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じゃじゃ馬ならし

「あーっ!!! そういえば大旦那様、大切な事をお伝えし忘れていました!」


 と、執事の林が珍しく大きな声を出した。

 執事の林は、鈴木家に若い頃から忠実に仕えてきた人物であり、亡き昇造はもちろん堅造も大変信頼している人物である。林は昇造の死後、精神的に非常に落ち込んでおり、珍しく仕事でミスをする事が増えていた。


「ご主人様が生前に ‘あれ’ を郡山様に必ずお渡しするようにとおっしゃられていたのです。このような重大な事を今まで失念しておりました事、どうかお許し下さい」


 と、執事の林が深々と頭を下げて、堅造に謝った。



「むむっ! なんと、昇造が? よし、わかった……

ヨッシーを ‘あれ’ の場所へ案内しよう!」


 と、堅造が少し驚いただけで、すぐに納得して立ち上がった。



「ねえ ‘あれ’ って、何のこと?

そういえば、お父様は最後にヨッシーに ‘あれ’ を必ず渡すようにって言っていたわ。私もあんまり悲しくて、すっかり忘れていたけど……」


 と、薫子が愛する亡き父の最期の言葉を思い出しながら、祖父の堅造と執事の林に聞いた。



「むっ! 薫子もそういえば18歳になったのじゃから、‘あれ’ について話しておかねばならんな。‘あれ’ とは鈴木財閥に代々伝わる宝物の事なのじゃが、これが案外やっかいな宝物でな……秘密の場所に隠してあるんじゃ。

 確かに ‘あれ’ の所有権は昇造に譲ってあったから、昇造がヨッシーに必ず渡すように、と遺言を残したのなら ‘あれ’ の所有権はわしが責任を持って必ずヨッシーに渡す事にしよう!」


 と、堅造が愛する息子の遺言を必ず成し遂げる決意を固めて、真剣な表情で言った。



「ありがとうございます。

 しかし、大旦那様……お嬢様に話すのは危険ではありませんか?

 お嬢様は好奇心旺盛であられますので、何かあったら大変です!

 わたくしとした事が……うっかりしておりました。

 お嬢様の前で ‘あれ’ の話を出してしまうとは……」


 と、執事の林が自分の失敗に後悔して、青ざめた顔をしながら口を挟んだ。



「えっ、どういう事? よけいに知りたくなったじゃないの! 絶対に教えて! 確かに私は好奇心旺盛かもしれないけど、危険な事はしないわ!

 だって私もう18歳なのよ!」


 と、薫子は ‘あれ’ に強く興味をそそられて、懇願した。



「そうでございますか……」


 と、執事の林がまだ自分の失敗を悔やみながら、苦渋の表情で言った。



「そんなに心配せんでも大丈夫じゃろう、林。薫子も、もう子供じゃないんだ。

 それに、ヨッシーという ‘じゃじゃ馬ならし’ もいることだしな!

 ハッハッハッ!」


 と、堅造は笑いながら、心配して反省している林を慰める気持ちで言った。



「お爺様!……」


 と、薫子は ‘じゃじゃ馬’ と言われて、何か言い返そうと思ったが、ここで大人気ない言動をして、自分だけ ‘あれ’ の秘密を教えてもらえないのは嫌だと思い、グッと我慢した。



「わかりました……ではお嬢様も一緒にご案内いたしますが、‘あれ’ は命に関わる事もございますので……

 とても好奇心をそそられると思いますが、くれぐれも注意事項をお守りになってください……」


 と、執事の林はあきらめたように言った。



「ありがとう、林!」


 と、薫子は嬉しそうに笑顔で言った。本当は飛び上がって喜びそうになったが、子供っぽい行動をして「やっぱりダメです!」なんてことになりたくなかったので、自制したのだ。



「それでは、こちらへどうぞ。注意事項が書かれた巻物が現地にありますので、それを全部きちんと把握していただいてから、‘あれ’ を郡山様に必ずお渡ししたいと思います」


 と、林が緊張した面持ちで案内を開始した。


 3人(堅造・林・薫子)のそのやり取りを聞いていて、義也は背筋がぞくぞくするような恐怖心にも似た期待感を感じていた。

 その理由は、薫子に ’魔法の言葉’ と言ってよく話して聞かせている聖書の言葉にあった。

 義也には牧師だった父親の影響で毎朝、聖書を読み全知全能の創造主なる神様に祈りを捧げる習慣があった。

 そして、今朝読んだ聖書箇所にちょうど


『わたしは秘められている財宝と、ひそかな所の隠された宝をあなたに与える』


 と、書かれていたのだ。

※本文中の『』内の言葉は、新改訳聖書のイザヤ書45章3節より引用しました。

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