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■心構え■5

二階に上がった二人はテーブルを挟んで座り、PCの電源を入れた。


一夫「資金移動と信用取引口座開設は大丈夫だったんだな?」


和美「うん。色々考えてくれてありがとう。早く儲けてお金返せるように頑張るよ。」


一夫「そんなのは考えなくていい。最初は売買する前に用語や会社についてとにかく勉強するんだ。」

  「今はPCですぐ売買できる時代だから、勉強する癖をつけておかないとずっとやらなくなるぞ。」

  「一度売買を始めてしまうと儲けようが損しようが、その原因を調べたりしないでどんどん繰り返す

   ようになる。」

  「株は損益結果がどうであれ、必ず反省することがある。その原因を深く調べて反省しないと、

   どうしたら次もっと上手くやれるか、失敗しないかが分からなくて成長しないんだ。」

  「売買を上手くできようができまいが、口座を閉鎖するまでずっと続くんだから、長い期間

   儲けながら生き残りたいなら、少しずつでも上手くなるよう決済後必ずノートに反省した

   ことを書くよう”今すぐ”癖を付けるんだ。何でも最初が一番肝心だぞ。」


和美はいつも親父ギャグ全開の近所の陽気な叔父さんとしか思ってなかったから、こんなに真面目に諭す一夫の姿を初めて見て驚いたが、全て自分を心配してのことだからと素直に聞き入った。


和美「分かった。売買を始めたときの理由と、決済後の反省をノートに書くよ。」


一夫は「よし。その言葉を忘れるなよ。」と満足気な返事をした。

話が一段落したところで和美が聞いた。


和美「今ね、私が貯めた300万円と、叔父さんが貸してくれた1000万円があるでしょ?」

  「売買銘柄を決める前に聞きたいんだけど、一度にどれだけ使ったらいいの?」

  「叔父さんがやってる”鞘取り”は損失リスクが少ないから目一杯売買したらいいの?」

  「儲けたいんだけど、初めは怖いから最低単位にしたいなって・・・」


一夫「うん、良い心掛けだ。俺は今でも最初は最低単位から始めてるぞ。株に絶対は無いから

   常に損した場合のことを最優先に考えて、できるだけ少なく始めることだ。」

  「最大価格率付近・最小価格率付近で仕掛けても最高のところで仕掛けができることはまず無い。」

  「だからもっといいところで仕掛けれるよう余力資金を残しておくことが一番大事なんだぞ。」

  「儲けられない奴、損する奴はとにかく資金管理を深く考えなかったり、雑なことが多いんだ。」

  「売買資金が無くなったら終わりだから、使う前に予定投入金額or予定回数を先に決めて

   最大限慎重になることだ。今のところ心配は無さそうだけど、くれぐれも簡単に売買するなよ。」


和美は売買が初めてだから怖くて聞いただけなのに、一夫からたくさんの理由が聞けてビックリした。

儲けたくて始めようとしてるのに、投入資金を少なくするのがいいとは意外だったが、なにより数十年の売買経験がある一夫の言葉に説得力を感じて頼もしく思った。


一夫「俺のやり方は”理論上”損失リスクが低いだけで絶対じゃない。日本は災害も多いし、いつ何が

   起こるか分からない。まずは資金を増やすより減らさないことが最重要だ。」

  「だから同じ金額を儲けるなら、多額の資金を使って少ない値動きを狙うより、できるだけ少額の

   資金を使って多くの値動きを狙うこと。これを常に心掛けておけよ。」

  「それには売買損益は金額に目がいきがちだが、投資は”金額”じゃなく”率”で見る癖を付けろ。」

  「投資商品や成績は全部”年率”換算で表示されてるだろ?だから売買手法の優劣も”率”で考えろ。」


和美にはこの考え方が目から鱗で、いよいよ投資の世界に踏み出すんだ、という気がして背筋が伸びた。

お金を”金額”じゃなく”率”で捉えるなんて一夫に聞かなければ一生知らなかったかもしれないと思った。


一夫「損益を”金額”で見ると投入金額が多くなりやすく失敗したときの損失金額も大きくなるが、

   ”率”で見れば投入金額の大小には無関係だから多くしなくてもいいし、失敗したときの損失金額

   が大きくなることもない。」

  「もし損切りする場合、含み損が大きくなるほど現実逃避して”もしかして好転するかもしれない”

   と根拠がない期待をして傷口を広げることが多々あるようだが、少額なら躊躇なく決済できる。」

  「株の売買は一旦ポジションを持ったら心理戦だ。含み益も含み損も等しくプレッシャーがある。」

  「だからこそ、いつでも決済できるよう資金に余力を持たせることと、小さいポジションにして

   心理的なプレッシャーを軽くしておくことが重要なんだ。」


「ん?」と思って和美が口を挟んだ。


和美「一旦ポジションを持ったら心理戦ってのは分かるような気がするんだけど、含み益も含み損も

   ”等しく”プレッシャーがあるってのは分からない。儲かっててもプレッシャーて感じるもの?」


一夫「例えば含み益が100万円あるとする。そのままにしといたら数分後には80万円、もしかして

   60万円になるかもしれないんだぞ?」


和美「あ。分かった。 100万円欲しい。」(笑)


一夫「だろ?欲しいよな。 俺も欲しいわ。」(爆笑)


二人は急に喉が渇いてお茶を口にした。


一夫「株を始めたとき浅野に聞いたんだが、人は損失を我慢できるのに利益は我慢できないらしい。」

  「でもその通りにしたら小利大損で退場してしまう。だから投資家は逆をやらなきゃいけないと。」

  「ポジションを大きくして利益決済ならいいけど含み損を我慢したら致命的だよな?」


和美「あ~、だから含み損を我慢せずすぐ切れるようポジションを小さくして心理的なプレッシャーを

   軽くしておくのか~」


一夫「そのために損益を”金額”じゃなく”率”で考えることが役に立つと。」


和美「金額を追い求めていくと絶対ポジション大きくしそうだもんね。始める前に分かってよかった!」


それを聞いた一夫は満足気だった。


一夫「ここまでが、売買前に知ってちゃんと納得しておくべきことだ。」

  「あとは最初の三回は銘柄を決めたらその売買プランを俺に説明してから実行するんだ。」

  「それとお前を紹介した手前、最初の三回くらいはネット売買じゃなく電話注文してやれ。」

  「世の中持ちつ持たれつ、繋がりを大事にして手数料はケチるな。対面で学ぶことは多いはずだ。」


和美「分かった。銘柄を決めたら電話するよ。」


一夫「よし。じゃあ眠くなったから俺帰るわ。相場は逃げないから納得するまでじっくり考えろよ。」


そう言って一夫は部屋を出て行った。

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