■船出■6
和美は翌日から、今まで通り日中は家業を手伝うも夜はアルバイトを辞めて銘柄選定準備を始めた。
先日一夫が帰る間際にどの銘柄を売買してるか聞き、加賀が例に出した自動車関連のT社&N社だったので手始めにその二社の推移を探った。
二週間ほどかけて過去5年間の日足推移をエクセルの折れ線グラフに書き込み、最大価格率・最小価格率・平均価格率を弾き出してボリンジャーバンドみたいに書き入れた。
早速、これが正解か否か不安があったので一夫に電話してみた。
一夫「意外と早く連絡よこしたな。俺がやってる銘柄でやり方を覚えるのは手っ取り早くていいな。」
「自分で言うのもなんだが、成功者の真似をするのが一番リスクが低いし早いからな。」
「5年分の日足でもいいが、俺にはそれらの数字が正解か否か分からん・・・」
和美「え?だって叔父さんT社とN社の鞘取りしてるんだよね?聞き間違った?」
一夫「いや、それはそうなんだけど、俺はじっくり待てるから10年分の週足推移を使ってるんだ。」
「まー、週足の数字から見てもお前が弾き出した日足の数字とそんなに変わらんな。」
「正確には数字そのものというより、3つの数字の比率がそんなに変わらんということだ。」
「今俺が持ってるポジションは最大価格率付近で仕掛けて最小価格率付近まできたとこだから
そろそろ決済して、逆ポジションにドテンしようと思ってるところだ。」
「もしお前が日足推移から弾き出した数字でも同じ展開ならちょうどいいから始めてみれば?」
和美「うーん。あたしのだと最小価格率付近までもう少しなんだよね~最初だし今回は逃してもいい
からそこまで待ってみるよ。」
「もし来たら最低単位で始めて、3回仕掛けてみる。投入した合計金額の―5%で損切るつもり。」
一夫「よし、慎重で何よりだ。野球と違って相場は何回チャンスを見逃しても大丈夫だから焦るなよ。」
「もし仕掛け始めたら最初に決めたことは絶対守れ。言行不一致は相場でも通用しないぞ。」
和美「うん。最初に決めたことは守るよ。加賀さんからも念を押されたし。これから発注電話する。」
一夫「よし。成功も失敗も何かは学べるけど、一定条件でやらんと何が良いか悪いか分からんからな。」
「もし仕掛け始めたら連絡しろよ。ノートに書くことも忘れるな。じゃあ、また。」
一夫との電話を切ってすぐ、和美は加賀に仕掛け値とナンピン条件を発注し、目標価格率と損切り条件も伝えた。
電話を受けた加賀は、先に一夫から和美が自分と同じT社とN社の鞘取りをするかもしれないことを聞いており、予め日足・週足両方の最大価格率・最小価格率・平均価格率を弾き出し、いつでも注文を受けれる体制を整えていたが、和美が自分で過去5年分の日足推移と最大価格率・最小価格率・平均価格率を弾き出したことに感心した。
「この子には成功してほしいな。努力は裏切らないことを知って欲しい。」と願いながら電話を聞いた。
この日の和美のノートには初めての発注にドキドキして電話したこと、一夫から言われた通り”最初の予定を必ず守る”ことが書かれた。




