子とは音が違う。


「跳躍は弱め。着地で沈みます。無理に高さを出さないように」


「はい」


身体確認が終わる頃には、喉が渇いていた。


次は武器の基礎確認だった。


「最初は木剣です。経験の有無は問いません。構え、距離、合図への反応を見ます」


木剣を受け取る。


本物ではない。


それでも、手に持つと重さがはっきり分かる。


「構え」


周りに合わせて木剣を上げる。


教師が近づき、俺の手の位置を下げた。


「肩に力が入りすぎです」


「はい」


「体の真ん中を残してください。剣だけ前に行くと崩れます」


「はい」


正面には、藁を巻いた人形が置かれている。


前の少年は木剣を強く振った。


乾いた音が響く。


「力はあります。次は振った後の姿勢を残しなさい」


少年は嬉しそうに頷いた。


俺の番になる。


人形との距離を測る。


一歩入る。


木剣が届く前に、教師の声が飛んだ。


「止め」


足は止まった。


木剣の先だけが前に残る。


「そこです」


教師が近づく。


「体は止まりました。剣が残っています」


「はい」


「先だけ残さない。もう一度」


次は、声が聞こえた瞬間に手首まで引いた。


ぎこちない。


それでも、さっきより収まった。


「よろしい」


木剣の確認はそこで終わった。


次に、短い木の刃を渡された。


剣より軽い。


短い分、相手との距離が近くなる。


手に取っただけで、腕の置き場に迷った。


「短い武器も確認します。こちらの動きに合わせて、避けるか下がるかを選んでください」


教師が革を巻いた棒を持つ。


打ち合いではない。


ゆっくり動く棒に対して、位置を選ぶだけだ。


棒が前に来る。


見える。


右へ動こうとした瞬間、角度が変わった。


近い。


大きく下がる。


「下がりすぎです」


「はい」


「安全にはなりました。ただ、次に動けません」


もう一度。


今度は半歩。


棒の外に残る。


足は止まったが、肩が上がっていた。


「肩」


「はい」


三回目で、ようやく体が残った。


うまくできたというより、崩れきらなかっただけだ。


教師は板に印をつける。


「短い刃は触ったことがありますね。ただ、戦う動きではありません」


「はい」


「相手を見ようとはしています。距離には慣れていない」


「はい」


「慣れていない距離で平気な顔をする必要はありません。固まらずに選べればいい」


その言葉で、手の力が抜けた。


木の刃を返すと、手のひらに汗が残っていた。


確認が終わり、壁際へ戻る。


槍で間合いを作った受験者には、教師が足運びをもう一度やらせていた。


剣を強く振れる子は、姿勢の修正を受けている。


跳べる子は、着地まで確認されていた。


それぞれ違うところに印がついていく。


係の教師が全体へ声をかけた。


「身体確認と武器確認は以上です。この後、番号順に面接を行います。呼ばれるまで控室で待機してください」


面接。


まだ終わらない。


昨日は魔法。


今日は体と武器。


次は言葉。


控室へ戻る途中、右手がまだ固かった。


止まることも試験らしい。


木剣の先を引いた感触が、指に残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ