三つの魂
ママに抱かれて目覚める子供の幸せを、オッサンの俺が客観視する。
そんなシュールな朝を迎えた。
なんだかまだフラフラしてる気がする、多分これはクワンリに抱かれて眠った、嬉し恥ずかしだけの影響ではないと思う。
しかし、よく眠れた。
しかも、寝起きが良い。
子供の体の睡眠と言うのを大人の精神で味わえる。俺はなんて幸せなんだろう!
豪華な朝食の後カメムシ城の偵察報告とオババへの神託のお願いをしようと皆に集まって貰った。
「大丈夫なのか?ノル!フラフラしているって言ってたが....危険を冒してまで協力する事はないんだぞ!」
そして俺の説明が城は乗り物だと言うくだりになると。
「なんだって!それは驚愕だ!あの城が動くのか?あんな大きな物が....人族の技術力は本当にすごいな」
俺の説明を聞いてクワンリの第一声はこれだった。
誰よりも他人のために自分を犠牲にするヤツに言われたくないと思いながら、説明を続ける。
「人族の技術力じゃないんだよクワンリ、君が僕に月夜の晩に教えてくれた魔族の伝承。君たちの祖先がルナからロンに来た時の船なんだよ。」
「そんなっ!」
クワンリは、その一言を発して黙ってしまった。
そりゃそうだ。言葉を失うのも当然だ。伝説の古代の船が目の前にあるのだから。
***
オババが香を焚き始めた。
前回の神託の儀式の時は俺は気を失っていたから、今回初めて見るけど興味深い。日本のアニメで見るような陰陽師が儀式を行うような、魔法陣と言うより。曼荼羅に近いものを使っているようだ。
前回の天啓では俺の魂は、この世界の魂ではないと言われていた。
今回、このふわふわ感はその魂がここから離れて元の世界に戻ってしまうのではないのかと。
少し不安になってしまったのだ。
もしかすると、今回の伝説の手がかりも得られるかもしれない。
オババがブツブツ、ムニャムニャと呪文のような魔法詠唱のような不思議な言葉を繰り出している。
クワンリもサルマも曼荼羅の上の俺とその前にいるオババを遠巻きに見ている。
頭の中に、また、あの言葉が....
一緒になろう
帰ろう
元に戻ろう
俺は高速道路でバイクに乗っていた。中央分離帯を超えてトラックのタイヤが飛んでくる。避けられない。
同時に、こんな映像が頭の中をよぎった。
ルナの欠片が炎に包まれて、青い惑星に落ちていった。
頭の中がぐるぐるしている、めまいとは違う、様々な場面が一気に押し寄せてきた。一つ一つを認識できない位の量。
違う世界の違う記憶が入り乱れて頭の中をぐるぐるしている。
オババが俺の目の前で手を叩く、何度も何度も手を叩いている。
焦点が合ってきた。
それと同時に、ぐるぐるもおさまってきた。
「魂が3つに分かれとる、ノルお前の中には魂が3つあるぞ!その3つの魂を何かがつなげている」
オババが目を丸くして鼻を広げて興奮した様子で俺に伝えてくる。
クワンリもサルマもオババの前に走り寄ってきて、俺の隣に座った。
2人と1匹は、オババの次の言葉に固唾を飲んでいる。
「わしもこれ以上詳しくはわからん、こんな事は初めてだから、推測もできん。わしも驚いておる。」
その言葉を聞いて、2人は残念そうな複雑な顔をしているが、俺はなんかわかってしまったような気がしたんだ。
「みんな聞いてくれ、俺の推測なんだけど、というか何か感覚でわかったんだけど、俺の中には宇宙船の魂があるんじゃないか?というか、起動の元になるエネルギー、それがオババには魂に見えるのかもしれない」
「宇宙船に行って、俺は宇宙船から呼びかけられたんだ、一緒になろう、戻ろう。帰ろうって。」
「だから、クワンリ、俺が君の上に乗って伝承通りに宇宙船に行けば動き出すのかもしれない、恥ずかしいだろうけど赤龍になって俺を乗せてくれないか?」
クワンリは真剣な顔でオババに聞く。
「ノルの言っている事はオババはどう思う?その魂というか、エネルギーを宇宙船に渡してノルは大丈夫なのか?」
オババは黙ってクワンリをそして俺を交互に見つめているだけだった。
「魂が3つあるんだろう?1つを返してもまだ2つあるじゃないか。きっと大丈夫だよ。もしかすると魔獣化や人型の急激な成長、老化も収まるかもしれない。そうだろうオババ?」
「やってみなければわからん。わしはそれしか言えん。」
「クワンリそんなに心配した顔しないでくれ、大丈夫だよ!人化の呪文がうまく言えないのも、これのせいかもしれない」
「それに俺は赤龍になった君の背中に乗せてもらいたい」




