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なんか捨て子の女の子に転生したらしい  作者: ダレイワス1世
第一章 フィル村幼児期編
4/105

なんかスキルがあるらしい

最初に気づいたのは、壁だった。


〖家の壁〗


木製の家の壁。そこそこの耐久力がある。火に弱い。


〈素材〉


ブガの木


次に、椅子。


〖木の椅子〗


座るための家具。少し古い。脚の一本に傷がある。


薬草瓶。


〖薬草瓶〗


乾燥薬草が入った瓶。湿気に注意。


暖炉。


〖暖炉〗


火を扱う場所。近づきすぎると危険。


ここまでは、まだ整理できた。


いや、整理できただけで、納得はしていない。

壁を見ただけで情報が出る時点で、十分おかしい。


問題は、人を見た時だった。


アンナをじっと見る。


〖アンナ〗


状態:健康


詳細不明。


ヨシュアを見る。


〖ヨシュア〗


状態:健康


詳細不明。


カリンを見る。


〖カリン〗


状態:健康


詳細不明。


人間相手だと、あまり情報は出ない。


俺の力が弱いのか。

相手の情報が多すぎるのか。

あるいは、その両方か。


そこで、ふと思った。


では、自分を見たらどうなるのか。


赤ん坊なので、鏡を自由に見ることはできない。

だが、アンナの部屋には小さな手鏡がある。


アンナが髪を整えている時、俺はその膝の上にいた。


鏡に映ったのは、小さな女の子だった。


柔らかい髪。

丸い頬。

まだ焦点の定まりきらない目。


これが俺か。


いや、俺というより、ヨウカか。


鏡の中の自分をじっと見つめる。


文字が浮かんだ。


〖ヨウカ〗


種族:人族

年齢:一歳

状態:健康


そこまではいい。


問題は、その下だった。


ヨウカ 女 1歳


レベル1


攻撃 3

防御 4

敏捷 5

器用 9

幸運 39

魔力 35

MP 20


状態 健康


……数字が出た。


出てしまった。


ゲームか。


いや、そんな雑な話で済ませていいものではない。


けれど、現実に見えている。


さらに視線を向けると、別の項目が浮かんだ。


〈ノーマルスキル〉


観察 LV1


〈レアスキル〉


鑑定 LV1

精霊魔法 LV1


〈エクストラスキル〉


医学 LV1

叡智 LV-

?? LV-


〈加護〉


光と知恵の女神の加護

???の加護


俺は鏡の中の自分を見たまま、しばらく固まった。


アンナが首をかしげる。


「ヨウカ? 鏡が気になるの?」


気になる。


気になるどころではない。


スキル。

加護。

エクストラスキル。

そして、伏せ字。


特に最後の「???」がまずい。


見ようとしても、文字が揺れる。


頭の奥が、少し熱くなった。


まずい。


直感的にそう思った。


これは、今の俺が見ていいものではない。


俺は慌てて目を逸らした。


その瞬間、ふっと文字が消える。


「……あー」


思わず声が漏れた。


アンナは微笑む。


「自分の顔、面白かった?」


面白くはない。


しかし、赤ん坊なので説明できない。


俺はアンナの服をぎゅっと握った。


アンナは少し驚いた後、優しく俺を抱き直す。


「大丈夫よ。ここにいるから」


その言葉に、少しだけ力が抜けた。


本当に大丈夫かは分からない。

ただ、今すぐどうにかできる問題でもない。


俺には、何かを見る力がある。


そしてそれは、便利そうで、たぶん危ない。


それだけは分かった。


それから俺は、少しずつ試すことにした。


赤ん坊なので、できることは限られている。


見る。

考える。

声を出す。

触る。


それくらいだ。


物を見ると、文字が出る。

人を見ると、あまり出ない。

無理に見ようとすると、頭が熱くなる。


ここまでは、すぐに分かった。


次に気づいたのは、文字にならない情報だった。


ヨシュアが、いつもより少し右肩をかばっていること。

アンナが疲れている時は、薬草を刻む手が少し遅くなること。

カリンが強がっている時は、耳のあたりが赤くなること。


そういうものが、妙に見える。


ただ、見えたところで、今の俺には何もできない。


アンナが疲れていそうな時、肩を揉むことすらできない。

できるのは、せいぜい機嫌よくしていることくらいだ。


だから俺は、アンナが疲れていそうな時、なるべく泣かないようにした。


手を伸ばす。

笑う。

大人しく抱かれる。


「あら、今日はご機嫌ね」


アンナが嬉しそうにする。


それだけでも、少しは意味があるらしい。


赤ん坊の仕事も、案外馬鹿にできない。


問題は、魔力だった。


ステータスには、魔力という数字があった。

だが、使い方が分からない。


アンナが魔法を使う時、空気が少し変わるのは分かる。


暖炉の火を強くする時。

水を温める時。

薬草を乾かす時。


アンナの指先から、見えない何かが流れる感じがする。


それを真似しようとした。


結果、何も起きなかった。


いや、正確には、俺が疲れただけだった。


「うー……」


俺は床の上でぐったりした。


カリンが隣で心配そうに覗き込む。


「よーか、ねむい?」


眠い。


というより、だるい。


体の中で何かを空回りさせた感じがする。


カリンは俺の頭を撫でた。


「ねる?」


「あう」


寝る。


俺はそのまま眠った。


魔法は、気合いで使えるものではないらしい。


知らないまま無理に動かすと危ない。

それだけ覚えておけば、今は十分だ。


数日後、カリンがまた来た。


手には小さな花を持っている。


「よーか、これ」


差し出された花を見つめる。


〖シロミナ花〗


白い小花。香りが弱く、乾燥させると軽い鎮静効果を持つ。


へえ。


これは少し詳しい。


俺は花を見てから、アンナを見た。


アンナは少し驚いた顔をする。


「カリン、それどこで摘んだの?」


「そと」


「これは薬草にも使える花ね。よく見つけたわ」


カリンは胸を張った。


「よーかにあげる」


俺は花に手を伸ばした。


小さな指で茎を掴む。


シロミナ花。

鎮静効果。


眠れない時や、不安が強い時に使えるのかもしれない。


もちろん、使い方を知らなければ危ない。


俺は花を握りながら、ふと思った。


この世界には、知らないものが多すぎる。


薬草。

魔法。

精霊。

スキル。

神。

加護。


そして、俺自身。


でも、不思議と嫌ではなかった。


前世の俺は、本を読んだり、歴史漫画を見たり、迷路を探したりするのが好きだった。

世界の中に何があるのかを知るのは、楽しい。


ただ、今度は遊びでは済まない。


知っていれば、気づけるかもしれない。

知らなければ、見落とすかもしれない。


俺は花を握ったまま、カリンを見る。


カリンはにこにこしている。


この子が怪我をした時。

アンナが倒れた時。

ヨシュアが帰ってこなかった時。


俺は何ができるのか。


今はまだ、何もできない。


でも、ずっとそのままでいるつもりはない。


「あう」


俺は花を掲げた。


カリンが笑う。


「よーか、うれしい?」


嬉しい。


それもある。


でも、それだけではない。


俺はたぶん、この世界を知りたい。


そして、できることなら。


大事な人が壊れる前に、ちゃんと気づけるようになりたい。


そう思った瞬間、頭の奥で小さく何かが鳴った。


〈観察 LV1 → LV2〉


文字が一瞬だけ浮かんで、すぐに消えた。


俺は固まった。


……上がった。


スキルレベル、上がるんかい。


この世界、思っていた以上にゲームっぽい。


ただし、ゲームと違って、痛みも空腹もある。

家族もいる。


失敗したら、たぶん普通に誰かが傷つく。


俺は小さく息を吐いた。


どうやら俺には、スキルがあるらしい。


そしてそれは、使い方を間違えれば、自分も周りも巻き込むものらしい。


赤ん坊の身で分かったこととしては、十分すぎるくらい重かった。

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