輝く物体
薫子の祖父・堅造と執事の林、義也と薫子の4人は ‘秘密の洞窟’ の奥へと歩みを進めていた。
林と義也が大きいライトを持って前方を照らしているが、中は暗くて足元は岩がゴツゴツしていて歩きにくい。
薫子は何度か転びそうになって、義也に抱きついたりしている。
それを見て、堅造が「ゴホン!」と咳払いしてから、
「若いとはいいことじゃ! ハッハッハッ」
と、薫子と義也の初々しいカップルを見て笑っていると、林が大きな声で言った。
「あっ、あそこでございます!」
洞窟の先に鋼鉄の扉が見えてきていた。4人は更に歩みを進め、ついに鋼鉄の扉の前に到着した。
「鈴木財閥に代々伝わる宝物 ‘あれ’ は、この扉の中ですか?」
と、義也が緊張した面持ちで聞いた。
「そうでございます。それでは、中へ案内させて頂きます……」
と、林も緊張した面持ちで答えて、ガチャリと鍵をまわしてからギギギと重い扉を開けた。林がパチリと中にあるスイッチをつけると、パッと灯りがついた。すると、鋼鉄の壁に囲まれた2畳くらいの空間の中央に ‘輝く物体’ があり、そのまぶしさに4人とも目をつぶってしまった。少しずつ目が慣れてきて、その ‘輝く物体’ を直視する事ができるようになってきた薫子が、感激の声をあげた。
「わあっ!! なんてきれいなの!!!」
その ‘輝く物体’ は、鋼鉄の台の上に安置されており、大きさは普通のノートパソコンを5台積み上げたくらいだった。
全体が黄金でできており、側面には花模様の装飾が施されている。
そして、ふたのようになっている上部には、直径5センチ程の巨大な宝石が複数埋め込まれている。その宝石はひとつひとつ種類が異なっており、規則的に配置されている。
黄金色に輝く洗練されたデザインの黄金と、カラフルに輝く存在感のある宝石のコラボレーションに、薫子だけでなく義也も感嘆の声をあげた。
「すごい!!! 宝石の配置が『エポデ』みたいだ!!」
そして、続けて義也が不思議そうに聞いた。
「‘あれ’ とは、これの事ですか?」
その時、薫子が緊張して足がもつれて、つまずいてしまった。
そして、‘輝く物体’ が置いてある鋼鉄の台の方向へ倒れ掛かってしまった。
それを見て、とっさに薫子を助けようとした義也の足が鋼鉄の台にぶつかり、義也の手が ‘輝く物体’ に触れ、その勢いで ‘輝く物体’ のふたが開いてしまい、その中身が義也の目に見えてしまった。
「ヨッシー!!!」
「郡山様!!!」
「むむむっ!!!」
と、薫子、林、堅造の3人が悲痛な叫びを上げた。
※本文中の『エポデ』とは、聖書に出てくる大祭司の衣装の一部です。
参考聖書箇所:新改訳聖書の出エジプト39章8~14節(下記参照)
『彼はまた、胸当てを巧みな細工で、エポデの細工と同じように、金色や青色、紫色、緋色の撚り糸、撚り糸で織った亜麻布で作った。
四角形で二重にし、その胸当てを作った。長さ一あたり、幅一あたりで、二重であった。
それに、四列の宝石をはめ込んだ。第一列は赤めのう、トパーズ、エメラルド。
第二列はトルコ玉、サファイヤ、ダイヤモンド。
第三列はヒヤシンス石、めのう、紫水晶。
第四列は緑柱石、しまめのう、碧玉。これらを金のわくに入れてはめ込んだ。
これらの宝石は、イスラエルの子らの名によるもので、彼らの名にしたがい、十二個で、十二の部族のために印の彫り物が、一つの名につき一つずつあった』




