■一夫■4
帰宅した和美は夕飯とお風呂を済ませて二階の自室に行き、今日加賀から聞いたことを振り返った。
”早く””簡単に”楽に”儲けようと”片張り”すると、損失リスクが大きくなる・・・
でも両建てで”鞘取り”をするには、最大価格率、最小価格率、平均価格率を調べて・・・
今も儲けたいという思いは揺らがないものの、叔父が売買するまでにこんな時間がかかることをしていたのかと思うと、自分にもできるのか心配になった。
それに自動車、電機、通信、食品、金融、鉄鋼、商社、流通、不動産、サービス・・・業種は多数ある。
自分はどれを売買しようか、どうせやるなら知ってる会社の方が良さそうだけど、儲けることが一番重要なら気にしない方がいいのか、とにかく何から手をつけていいのかが分からなかった。
そんなことを思っていると玄関のチャイムが聞こえた。
しばらくすると「和美いるか?」と聞き覚えのある一夫の声が聞こえ、母親に呼ばれた。
一階のリビングに降りていくと、ほろ酔い顔の一夫の姿が見えた。
一夫「おー和美、浅野のとこ行ってきたか?」
一夫には今日行くことは伝えてあったので、何を話してきたかを聞きたがった。
和美「うん、浅野さんに挨拶してきた。私の担当は加賀さんになったよ。」
一夫「ほー加賀か。そこそこ年も近いし気兼ねなく相談できていいだろ。担当が付いたからには
とにかく使い倒せよ。自分で調べても分からないことや見つからないデータがあったら遠慮なく
どんどん聞いて、どんどん頼み込め。」
「営業はお前が注文したら会社に手数料が入って実績になるし、儲かれば決済手数料が多くなる
んだから、そのために手間は惜しまないはずだ。」
「俺が株始めた頃はパソコンなんて無かったし、今みたいにリアルタイムで値動きも見れなかった
から、チャート表やら最新ニュースやら決算書やら何でも用意させたもんだ。」
普段から陽気な一夫はお酒が入ったせいで、いつもより饒舌だった。
和美の母親は控えめな性格なので、一夫がけしかけたせいで和美が無遠慮にならないか心配した。
母親「一夫さん、和美は遠慮するような子じゃないから、あまりけしかけないで。
ただでさえ失敗しないか心配してるんだから。」
一夫「なーに、株屋は儲けさせてくれるなら大概のことは二つ返事さ。」
「俺の紹介で姪っ子が始めるんだから、余程のことがない限り何でも協力するよ。」
「な、和美。浅野は俺の頼みを聞いてくれただろ?」
和美は例の”資金移動”と”信用取引口座開設”のことだ、とピンときた。
和美「うん。叔父さんには凄くお世話になったから、って言ってたよ。」
「加賀さんが不在のときは自分に相談してもいいって言ってくれたよ。」
一夫と和美の会話を聞いていた母親は、
「株をやるなんて誰に似たのかしらね~」
と言いながらTVをつけた。
一夫「詳しく聞きたいからちょっと部屋いくか。」
和美は渡りに船だと思った。株を始めることに気が進まない様子の母親の前では話づらいと思っていた。
和美「いいよ。初めてで相談したいことたくさんあるし、何からやっていいか分かんなかったし。」
二人はお茶を持って二階に上がって行った。
株式売買手数料は片道1%




