虹色に輝く文字
洞窟の壁に流れるように文字を書き付けている筆。
固唾を呑んで見守る4人。(薫子、義也、堅造、林)
筆は見事な達筆で、虹色に輝く文字を次々にあらわにしていく。
「なんて書いてあるのかしら?」
と、薫子がまだ青ざめた表情で疑問を口にした。
あまりの達筆に読解が難しかったためだ。
「こ、こ、こ、これは日本語ではないのでは……」
と、執事の林が次々に起こる衝撃的な出来事に動揺を隠せない様子で言った。
「むむむむっ! じゃが、英語でもなかろう。なぁ、ヨッシー」
と、薫子の祖父・堅造が地面に座り込んだまま、期待の若人・義也に助けを求めるように聞いた。
「確かに日本語でもないし、英語でもないですね」
と、義也がはっきりとした様子で言った。
「エェー!! そんな……それじゃあ、読めないじゃない」
と、薫子が残念そうに言った。
「これは、ヘブル語だよ」
と、義也が真剣な表情で言った。
「ヨッシー、読めるの!?」
と、薫子が瞳を輝かせながら聞いた。
「……『シャローム』っていう挨拶の言葉しか、読めない。
だけど、よく読める人を知っているから、書き写しておこう!」
と、義也はカバンからメモ用紙とペンを取り出して、文字を書き写し始めた。
義也が全部書き写し、確認を済ませると、それを待っていたように筆と文字はキラキラと光って空中に舞い散るように消えた。
まるで大事な仕事をやり終えて、満足したように。
※本文中の『シャローム』が出てくる聖書箇所を参考までに、記載させて頂きます。注:シャロームの部分に(シャローム)と追加しています。↓
『復活されたイエスが戸をあけないで、その部屋に入って来て、彼らの中に立ち、「平安があるように(シャローム)」と言われた。これはユダヤ人のあいさつの言葉で、「今晩は」という意味である』
現代訳聖書 ヨハネによる福音書 20章19節 後半




